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三章 王都オリーブ編1 王都オリーブ

102 万病薬 と 治療処置

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「これが頼まれた素材です」

「! これはまさか『氷結花』ですか!?」

「そうです」

「まさか本当に見つかるなんて! しかも氷漬けにされていない状態の物なんて、初めて見ました!」

「氷漬けではなく、切り花の状態だということは、これを採取したのは、カズ君ですか?」

「ええ。偶然ですが見つけまして、アイテムボックスを使えるので、切り花の状態で持ち帰ったんですよ。そうしたら、こちらでこの花を必要と聞いたので、今回依頼を受けて来たんです」

「なるほど。確かにアイテムボックスを使えれば、採取した状態のままで持ち帰るのは可能ですな。しかしですな、滅多に見つからない花なので、採取方法もハッキリとしていないのに」

「い、今はそんな話より、早く薬を調合した方が。雪が随分解けてしまってるので、早くしないと枯れてしまいます」

「そ、それもそうですね。お二人はここでお待ち下さい。私はすぐに、薬の調合を行います。こちら(氷結花)は、持っていかせてもらいます」

 アキレアは、氷結花が入った小ビンを持ち、部屋を駆け出して行った。

「フゥ……これで依頼は完了かな。あ! モルトさん、右手の貴族印はいつ消えるんですか?」

「正式に依頼完了の手続きが終われば、すぐに消えますよ」

「それは良かった」

「貴族印があるのは、嫌いですか?」

「そう…ですね。これがあると、なんだか固く苦しくて。それに飼われてるみたいで、好きにはなれないですね」

「カズ君は少し変わってますね」

「よく言われます」

「貴族印があると、お抱えの冒険者になって、報酬良い依頼を受けれたり、後ろ楯が付いたりと、喜ぶ人の方が多いんですがね。その分失敗して、信用を無くすと、冒険者を引退する羽目になったりもしますが」

「確かに後ろ楯は大きいですが、貴族の権力争いに、巻き込まれるのは面倒ですから」

「権力争いですか。そういった事も、なくはないですが」

 その時、部屋の扉が開き、アキレアが戻ってきた。

「失礼します。モルトさんにお願いがありまして」

「儂に? なんですか?」

「今出来た薬を、鑑定してもらえないでしょうか? いつもはジルバさんに見てもらってるんですが、今は居りませんし、私が持っている、鑑定の魔導具だけでは心配で。詳しく調べられる方が他にいないので、お願いします」

「儂で良ければ」

「ありがとうございます」

「では、薬を見せてください」

 アキレアが、小ビンに入った液体を、モルトに渡した。
 それを受け取ったモルトは調べる為に、スキル《鑑定》を使用した。

 俺も横から【万物ノ眼】の効果を使い、同じく小ビンの中身を《鑑定》した。



 【万病の薬(弱)】 『一級』
 ・あらゆる病を治す効果がある。
 ・使用者の体力が弱まっていると、効果が弱くなる。
 ・万病の薬(弱)は、体力は回復しない。
 ・他の薬と同時に服用すると、効果が弱まる。

 『・万病の薬(弱)は、徐々に効果が弱まるり、調合してから二時間で、完全に効果が失われる』



「鑑定した結果、これは万病の薬(弱)ですね。効果は、あらゆる病に効果があるようです」

「良かった。上手く調合出来たようで」

「ただ注意点があります。体力が消耗している方に使用すると、効果が弱まります。この薬では、体力までは回復しません。他の薬と服用しても効果が弱まるとあるので、使用時には気を付けてください」

