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メイベルちゃん
奥手な騎士さん
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どこかの世界の王都にある、レンタル彼女店《恋人提供所アマリエ》今日も理想の彼女に会いに異世界男子たちがやってくる。
人気職でありながら恋人がなかなかできない騎士オーレン、女の人とうまく話せない上に緊張すると視線がキョロキョロとうろつく。騎士の同僚に「レンタル彼女店ってのがあるらしいぞ!そこで練習したらどうだ?」と言われやってきた。
受付で「ご指名はありますか?」と尋ねられ、オーレンは一瞬きょどった。
「え、ええと……。その、あの、あまり……どなたが……」
目が泳ぐ。受付スタッフの手元、奥の観葉植物、足元の床タイル、天井の照明と視線が流れるスピードが尋常ではない。
「では、当店人気ナンバーワンのメイベルをご案内しますね♪」
その名を聞くなり、奥のカーテンがふわりと開く。ふわふわの金髪に、たわわな果実のような胸元、そしてにこやかに微笑む――理想の彼女、メイベルちゃんの登場だ。
「オーレンさんですね? 本日はご利用ありがとうございます♡」
「ひっ」
可愛い。いや、可愛すぎる。こんなに近くに女性が立っているというだけで、オーレンの心拍数は跳ね上がった。
手を差し出されて――その指先が近づいただけで、オーレンの視線はまた泳ぎ始めた。店の壁の額縁、窓の外、店の天井、メイベルの顔。胸、また天井…。
「……ふふっ」
メイベルが軽く目を細めて笑った。
「オーレンさん、もしかして緊張してます? 初めてなんですよね?」
「は、はい。すみません。女の人とうまく話せなくて……」
その答えに、メイベルは頬に指を添えて「なるほど~」と呟いた。
「じゃあ今日は、恋人とのデートの練習ってことで、私が彼女としてリードしますね♪」
そうしてメイベルは、オーレンの腕にそっと自分の手を絡めた。
「ま、待って、それは……!」
「まずはデートの基本! 手を繋いでお散歩です♡」
そうして連れ出された先は、王都の中央広場に面した、可愛らしいカフェだった。
⸻
「彼女と一緒に食べるスイーツって特別なんですよ~」
そう言って、メイベルが注文したのは季節のフルーツタルトとハーブティー。オーレンも無難にそれに合わせた。
席につくと、自然に向かい合う二人。が、オーレンの視線は例によって定まらない。目のやり場に困っていたそのとき――
「……オーレンさん?」
「は、はいッ!」
「私のこと、ちゃんと見てください♡ ほら、“目を見て話す”って、大事なんですよ?」
少女が少しだけ身を乗り出す。その金色の髪がさらりと揺れ、彼女の瞳がまっすぐにこちらを見つめている。
オーレンは、ぎこちなく顔を上げた。
「……っ、ぁ……」
「はいっ、目を合わせられましたね! えらいです♡」
「えっ、あっ、はい……」
たったそれだけで全身から力が抜けそうになる。すごい。この子は、なぜこんなにも“彼女力”が高いんだ……。
⸻
食事のあとは、少し広場を散歩して、手を繋ぎながら会話の練習。
「好きな食べ物は?」「趣味は?」「休日はなにしてますか?」と質問されるたびに、オーレンの口元は引きつるものの、メイベルがいちいち褒めてくれるため、なんとか続いた。
「……なるほど。じゃあ、訓練のあとは図書室で戦術書を読んでるんですね。かっこいい~♡」
「い、いえ、その……」
「真面目な人って、すごく素敵です。わたし、そういう騎士さん、大好きですよ♡」
「♡」の威力が凄まじい。
彼女に言われると、なんだか自分が本当に“彼氏”になった気がしてくる。
最後に、別れ際。
「今日のデート、どうでしたか? また来てくれますか?」
「えっ、あ、あの……はい、あの、もしよかったら……また……」
視線がメイベルの腰、靴先、髪、胸、地面、と回転しながら。
メイベルはくすっと笑った。
「じゃあ、次のデートも楽しみにしてますね♡ 騎士さんっ」
