戦国食堂はじめます〜玄米にお湯をかけるだけの戦国料理…私がもっと美味しいもの作ります〜

好葉

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朝の訪問者

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今日は少し早く起きてしまった。
よしさんはまだ寝ているので起こさないように布団からで出る。

目を覚ましたくて、顔を洗いに井戸に向かった。
外は薄暗く、鳥の声もまだ聞こえない。
この世界に私一人だけ取り残されたみたいと思った時に、私が来た時の事を思い出した。

あの時によしさんに会えたからここで平和に暮らせてるんだよね。
顔に出さないようにしてたけど不安で仕方なかった。
でも、何とかやっていけてる。

もう少し心に余裕が出来たら現代に帰る方法を探してみよう。
そんなことを考えながら顔を洗う。

「…っつめたっ…。」

覚悟はしていたが井戸水が結構冷たくて体が跳ねる。
冷たいけど目がよく覚める。
顔を拭き終わり、ふっと顔を上にあげた。

目線の先には山々があり、そこから赤い朝日が少し顔をだしていた。
暗い青と赤い朝日で雲が紫になっていて神秘的だ。
ゆっくり空を見上げるのは子供時代以来のような気がする。

「きれい…。」

今日は早く起きれてよかった。
時々早く起きてみるのもいいかもしれない。
綺麗な空を見て、今日も一日頑張らなくては意気込みながら立ったその時だった。

「ずいぶんと早く起きるんだね。」

声がした方を振り返ると、そこにはあの時狼を追い払ってくれた男の人が立っていた。
一体いつからそこにいたのだろう。
ゆっくり近づいて来たので少し距離を取る。
時次さんの友人らしいけど、一応警戒して逃げれるようにしておく。

「こんな朝早くに何の御用でしょうか?」

私が距離をとっている事に気づき歩みを止めてくれた。
なぜだかクスクス笑っている、一体何が面白いのだろう。
眉間にしわが寄る。

「実はこれを渡したくてね。私のお気に入りなんだ。」

男は手に持っている小さい壺を持ち上げて言った。
一体何が入っているのだろう。

「これを使って料理を作って欲しい…。酒に合うのがいいな。後、昨日作ってくれたおにぎりとお酒もお願いするよ。」

流石に今すぐ作ることは出来ない。
これから、店の準備や山にも行かなくてはいけない。

「今すぐには出来ませんが、昼ぐらいにはおにぎりは作れると思います。ただ、昨日のお酒は酒粕か米麹がないと作れないので今は作ることは出来ないです。」

昨日作った甘酒はまだあるが二杯ぐらいしか残っていない。
お客さんに渡す量としては少なすぎる。

昨日貰った分の米麹は全部使ってしまったので、材料を買いに行くにしても時間がかかる。
今回のお酒は諦めて貰おう。
お断りの言葉を言う前に男が口を開いた。

「材料は気にしなくて大丈夫だよ。えぇっと…時次…が朝届けるはずだから。」

時次さんの名前の所でなぜか言いよどんだ。
まるで、今思い出したみたいな感じだった、友達の名前忘れるってことある?
まぁ材料は後で時次さんが届けてくれるらしいのでこの注文を受けても大丈夫だろう。

「朝に材料を持って来てくれるのでしたら夕方には出来ていると思います。おにぎりは同じものがいいでしょうか、それとも少し変えますか?」

う~ん、と悩んでいる様子だ。

「当分同じおにぎりでいいよ。梅のおにぎりも美味しかったけど、あのしそのおにぎりも気に入った。随分と久しぶりにご飯を食べたよ。ありがとう…。」

微笑んではいたけど、真剣な目をしていた。
どれだけの間ご飯を食べていなかったのか想像はできないけど、ありがとうという言葉がとても重く感じた。

「気に入ってくれたなら良かったです。」

ただのおにぎりだけど気に入ってくれて良かった。
当分ってことはおにぎりの注文が続くということだろう。
私の店では湯漬けだけ売っていて、注文などは受けていなかった。

いや、少し違うか。
今まで個人的な注文が来なかったので受けようがなかった。
こういう注文を受けれるようにするのも有りかもしれない。

後、おにぎりをメニューに加えることも視野にいれたいな。
これは、よしさんに相談してみよう。

はっと我に返る、彼の存在を忘れてつい考え込んでしまった。
仕事をしている時に考え事なんていけない。

依頼者の事を忘れるなんてありえなさすぎる。
近頃の私はかなり緩んでいる気がする、気を引き締めなければ。
さっきから気になっていた壺の中身を聞いてみる。

「あの、壺の中身教えてもらってもいいですか。」

その人が私に壺を手渡す。

「中身は自分で見てごらん。一口食べてみてもいいよ。料理で使え切れなかった分は君にあげる。」

言われたとおり壺の蓋を取り中を覗くと壺いっぱいの梅干しが入っていた。
この人本当に梅好きなんだなぁ。

彼と目が合いこちらをじっと見ている、私が食べるのを待っているらしい。
私が梅干しをこの場で食べないとここを動きそうにないので壺の中から一粒梅干しを取り口に運んだ。

「なにこれ…。おいしい…。」

酸っぱさがいつも食べている梅と全然違う。
酸っぱさが上品なのだ。
口でこれ以上説明はできないけど今まで食べてきた梅干しの中で一番美味しいかもしれない。

現代でも時々食べてきたけど、これほど美味しいのは初めてだ。
確かにこれははまるかもしれない。
私の食べた様子を見て満足気に笑っている。

「おいしいで…す…。有難く使わせてもらいます…。」

何だか少し悔しい、負けを認めた気分だ。

「それは良かった。これはお代。夕方、時次が受け取りに来ると思うからよろしくね~。」

森の方をチラリと見ると私に代金が入っているであろう袋を受け渡し、あっという間に森に消えて行った。
名前聞く前に行っちゃったな…。

袋に入っている代金を一応確認する。
ちょっとこれは……多すぎる。
昨日時次さんから頂いた金額より倍の額だ。

返したくてももう帰ってしまっていて返せない。
もしかしたら持ち合わせがこれしか無かったのだろうか…。

お釣りが出るから時次さんが料理を受ける時に渡そう。
これから注文を受けることが続くだろうからあの人の名前を聞いておかなくては。

さて、この梅干しを使って何を作ろうか…。
考えながら店に戻った。

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