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第56話 小鳥遊君って実はお馬鹿?

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「まずは周りにいる奴を軽く焼き払ってやるか。 ファイアボ――」

「あっ! テツカミバチに火は――」


 俺が巣を残す為に弱めのファイアボールを撃とうとすると、テツカミバチが熱を感じとったのかぞろぞろと巣の中から飛び出してきた。

 黒と黄色の身体のモンスターが一箇所に敷き詰められていくと、集合体恐怖症の人の気持ちが何となく分かる。


 めっっちゃキモっ。


 テツカミバチ達はまず10数匹の部隊で俺を達を襲ってきた。

 残りは巣の前で壁を作るように縦長に並んではためいている。


 今まで出会ってきたモンスターの中では一番連携がとれている。

 鳴き声みたいなものは一切ないっていうのによくここまでの事が出来るよな。


 襲ってきてるテツカミバチ達も3匹くらいのまとまりで分かれて、きっちり横並びで様々な角度から迫ってきてるし。


「テツカミバチは比較的大人しいモンスターだからこっそり手を伸ばして蜜をとるのが基本なんですよ! 下っ端の奴だけを倒したいなら巣から引き離したり、魔法を使わなかったりっていう一手間が必要なんです!」

「……一ノ瀬さんそれ早く言ってよぉ」

「ははははっ! そんな風に戦っていたらじれってくてしょうがないですよ! 知に長けた戦略戦闘というのも好きですけど、やはり男なら豪勢にですっ! はあああああああああああああっ!!」


 テツカミバチの群れにため息を漏らしていると、小鳥遊君はむしろ楽しそうに突っ込んでいった。


 今更あーだこーだ言っても仕方ないか。


 俺はもういくらでも出て来いと思いながらファイアボールの準備に入る。


 すると今出てきたのと同じくらいの数のテツカミバチが巣から出てきた。


 ロケット鉛筆の様に先に壁を作っていた個体が攻めに転じて壁は後から出てきたテツカミバチが作る。

 俺の周囲には既に10匹以上のテツカミバチが囲い、その尻からは黒くギラリと光る針が飛び出す。


 一ノ瀬さんは小鳥遊君がテツカミバチの群れに突っ込んでいくのと同時に遠目に見えていた草むらに逃げていった。

 ひょっこりと頭だけ見えてるのが、可愛いような可愛くないような。


「【ファイアボール】!!」


 俺は正面から針を刺してこようとするテツカミバチに向かってファイアボールを放った。


 ――ぼっ!


「思ったより硬いな」


 結構貯めて撃ったけど、いつもみたいに炸裂する事はなくてテツカミバチの体の部位が少し吹っ飛んで火が着くだけ。

 巣っていうのはこいつらからしたら建物内。

 建物の中で火が回らないようにそういった耐性を持って生まれてきてるのかもしれない。

 結局火がついてるから中途半端な耐性レベルでしか無いとは思うけど、通常このダンジョンに潜る探索者の放つ魔法攻撃程度ならこれでも十分なのかもしれない。


「一発じゃ仕留められないし、地道に殺していくしかないか。やるか……拳で!!」


 俺は動画で見た人と同じように自分の拳をぶつけ合わせると、テツカミバチの頭を潰していく。

 有難いことにテツカミバチは尻から出た針を突き刺そうと襲ってきてくれるからこっちから動かなくてもいい。

 テツカミバチの速さについていくのも、複数を相手にするのも上手くはないからちょくちょく首とかその辺を刺されるけど……残念俺毒効かないんだよね。


 そもそも俺の防御力だと針は皮膚から先に刺せないみたいだけど。


「入れ食い入れ食い……。小鳥遊君の方は大丈――」

「この程度のモンスターの攻撃なんて避けるまでもないとは流石神様! 俺も、その我慢強さを学ばせていただきます! これが戦闘! 強者の戦い方!!」


 小鳥遊君が俺の真似をして驚くくらいテツカミバチに刺されている。

 テツカミバチの針には麻痺効果のある毒が仕込まれているのか、それともダメージを負い過ぎてるからなのか小鳥遊君の動きがやたら鈍い。


 慕ってくれるのは嬉しいけど……もしかしてこの人馬鹿なの?


「あんまり長引かせると小鳥遊君がヤバいから、先に巣の出入り口を狙うか」

「神様! 僕もついてい――」

「小鳥遊君はまず目の前の奴らを倒してからっ!」


 俺は一緒に突っ込もうとする小鳥遊君を止めると、正面から襲ってくるテツカミバチ達を蹴散らしながら巣を目指す。

 壁を形成していたテツカミバチも大半がと攻撃に移り、俺の視界を塞ぐ。


 普通なら鬱陶しい所だけど……


「その数で超接近してくれるのはむしろ有難いんだよなあ!!」


 腕を適当に振るだけでテツカミバチ達が爆散。

 この爽快感はベビース●ーラーメンを一気に口に流し込む時と数倍はあるぞ。


「よしっ! これで一時的に巣の入り口をつぶ――」


 まだまだテツカミバチ達はいるが取り敢えず巣まで辿り着いた。

 そして入り口を壊そうと手を振り上げると、巣からにゅうっと赤いテツカミバチが現れる。


 身体は通常の個体よりも大きく、頭にはわかりやすくティアラ型に編み込まれた触覚。


「宮下さん! 小鳥遊さん! それは女王テツカミバチ!! 滅茶滅茶レアモンスターです! で、出来れば生け捕りで頼んます!!」
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