オーレンは顔を真っ赤にしながら、まるで城に一人で突入したあとのような疲労感で店を後にしたのだった。
人気職でありながら恋人がなかなかできない騎士オーレン、女の人とうまく話せない上に緊張すると視線がキョロキョロとうろつく。騎士の同僚に「レンタル彼女店ってのがあるらしいぞ!そこで練習したらどうだ?」と言われやってきた。
受付で「ご指名はありますか?」と尋ねられ、オーレンは一瞬きょどった。
「え、ええと……。その、あの、あまり……どなたが……」
目が泳ぐ。受付スタッフの手元、奥の観葉植物、足元の床タイル、天井の照明と視線が流れるスピードが尋常ではない。
「では、当店人気ナンバーワンのメイベルをご案内しますね♪」
その名を聞くなり、奥のカーテンがふわりと開く。ふわふわの金髪に、たわわな果実のような胸元、そしてにこやかに微笑む――理想の彼女、メイベルちゃんの登場だ。
「オーレンさんですね? 本日はご利用ありがとうございます♡」
「ひっ」
可愛い。いや、可愛すぎる。こんなに近くに女性が立っているというだけで、オーレンの心拍数は跳ね上がった。
手を差し出されて――その指先が近づいただけで、オーレンの視線はまた泳ぎ始めた。店の壁の額縁、窓の外、店の天井、メイベルの顔。胸、また天井…。
「……ふふっ」
メイベルが軽く目を細めて笑った。
「オーレンさん、もしかして緊張してます? 初めてなんですよね?」
「は、はい。すみません。女の人とうまく話せなくて……」
その答えに、メイベルは頬に指を添えて「なるほど~」と呟いた。
「じゃあ今日は、恋人とのデートの練習ってことで、私が彼女としてリードしますね♪」
そうしてメイベルは、オーレンの腕にそっと自分の手を絡めた。
「ま、待って、それは……!」
「まずはデートの基本! 手を繋いでお散歩です♡」
そうして連れ出された先は、王都の中央広場に面した、可愛らしいカフェだった。
⸻
「彼女と一緒に食べるスイーツって特別なんですよ~」
そう言って、メイベルが注文したのは季節のフルーツタルトとハーブティー。オーレンも無難にそれに合わせた。
席につくと、自然に向かい合う二人。が、オーレンの視線は例によって定まらない。目のやり場に困っていたそのとき――
「……オーレンさん?」
「は、はいッ!」
「私のこと、ちゃんと見てください♡ ほら、“目を見て話す”って、大事なんですよ?」
少女が少しだけ身を乗り出す。その金色の髪がさらりと揺れ、彼女の瞳がまっすぐにこちらを見つめている。
オーレンは、ぎこちなく顔を上げた。
「……っ、ぁ……」
「はいっ、目を合わせられましたね! えらいです♡」
「えっ、あっ、はい……」
たったそれだけで全身から力が抜けそうになる。すごい。この子は、なぜこんなにも“彼女力”が高いんだ……。
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食事のあとは、少し広場を散歩して、手を繋ぎながら会話の練習。
「好きな食べ物は?」「趣味は?」「休日はなにしてますか?」と質問されるたびに、オーレンの口元は引きつるものの、メイベルがいちいち褒めてくれるため、なんとか続いた。
「……なるほど。じゃあ、訓練のあとは図書室で戦術書を読んでるんですね。かっこいい~♡」
「い、いえ、その……」
「真面目な人って、すごく素敵です。わたし、そういう騎士さん、大好きですよ♡」
「♡」の威力が凄まじい。
彼女に言われると、なんだか自分が本当に“彼氏”になった気がしてくる。
最後に、別れ際。
「今日のデート、どうでしたか? また来てくれますか?」
「えっ、あ、あの……はい、あの、もしよかったら……また……」
視線がメイベルの腰、靴先、髪、胸、地面、と回転しながら。
メイベルはくすっと笑った。
「じゃあ、次のデートも楽しみにしてますね♡ 騎士さんっ」
オーレンは顔を真っ赤にしながら、まるで城に一人で突入したあとのような疲労感で店を後にしたのだった。
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