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ピーっ!

ホイッスルの合図に一斉に走り出す。

スタートのタイミングが良かったのか高坂はトップに立つ。

しかも、早い。後の選手をグングン離してあっという間に断トツのトップでゴールインした。


「すげえ、二番の奴ってAクラスで、確か陸上部のエースだぞ!」

「マジか!」

「すげえなあ~」

オレの少し前の方に並んでいる奴らが驚いて騒ぎたてる。風紀委員で、毎日走りまわっていたから足の速さはしっていたが、陸上部のエースに勝つとは驚きだ。

一位の旗の元にいる高坂さんの姿が凛々しくて胸がキュンとした。

次々にスタートしていく選手を応援している高坂に勇人はただじーっと見惚れていた。

やっぱり、腹が立つぐらいカッコイイよな。

次にゴールしたのは松本だった。嬉しかったのかお互いハイタッチして笑っている。

いいなあ~オレもあんな風にハイタッチしたい。

あの場にいる松本が羨ましいと思った。

どうせなら最後でなくてあの中に・・・そう思うと只々ため息が出るのだった。

そうこうしているうちに前半が終了して勇人がいる後半がグランドに入場していくと、それぞれのテント内が騒がしくなった。

「ねえ、あれって勇人さまじゃ?」

「うそ・・」

「え、でも・・勇人さまは借り物競争じゃ」

「たぶん、欠員が出たんじゃないか」

「なら、代走?」

「そうだろうな。生徒会は補欠になっているはずだから」


誰もがそれに気づいて目の色が変わる。

赤いシャツと、黒のハーフパンツ姿の勇人にみんなの視線はくぎ付けだ。

そのパンツの裾から細くて筋肉のついた足に目を囚われた。


「何か、すげえ・・エロい」

「キレイな足・・」

「意外と筋肉がついてるな・・」


足だけではなく、すらりと伸びた腕にも目がとまる。


「腕も鍛えているのか、筋肉がすごい。」

「たくましい腕・・ああ、あの腕に抱かれたいっ!」


競技とは違うことに頭の中を占められていき、次第に荒い息をする輩が増えて行く。

そんなことに全く気付かない勇人は汗をポケットから出したタオルで襟足をあげて拭いて見せた。

だたそれだけのことなのに、黄色い声が勇人に向けて飛んでいく。


「「「キャアアアアア―――っ!!」」」


「勇人さまのうなじがああ―――っっ!!」

「ううっ・・鼻血が出そう」

「あれって、わざとか?」

「いや、無自覚だろっ」


ざわざわする中生徒会のテントは無言だったが・・・


「何で勇人があそこに?」

「人前でうなじなんか見せて・・・」

「・・・はあ~」

夏樹は出場予定にない勇人が他の選手と混じっていることに不満を持ち、拓也は不用意にうなじを出したことに不満を抱いた。

そんな二人の様子を見てため息を吐いたのは和也だ。勇人は自身の容姿と仕草に無自覚なことが多い。これもその一つで会長と兄が不満を持つのも無理はないと思った。


「そういえば、早瀬は?」


いつの間にか早瀬の姿がないことに不安を抱いたのは夏樹だ。

いつも生徒会室に籠っている自分たちが他の生徒と接触できる機会に呼び出されることが多い。

たぶん、告白なんだろうけど・・




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