「分かりました。ありがとうございます。それでは、魔法で体力を回復出来る方を同席して、薬を使用した方が良さそうですね」

「え?」

「んっ? 何ですかカズ君?」

「大事な説明が、もう一つ抜けてますよ」

「もう一つ? 儂にはこの四つしか、見えてませんが。カズ君も鑑定を?」

「失礼だと思いましたが、横から勝手に、調べさせてもらいました」

「カズさんでしたね。貴方には、何が見えたんですか?」

「この薬は、調合が完成したとともに効果が弱まり、二時間で完全に効果が失われると」

「何ですって! それでは、すぐに奥様に飲ませなと!」

「本当かねカズ君? 依頼を受けてきた俺が、嘘を言ってどうするんですか!」

「それはそうだが、儂の鑑定では、読みとれなかったのか」

「モルトさん。信用して良いんですよね」

「大丈夫です。儂を信用してください」

「分かりました。ではモルトさんに、魔法で奥様の回復を、お願い出来ないでしょうか?」

「……」

「モルトさん!」

「儂は回復魔法を、使えないんですよ。だからいつも、回復薬を持ち歩いてるんです。申し訳ありない」

「そんな……カズさん。貴方は回復魔法を、使えないんですか?」

「初歩的なヒーリングでしたら使えますけど、病人がどんな状態か分からないのに、俺がやるわけには……」

「それもそうですが……」

「なんならその薬を俺が預かります。アイテムボックスに入れておけば、薬の劣化を防げますし」

「アキレアさん。儂もそれが良いと思いますよ。取りあえず、今はカズ君に預けて」

「……そうですね。それではお願いし…」

「失礼します」

 その時、部屋の扉が勢いよく開き、一人のメイドが血相を変えて入ってきた。

「なんですかノックもせずに、お客様が見えてるんですよ!」

「申し訳ござしません。ですが、急に奥様のご容態が!」

「何ですって! すぐに参ります」

「アキレアさん。儂らも何か手伝いましょう」

「ですがお二人は……」

「そんなこと言ってる暇はないんでしょ!」

「はい。分かりました。お願いします!」

 カズとモルトは、アキレアに付いて屋敷の奥へと進み、一室へと入った。

「お二人共ここで見聞きする事は、他言無用です。宜しいですね」

「もんろんです。カズ君も分かってるね」

「ええ。分かってます」

 部屋の中には、白いレース生地が垂れ下がった大きなベットがあり、一人の女性が横になっていた。
 そのベットを囲んで、心配そうにしている、四人のメイドがいた。

「奥様大丈夫ですか? デイジーお嬢様達からお薬の素材が届きまして、調合が出来たところです」

「アキレアさん。そのままでは効果が……」

「分かってます。分かってますが……」

「落ち着いてください(やっぱり流れ的に、俺がやるしかないか)」

「は、はい……」

「アキレアさん、俺が回復させますので、薬を飲ませてください」

「…はい。お願いします」

「アキレアさん宜しいんですか? 見ず知らずの方を奥様に」

「今は時間がありません。責任は私がとります! カズさんお願いします」

「はい〈クリーン〉(一応全身を清潔にしないと)」

「何をしたんですか!?」

「病人の近くに行くので、魔法を使い、身体と着ている物から汚れを除去して、清潔な状態にしたんです」

 手前にはアキレアが居るので、ベッドの反対側に行き、横になって苦しんでる女性に近づく。
 垂れ下がってるレースを上げて【万物ノ眼】で、女性の状態を確認する。
 念の為に、癌(がん)のような病気がないかも調べてよう。
 もし癌(がん)のような病気があったら、症状を進行させてしまうからな。
 と言っても、医療の知識なんて、殆どないんだけど、前に医者が主人公の漫画を読んだときに、知ったんだけど。
 あ! でもあの主人公は、無免許だったな。

「ステータス確認《分析》(容態と病状)」(ボソッ)


 名前: マーガレット・オリーブ・モチヅキ
 性別: 女
 年齢: 32歳
 種族: 人

 容態(病状): 衰弱(身体機能低下・魔力低下・内臓機能低下・意識低下・呼吸機能低下・脈拍低下・心肺機能低下)


 弱ってるどころじゃない、完全に瀕死の状態じゃないか!
 このまま目の前で、死なれでもしたら大変だ!
 目立つのがどうだとか、言ってらんないな。
 先ずは魔法で回復させて、薬を飲ませないと。
 でもいきなり多くの魔力を使って回復しても、体が魔力に耐えられるか、分からないしから、少しずつゆっくりと回復しよう。

 癌(がん)のような病気も、ステータスには出でこなかったから、回復しても大丈夫だろう。
 でも病気と言っていたが、衰弱と表示されただけで、病症が出ないのは、どういう事だ?
 取りあえず回復だ! ヒーリングだけだと不安だから『キュア』も使っておこう。


 《魔法説明》
 『《水》キュア : 水属性の回復魔法。体の傷を癒し、体力を回復させる』


「〈ヒーリング〉〈キュア〉」(ボソッ)

 ベットで横になっているマーガレットに、手をかざし、二種類の回復魔法を使用した。
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