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三章 王都オリーブ編1 王都オリーブ
108 色んなメイドさん
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「カズさん。こちらに座って、また話し相手になってください」
楕円形のテーブルに4脚の椅子があり、その1脚に座っているマーガレットに手招きされた。
「あ、はい。俺なんかで良ければ(いかん。少し見えているメイドさんの尻尾を、凝視してしまった)」
「そう言えばカズさんに、ビワを紹介してなかったわね」
「あ、はい。メイド長のベロニカさんとミカンさんには、さっき会いましたが」
「あらそう。ベロニカには、カズさんを呼んで来てもらうように頼んだけど、ミカンにはもう会ったのね」
「はい」
「それなら今日は、我が家で働くメイド達の話をしましょう。それじゃあ、先ずはここに居るビワに、自己紹介をしてもらいましょうか。ビワ」
「…はい」
扉の横に立っていたメイドのビワが、それを聞いて近付いてきた。
「…ビワです。昨日は助けていただき、ありがとう…ございます」
「カズです。よろしくお願いします。ビワさんは、身体の方は大丈夫ですか?」
「あ、あの…はい。大丈夫…です」
「ごめんなさいカズさん。ビワはちょっと人見知りで、しかも男性が苦手なんですよ。話すのもあんまり得意ではなくてね。でも優しくて、とても良い娘よ」
「大丈夫です。俺も昔は人見知りでしたから(今でも若干あるけど)」
「あらそうなの! ねぇビワ、カズさんにビワのことを話していいかしら?」
「え…あの……少しだけなら」
「マーガレットさん。ビワさんが嫌かも知れないので、無理して教えてくれなくても」
「少しなら…大丈夫。奥様に…お任せします」
「任せなさい! 余計な事までは言わないわ!」
マーガレットを見ると、話がしたくて、うずうずしているようだ。
三年も呪いの影響で、寝たきりだったのだから、無理もない。
「えーと、ビワは獣人族じゃなくて、ちょっと珍しい狐の半妖なの。17歳の内気な女性で、我が家に来たのは、五年程前かしら。当時から人見知りなのは、変わらないわね。まぁ色々とあったから仕方ないけど。あとは……そう! 尻尾の毛並みが良いのよ!」
マーガレットが言った最後の言葉を聞いて、俺はスカートの下から少し見え隠れしている、ビワの尻尾を見て思った。
毛並みの良い尻尾を『もふもふ』してみたいと。
「あ、あの…奥様……」
「あら、これは言わない方が良かったかしら。ごめんなさい。カズさんもビワが恥ずかしがってるから、あんまり見ないであげてね」
「ご、ごめんなさい。スカートの下から、少し見えている尻尾が、なんか可愛かったからつい」
「かわ…いい……」
ビワは顔を赤くして、後ろを向いてしまった。
後ろを向いたことで、スカートの下から見えている尻尾は、左右に動いているのが分かり、頭の上にある狐耳はピクピクしていた。
「あ……(また! 昨日もアキレアさん相手に、やらかしたばかりなのに)」
「あら! カズさんは、ビワ見たいな娘がお好みかしら!」
「ちょ、マーガレットさん。何をニヤニヤしながら言ってるんですか! 違います!」
「じゃあ半妖はお嫌い?」
「私…嫌われてる……半妖だから……」
振り返ったビワは、今度は目頭を赤くして涙目になり、耳と尻尾は垂れ下がりっていた。
「いや半妖だからとか関係ないですし、ビワさんのことも嫌いじゃないから! むしろ可愛いくて、黄色い長い髪も綺麗だし、そのもふもふの尻尾を触りたいと思って……はっ!(ぬぉぉー! 俺はまた何を言ってるんだ!)」
「尻尾は…ダメ。恥ずかしい…から」
「あらぁ! やっぱりカズさんはビワがお好み!」
「あのマーガレットさん。満面の笑みを浮かべながら、俺とビワさんをからかって、遊ばないでください」
「分かっちゃったかしら! 二人とも良い反応してくれるんですもの!」
「奥様…意地悪です」
「ごめんなさい。でもビワの色んな顔が見れて、私嬉しいわ」
「私も…奥様の笑顔が見れて…嬉しい…です。でも奥様…まだ安静にしてないと…駄目。無理して…明るくしなくて…いい」
「ありがとうビワ。さて次は、ミカンの事を、教えてあげましょう」
「本人が居ないんですから、簡単な紹介でいいですから」
「ミカンは人族で、14歳の可愛い女の子よ。我が家に来たのは、ビワより少し前で、五年半くらいかしら。初めて会った頃は、純粋で良い子だったのだけど、私が子供達をからかっているのを見て、それを覚えてしまってね。カズさんはミカンに、からかわれなかったかしら?」
「……何故だか、お兄ちゃんと呼ばれる事になりました」
「ミカンにお兄ちゃんが出来たのね。カズさんは妹が出来て嬉しい?」
「な、何を言ってるんですか! 俺にそんな趣味は……」
「冗談よ。ごめんなさいお兄ちゃん」
「カズ…お兄ちゃん」(ボソッ)
「んっ?」
ビワを見たら、口を押え顔を背けた。
「ビワも呼びたいのかしら?」
「……」
「マーガレットさん」
「あらごめんなさい。ついね」
三年近く話せなくて溜まった分が、一気に出てきたんだな。
寝たきりで、命も危険だった訳だし、無理もないか。
だが、からかい過ぎだよ!
