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二章 アヴァランチェ編

53 洞窟 と 水晶 と 冒険者の欲

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 三人はカズばかりに頼ってはいけないと、次に自分達が岩を破壊しようと準備をしていたが、それはあっさり裏切られた。

「次はオイラが……んっ!」

「ならボクはカードでサポートを……なっ!」

「私と同じ魔法……えぇぇぇー!!」

 先程ポピーが使った魔法とは、比べものにならない勢いの水圧と威力で、意図も簡単に大岩が真っ二つに切れて、大きな衝撃と共に倒れ、洞窟の入口があらわになった。
 それを見た三人は、目を見開き口が空いたまま黙って、倒れた大岩とカズを交互に見ていた。

 よし。前に凄い水圧で鉄を切ってるのを、テレビ番組で見たことあって、それを想像して使ったんだけど、上手くいったようだ。
 でも早く切断しすぎたかな?
 テレビで見たのは、もっとゆっくりだったような……まぁいいか。

「さてと、洞窟に入れるようになったから、行こうか。んっ? 三人共どうしたの?」

「どうしたのって、その魔法はなんですか!」

 ポピーの言葉に、ボルタとワットが同意するように、何度も頷いている。

「なんですかって、ポピーと同じ魔法だけど」

「いやいやおかしいでしょ! 私がちょこっとしか切れなかったのに、そんな簡単に岩を真っ二つにするなんてっ!」

 ボルタとワットが、先程よりも更に早く、何度も頷いていた。

「ほら俺ずっとアレナ……サブマスに教えてもらってたからさ」

「私もサブマスに教えてもらったこもあるけど、長い期間教えてもらうと、そんなに凄い魔法が使えるの!?」

「あ……う、うん」

「帰ったらまたサブマスに頼んで、訓練してもらおうかしら。そうすれば私だって」

「……そうだね。努力しだいで出来るようになるさ(ごめんアレナリア)」

 なんとかごまかしてから、洞窟へと入って行く。
 入口から分かる洞窟は、立って入れる程の高さがあり、幅は二人が並べるぐらいはある。
 奥行きは、入口からは確認出来ず不明。

「さぁみんな、気を取り直して、目的の水晶を探しに行くわよ!」

「そうだ目的はそれだった!」

「ボクも今の光景を見たら、本来の目的を忘れてました」

「まぁ良いじゃないか。今起きた事は忘れて水晶を探そう!」

「忘れる? 無理だわ!」

「無理!」

「無理ですよ!」

「……」

 一通りのやり取りを終えて、みんなで洞窟の中に入って行く。
 先頭はワットが〈ライト〉のソーサリーカードを使い先を照らし、ボルタが横に並び警戒しながら奥へと進んで行く。
 二人の後ろにポピーが続く。
 俺は一番後ろから背後を警戒しつつ、洞窟の奥へと進んで行く。

「ワット水晶ありそう?」

「今のとこ見あたらないよ。ポピーの探索魔法使えないの?」

「洞窟の中だと、なぜか反応が悪いのよね」

「もう少し進んで見ようぜ。入口付近は既に採掘されて、無いと思うぜオイラは」

「そうね。カズさんはどう思う?」

「そうだね。ボルタの言うことも一理あるし、もう少しだけ進んで見ようか」

 暫く進むと、十人は入れるような開けた空間が現れた。
 すると先頭のワットが、何かに気付き声を上げた。

「あれ見て水晶だよね!」

「おぉー! まさに」

「私にも見せて! 本当だ水晶よ!」

 三人の見ている先には、大小様々な六角柱の水晶が、壁から飛び出ていた。

「やったぜこれで依頼完了だ!」

「早速採掘しよう」

「それなら今度は私が、ライトの魔法で、辺りを照らしておくわね。」

「〈ライト〉」

 ポピーがサポートして、ボルタとワットが水晶を採掘しようとしていたので、俺は一旦止めさせた。

「二人共ちょっと待った!」

「なんですか?」

「なんだよ!」

「どうしたのカズさん?」

「ここまで来る間に、あちこち崩れていた所があったのを、みんな気が付いていたか?」

「いいえ」

「オイラは、何か来ないか警戒してたから」

「薄暗かったし、私も気が付かなかったわ。でもそれがどうしたの?」

「水晶を採掘するにしても、埋まっている場所を確認して掘らないと、下手をしたら崩れるかも知れない」

「せっかく来たのに、水晶を持って帰れないのですか?」

「オイラは掘るぞ!」

「待ってボルタ! 私だって持って帰りたいわよ」

「だったら」

「三人共落ち着いけ! 別に水晶を掘るなとは言っていない、採掘しても崩れない所の水晶を選んだ方が良いと言っているんだ! 目先の物ばかりに気を取られ、無理やり掘ってあげく、生き埋めになりたくはないだろ!」

