先生と僕

１４

誤解

　コンビニを出てからもすごかった。目を覆いたくなるほどに優柔不断だ。何が彼をそうさせるのかわからないが、とにかく、優柔不断なのだ。
　駅前とかでよく見かけるような募金に対して、１０００円入れるか、５００円入れるかで悩んでいるし（結局１０００円入れた）、本屋でどの本を買うかを延々と悩んでいるし（結局何も買わなかった）、しまいには自動販売機でどのジュースを買うかを１０分は悩んでいた。
　よくよく思い出してみれば、おにぎりを買った時も時間は５分ほどと短かったが、悩んでいたような気もする。

「でも、問題児と言われるほどの行動は一度もしてないのよね……」
　むしろ真逆だ。
　困っているいる人がいれば率先して助けようとするし、悪いことは全くしていなかった。何ゆえに、『問題児』とあだ名されているのかがわからない。
　そんな風に考えていると、男子生徒はふらりふらりと女性の方に歩き始めた。長時間追跡した私にしてみれば、それほど問題のある行動には思えないが、はたからみれば恐ろしい光景に見えるかもしれない。

「あ、あの……」
　
　男子生徒は女性に声をかける。それもとてもたどたどしい声で。
　そんな様子で声をかければ誰だって不審者に声をかけられたと思うはずだ。
「な、なんですか？」
　一応女性も返答してくれたようだ。それでもやっぱり警戒はされている。そんなときに何も言わずにポケットに手を入れたものだから、凶器でも出すと思われたのだろう。女性は悲鳴を上げながら逃げてゆく。
　彼の手に握られていたのは、女性が落としたであろうハンカチだった。

　彼は優柔不断だがその言葉に含まれる通り、優しくもあるらしい。
　だがこれで、彼の対策は立てれそうだ。