先生と僕

真白 悟

文字の大きさ
上 下
223 / 369
13

具体案

しおりを挟む
「それで、具体的にはどうするつもりなんですか?」
 彩錦あかねは一刻の余韻もなしにすぐさまに本題に入る。
 僕としてはもう少しだけ落ち着いてからその話題に移りたかったのだが……致し方ない。最終手段を使うことにしよう。

「それは……みんなが集まるのを待ってからにしないか?」
 これで少しは引き伸ばせるはずだ。
 もちろん引き伸ばすのは具体案などないとかそんな理由ではない。今はその時ではないというだけだ。
「待つって……」
 彩錦は気怠そうに壁掛け時計を見る。
 言いたいことはよくわかっている。あずさや先生が部室を訪れるのであれば、もうすでに来ていてもおかしくない時間だ。それでもまだ来ていないということは、今日は来ないという可能性が非常に高いということだ。
 それも当たり前のことで、この場所はもはや『恋愛部』ではない。単なる空き教室で、誰にも使われることがない物置きだ。すべての部活にとっての活動開始時間はとうの昔に過ぎているが、部員が全員集まらないことに文句を言える立場でもない。この部屋を部室とする部活は――もはや存在しない。
 だから2人が入ってくるはずもない。つまり、具体案に関しては明日に持ち越せるということだ。

「――お待たせ!」
 そんな声が部室に響いたのは僕が一番油断していたタイミングだった。
 先生が梓をひきつれてやって来た。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

追放されたおれが、女になって四姉妹と夢をつかむまで

恋愛 / 完結 24h.ポイント:28pt お気に入り:10

王弟転生

BL / 完結 24h.ポイント:113pt お気に入り:97

“孤蝶”雑多ログ

BL / 連載中 24h.ポイント:35pt お気に入り:13

俺を裏切り大切な人を奪った勇者達に復讐するため、俺は魔王の力を取り戻す

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:5,212pt お気に入り:92

詩・涙

現代文学 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

異世界迷宮のスナイパー《転生弓士》アルファ版

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:113pt お気に入り:584

処理中です...