「それじゃあ、次は『キウイ』ね」
「キウイさんですか。まだしっかりと、会ったことないです」
「キウイは18歳で、猫の獣人族よ。いつも明るく元気な女性! ビワとミカンの二人とは違い、雇った娘なの。最初の頃は暇が出来ると、日向でゴロゴロしてることがよくあったわ。その度に、ベロニカに叱られてたわね」
「それはまさしく、気ままな猫みたいですね」
「ふふっ、そうね。我が家に来たのは、メイドの中では一番最後で、四年ほど前だったかしら。私の母が体調を崩して、気分が憂鬱な時に、当時からひょうきんで、周りを明るく、楽しくしてくれようとするキウイを雇ったの。それで母は気持ちが少し明るくなってきたけど、結局体調は良くならずに、仕事を引退してアヴァランチェに移り住み、静養することになったのだけど」
「でも今のジニアさんは、元気でしたよ」
「そうよね。カズさんは会ってるのよね」
「ええ。今回の依頼で、アヴァランチェのお屋敷に行った時に」
「母が元気になった今だから言えるけど、当時キウイには悪い事をしたわ。母が元気にならなかったのを見て、自分が役に立たなかったと思ってしまったのね。そのあとキウイはメイドを辞めようとしたわ。でも私が無理を言って、続けてもらったの」
「それもこれも、元々が呪いのせいですから、皆さんが気に病む事はないんですよ」
「カズさん。それをキウイにも言ってあげて」
「俺よりマーガレットさんが言った方が、気持ちが安らぐと思いますよ。機会があったら、俺からも言っておきますけど」
「そうね。キウイも大事な家族ですものね」
「ええ」
「そうだわ! カズさんに一つ注意が」
「なんですか?」
「キウイは胸が大きいから、凝視しないように!」
「しませんよ!」
「そうよね。カズさんの好みは、ビワだものね」
「そ、そんな……わた…しだなん…て」
「マーガレットさん。ビワさんが本気にしますから、そういった冗談はやめましょう。俺も返答に困りますから」
「あら、今度はアッサリと流しちゃうのね。寂しいわ。ビワは良い反応をしくれるのに」
「奥様……からかわないで…ください」
「あら! ビワの怒ったところが見れるなら、もっとやろうかしら!」
「……」
「ビワさん。こんな時のマーガレットは、相手にしない方が良いと思いますよ」
「カズさんたらヒドイわ。また身体の具合が、悪くなりそうだわ」
「奥様!」
「ビワさん大丈夫です。冗談ですから。マーガレットさんも、今の状態でその冗談は、ビワさんが本気にしますから」
「ちょっと悪ふざけが過ぎたわね。ごめんなさいビワ」
「もう! 怒りますよ奥様!」
「良いわ。ビワの怒った顔も可愛いわ。カズさんも、そう思うでしょ!」
「マーガレットさんは、懲りないですね。同意ですが」
「もう! ……二人もと…知りません」
ビワが怒って、そっぽを向いた。
「ちょっとおふざけが過ぎたわね。あとは、ベロニカとアキレアね」
「そう言えば、ベロニカさんはメイド長と聞きましたが、こちらでメイドさんになってから、長いんですか?」
「長いわよ。何せ母を子供頃から、お世話をしていたのですから」
「それはベテランですね!」
「私もこうなる前までは、ベロニカによく叱られたものよ。私がこの性格だから」
「アハハ……(これで誰が一番偉いか分かったな)」
「本当は母が仕事を引退して、アヴァランチェで静養する時に、付いて行くつもりだったらしいの。でもビワ達メイドが、まだ未熟なのを知ってたから、こちらに残って教えるようにと、母がベロニカに言ったの」
