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11 魔法の言葉
159 夢
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◇ ◇ ◇
「――やっぱり、この子は面白いわね」
どこからかそんな声が聞こえた。
聞いたことのあるような声だったが、それが誰のものかまではまるで思い出せない。だけどどこか好きになれない……そんな声だった。
「加護があるとはいえ、まさか魔力までが武器だと認識しているなんて、思いもよらなかったけど……そうよね。ほとんど武器を持たなかったこの子にとっては、どれほど些細なものであっても武器だと感じてもおかしくないわよね。私の考えは間違いじゃなかったわけね」
何かをつぶやくその声に、僕は必至で語りかけようとしたが声は出ない。
それどころか目も開かないし、体は指の先1つほども動かない。まるで体がどこかに消え去ってしまったと錯覚するほどに、自分の体が自分の物じゃなくなってしまったと感じてしまう程に何も出来ない。
ただ単にここに居て、なすがままに、されるがままだ。
「やっぱり見込んだ通り、あの娘をどうにかできるのはこの子だけね。今のところ、思惑通りに動いてくれているしね。でも、心が思っていた以上に発達してしまって、そこだけが心残りだわ……まあ私の代わりに役割を果たしてくれるなら、それくらい些細な問題ね」
誰かの手が頬に触れる感触があったかと思うと、僕はそのまま意識を失った。
だけど――冷たい手のその感触だけが、失われていく意識の中、ただ気持ち悪くまとわりついていた。
◇
「うわっ!?」
頬の冷たい感触に僕は思わず飛び起きる。
「やっと起きたね!」
飛び起きた先には、ケントニスの顔がぶつかりそうなほどにそばに迫っていて、今度は横にのけぞろうとしたが、ケントニスが足の上に座り込んでいたので出来ず、そのせいで少しだけ少しだけ腰を痛めた。
「な、なんなんですか!?」
僕は痛めた腰をさすりながら、ケントニス向かって感情的に問いかける。
普段の生活では出来るだけ感情を表に出さないようにしていたが、あまりにも唐突するぎる展開に僕は思わず慌てふためいてしまった。
「何って、訓練の時間! 私を待たせてすやすや眠ってるから、ちょっとした悪戯だよ……私、待たされるのはあんまり好きじゃないからね!」
そう子供みたいな顔で笑うケントニスの右手には、魔物の皮で作られた水袋が握られていた。
なるほど、僕が頬に感じた気持ち悪くて冷たい触感はアレだったのか。
何となく状況は把握したが、ケントニスが師匠だという事もあるが、無邪気に笑う彼女を見て、僕は文句を言う気も失せてしまう。
「もうそんな時間ですか……って、僕はいつの間にこの部屋に戻ったんですか?」
よくよく思い出してみれば、最後の記憶は魔力が暴発したところまでだ。
その後は……何も覚えてない。一体、何があったんだろう。
「気にしなくていいよ! 気を失ったケン君をここまで運ぶのも私の仕事の一つだからね! 例え、自分よりも小さな女の子に背負ってもらって連れ帰ってもらったとしても、それは恥じることじゃないもんね!?」
たぶん、ケントニスには悪気はない。
彼女はただ事実をそのまま述べているだけで、本当に『気にしなくていい』と僕を慰めているんだ。それなのに、どうしてか、彼女の言葉は僕の心をえぐる。
「――やっぱり、この子は面白いわね」
どこからかそんな声が聞こえた。
聞いたことのあるような声だったが、それが誰のものかまではまるで思い出せない。だけどどこか好きになれない……そんな声だった。
「加護があるとはいえ、まさか魔力までが武器だと認識しているなんて、思いもよらなかったけど……そうよね。ほとんど武器を持たなかったこの子にとっては、どれほど些細なものであっても武器だと感じてもおかしくないわよね。私の考えは間違いじゃなかったわけね」
何かをつぶやくその声に、僕は必至で語りかけようとしたが声は出ない。
それどころか目も開かないし、体は指の先1つほども動かない。まるで体がどこかに消え去ってしまったと錯覚するほどに、自分の体が自分の物じゃなくなってしまったと感じてしまう程に何も出来ない。
ただ単にここに居て、なすがままに、されるがままだ。
「やっぱり見込んだ通り、あの娘をどうにかできるのはこの子だけね。今のところ、思惑通りに動いてくれているしね。でも、心が思っていた以上に発達してしまって、そこだけが心残りだわ……まあ私の代わりに役割を果たしてくれるなら、それくらい些細な問題ね」
誰かの手が頬に触れる感触があったかと思うと、僕はそのまま意識を失った。
だけど――冷たい手のその感触だけが、失われていく意識の中、ただ気持ち悪くまとわりついていた。
◇
「うわっ!?」
頬の冷たい感触に僕は思わず飛び起きる。
「やっと起きたね!」
飛び起きた先には、ケントニスの顔がぶつかりそうなほどにそばに迫っていて、今度は横にのけぞろうとしたが、ケントニスが足の上に座り込んでいたので出来ず、そのせいで少しだけ少しだけ腰を痛めた。
「な、なんなんですか!?」
僕は痛めた腰をさすりながら、ケントニス向かって感情的に問いかける。
普段の生活では出来るだけ感情を表に出さないようにしていたが、あまりにも唐突するぎる展開に僕は思わず慌てふためいてしまった。
「何って、訓練の時間! 私を待たせてすやすや眠ってるから、ちょっとした悪戯だよ……私、待たされるのはあんまり好きじゃないからね!」
そう子供みたいな顔で笑うケントニスの右手には、魔物の皮で作られた水袋が握られていた。
なるほど、僕が頬に感じた気持ち悪くて冷たい触感はアレだったのか。
何となく状況は把握したが、ケントニスが師匠だという事もあるが、無邪気に笑う彼女を見て、僕は文句を言う気も失せてしまう。
「もうそんな時間ですか……って、僕はいつの間にこの部屋に戻ったんですか?」
よくよく思い出してみれば、最後の記憶は魔力が暴発したところまでだ。
その後は……何も覚えてない。一体、何があったんだろう。
「気にしなくていいよ! 気を失ったケン君をここまで運ぶのも私の仕事の一つだからね! 例え、自分よりも小さな女の子に背負ってもらって連れ帰ってもらったとしても、それは恥じることじゃないもんね!?」
たぶん、ケントニスには悪気はない。
彼女はただ事実をそのまま述べているだけで、本当に『気にしなくていい』と僕を慰めているんだ。それなのに、どうしてか、彼女の言葉は僕の心をえぐる。
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