 ポピーはカズの声に驚き、ワットとボルタは、その言葉に冷静さを取り戻した。

「怒鳴ってごめん」

「そんな私達こそ、水晶を目の前にしたら焦っちゃって、ごめんなさい」

「ごめんなさい」

「す、すまん」

「それじゃあ、最初は崩れて落ちてる水晶を集めようか。欠けていても、加工すれば使い物になるだろうし」

「はい!」

「うん」

「分かった」

 四人は落ちている水晶を、一ヶ所に集めだした。
 冷静になって見ると、以外と多くの水晶が落ちていた。

「あらかた集めることが出来たわね」

「以外と沢山あった」

「でもキズがある物が多いぞ」

「それじゃあ、カズさんお願い」

「ああ任せて」

 ポピーに言われ、集めた水晶を【アイテムボックス】に全て入れた。

「それで、どの水晶を採掘する?」

「オイラは、あの大きいのが良いな」

「あれは壁に亀裂があるから、危ないと思うわよ。カズさんどう?」

「確かに水晶が取れた勢いで、亀裂が広がって崩れてくるかも知れないしな」

「ならどれにします? ボクは、あれなんか良いと思いますが」

「私はあれかな?」

 どれどれ、辺りの壁を分析して、掘っても崩れないで取り出せる水晶があるか、確認してみるか。
 壁を調べてみたが、掘れそうなのは二ヶ所だけで、しかも水晶も小さい。
 次に探索魔法で、他に水晶が無いかを調べてみる。
 みんなに気付かれないように、探す対象を水晶にして、無詠唱で〈サーチ〉を使う!

 ここから少し奥に行った所にあるな! そこなら採掘出来そうな水晶があるかも。
 よし、ここはポピーにやってもらうか。

「もう一度ポピーが探索して、ここ以外に水晶が無いか調べてみたらどう?」

「もう一度、出来るかな?」

「やるだけやってみてよ。ボクは探索に使えるカード持ってないから」

「オイラもポピーに任せる」

「分かったわ。やってみる! 今度は上手くいきますように……〈サーチ〉……」

「どうポピー、分かったか?」

「待ってワット、あとちょっとで……! 反応があったわ! この少し奥よ」

「よし行くぞ!」

「ボルタ待った。今ライトのカード使って明るくするから」

「すまん。また先走りそうになった」

「ボク達が先に行くから、ポピーとカズは、あとからついて来て!」

「この先に何があるか分からないから、気を付けてね」

 ボルタとワットは、見るからにワクワクとしながら、奥へと進んで行く。
 ポピーはその場で一呼吸おき、後ろから冷静に二人を見て、同じ失敗をしないようにと、気持ちを落ち着かせている。

「カズさん迷惑かけて、ごめんなさい」

「迷惑って?」

「目的の水晶を見たら、私たち三人欲が出てしまったんですね……恥ずかしいわ」

「冒険者をやってれば、誰でもありそうなことだから、そんなに気にするこの無いさ」

「カズさんは、落ち着いてるんですね」

「そうでもないよ。さっきも怒鳴っちゃったし」

「そんな、私達の為に言ってくれたんですから。それに比べてボルタとワットったら、せっかくカズさんが冷静にさせてくれたのに、分かってるのかしら!」

「これからは、ポピーが二人の手綱を握らないと」

「私は、二人のお守りですか? 疲れそうだわ」

「アハハハッ」

「他人事だと思って。カズさんには今回だけじゃなくて、本格的に私達のパーティーに入ってもらいたいわ。駄目ですか?」

「その時が来たら考えておくよ」

「あ~あ、フラれちゃったわ。でも気が向いたら、いつでも来くださいね! 私は大歓迎ですから!」

「……ああ」

「さぁ行きましょう。先に行った二人が心配だわ」

「そうだね。それより、なんで敬語になってるの?」

「ずっと頼ってばりいるので、タメ口なのが申し訳なくて」

「気にすることないに。口調も元に戻してよ。ボルタとワットがいたら、変に思うだろうから」

「分かりました。あっ! 分かったわ」

 ポピーと話を終えて、急いで二人の後を追う。
 ポピーがライトの魔法を使い、先を照らしながら進んで行くと、直ぐに二人に追い付いた。

「良かったわ。そんなに離れてなかったのね」

「ハァーハァー」

「ゼェーハァー」

「! 二人共どうしたの? 大丈夫!?」

 先に洞窟の奥へと進んでいった二人が、膝を付き息を荒くして、苦しそうにしてる。
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