異世界レンタル彼女

りこ

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メイベルちゃん

ツンデレ魔術師リピート!

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レンタル彼女店《恋人提供所アマリエ》
理想の彼女に会いに、再度やって来る男は少なくない──


「シオンくん、こっちこっち!」

 街の広場で、ひらひらと手を振る金髪の少女。柔らかく波打つ髪と、ふわりとしたワンピース。太陽の光を受けてまぶしく微笑む姿は、誰が見ても「彼女」である。

 シオン・マルグリフは人目を気にしてきょろきょろと辺りを見渡し、そそくさと彼女──メイベルのもとに近づいた。

「ちょ、ちょっと……そんなに目立つことは……」
「えー? 嬉しくて、ついねっ♡」

メイベルはいつも通り、満面の笑みでシオンの腕にからみついた。

 さらっと言って、メイベルは腕に抱きつく。シオンの心臓が、爆音を上げた。

(恋人……! いや、そういう設定だけど……!)

 ここは王都の中心、魔術師たちもよく通る目抜き通り。デートの雰囲気を出そうとメイベルが提案した場所だが、シオンにとっては危険地帯である。

「……今日は、彼女とのデートなんでね!」
 などと、虚勢を張った発言を同僚にしたのが数日前。

(言っちゃったんだよなあ……彼女できたって……!)

 その自業自得の発言のツケが、まさに今回ってきた。

「──ん?」

 聞き覚えのある声が、背後からした。

「おい、シオンじゃないか? 本当に彼女できたって……」

(やめろぉぉぉぉぉ!!)

 振り返ると、そこには同僚のレイヴ・アクナスが立っていた。シオンと同じく宮廷魔術師で、頭脳明晰・剣技もこなす万能タイプ。しかも女にモテる。

 つまり、見栄を張った相手そのものである。

「お、おう……レイヴか。奇遇だな。こんなところで会うとは……」

「奇遇だな、じゃないよ。で、そっちの……お嬢さんは?」

 レイヴがメイベルを見た瞬間、目を見開いた。見目麗しく、所作も愛らしい。誰がどう見ても「上玉」だ。

「えっと……わ、私、メイベルといいますっ」

 メイベルがにこっと笑って、小さく会釈する。

「こ、こちら、俺の──彼女だ」

 言ってしまった。心の中で鐘が鳴る。ごまかしも、後戻りもできない。

「……ほぉ~~~~」

 レイヴの目が細くなる。ニヤニヤと口元が緩む。

「やるじゃねぇか、シオン。お前がこんな美人を捕まえるとは……いや、失礼、びっくりしてさ。どうやって出会ったんだ?」

「え、えっと、それは──その、街で……ぶつかって、荷物を拾って……という感じの……ありがちなアレで……」

「運命的な出会いってやつか」

「そ、そうそう……」

 汗が止まらない。シオンは手のひらに汗がにじんでいるのを感じながら、ふとメイベルを見た。彼女は変わらぬ笑顔を浮かべ、腕を絡めたままだ。

「シオンさんとは、とっても仲良くしてます。……ね?」

 そんなメイベルの言葉に、シオンは固まった。

「お、おう……仲良いよな……!」

「……あの、私たち、邪魔かしら?」

 いつの間にかレイヴの隣に、付き合い始めたばかりという彼の恋人・エリナさんが現れていた。少し警戒したような視線をメイベルに向けている。

「いやいや、邪魔なんてとんでもない!」

 シオンが必死に返すと、エリナさんは少しだけほっとしたように笑った。

「ふふ、シオンさんって、ああ見えて恋人には甘そう」

「そ、そうかな……?」

「……ああいう子なら、ちょうどよさそうよ」

 意味深な一言を残し、エリナさんはレイヴの腕を取って歩き出した。

「じゃ、また職場でなー。惚気話、今度じっくり聞かせてくれよ!」

「あ、ああ……!」

 ──去っていく背中を見送って、シオンはその場にへたり込みそうになった。

「……助かった……」

 その呟きに、メイベルがくすくすと笑う。

「お役に立てて、光栄です。……でも、彼女って紹介されたの、ちょっと嬉しかったかも」

「なっ……」

 顔が、真っ赤になるのが自分でもわかる。

「さっ、デートの続きしましょ? 今の時間、ジェラート屋さんが空いてる頃よ」

 何気なく手を伸ばしてくるメイベルの手を、シオンは躊躇いがちに取る。

(……この人は、仕事で“彼女”をやってるだけなんだ……)

 そう自分に言い聞かせながらも、ほんの少しだけ、本当の彼女のように思ってしまったことを、誰にも言えずにいた。
 
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