「ベロニカさんも、ジニアさんが心配だったんでしょうね」
「そうね。何せ母は子供の頃からベロニカの事を、姉のようにしたっていたと聞いたことがあるから。私の子供達にも、メイド達とそうなってほしいと思ってるわ」
「それは良いですね(全ての貴族が、こんなに穏やかなら良いのにな)」
楕円形のテーブルに4脚の椅子があり、その1脚に座っているマーガレットに手招きされた。
「あ、はい。俺なんかで良ければ(いかん。少し見えているメイドさんの尻尾を、凝視してしまった)」
「そう言えばカズさんに、ビワを紹介してなかったわね」
「あ、はい。メイド長のベロニカさんとミカンさんには、さっき会いましたが」
「あらそう。ベロニカには、カズさんを呼んで来てもらうように頼んだけど、ミカンにはもう会ったのね」
「はい」
「それなら今日は、我が家で働くメイド達の話をしましょう。それじゃあ、先ずはここに居るビワに、自己紹介をしてもらいましょうか。ビワ」
「…はい」
扉の横に立っていたメイドのビワが、それを聞いて近付いてきた。
「…ビワです。昨日は助けていただき、ありがとう…ございます」
「カズです。よろしくお願いします。ビワさんは、身体の方は大丈夫ですか?」
「あ、あの…はい。大丈夫…です」
「ごめんなさいカズさん。ビワはちょっと人見知りで、しかも男性が苦手なんですよ。話すのもあんまり得意ではなくてね。でも優しくて、とても良い娘よ」
「大丈夫です。俺も昔は人見知りでしたから(今でも若干あるけど)」
「あらそうなの! ねぇビワ、カズさんにビワのことを話していいかしら?」
「え…あの……少しだけなら」
「マーガレットさん。ビワさんが嫌かも知れないので、無理して教えてくれなくても」
「少しなら…大丈夫。奥様に…お任せします」
「任せなさい! 余計な事までは言わないわ!」
マーガレットを見ると、話がしたくて、うずうずしているようだ。
三年も呪いの影響で、寝たきりだったのだから、無理もない。
「えーと、ビワは獣人族じゃなくて、ちょっと珍しい狐の半妖なの。17歳の内気な女性で、我が家に来たのは、五年程前かしら。当時から人見知りなのは、変わらないわね。まぁ色々とあったから仕方ないけど。あとは……そう! 尻尾の毛並みが良いのよ!」
マーガレットが言った最後の言葉を聞いて、俺はスカートの下から少し見え隠れしている、ビワの尻尾を見て思った。
毛並みの良い尻尾を『もふもふ』してみたいと。
「あ、あの…奥様……」
「あら、これは言わない方が良かったかしら。ごめんなさい。カズさんもビワが恥ずかしがってるから、あんまり見ないであげてね」
「ご、ごめんなさい。スカートの下から、少し見えている尻尾が、なんか可愛かったからつい」
「かわ…いい……」
ビワは顔を赤くして、後ろを向いてしまった。
後ろを向いたことで、スカートの下から見えている尻尾は、左右に動いているのが分かり、頭の上にある狐耳はピクピクしていた。
「あ……(また! 昨日もアキレアさん相手に、やらかしたばかりなのに)」
「あら! カズさんは、ビワ見たいな娘がお好みかしら!」
「ちょ、マーガレットさん。何をニヤニヤしながら言ってるんですか! 違います!」
「じゃあ半妖はお嫌い?」
「私…嫌われてる……半妖だから……」
振り返ったビワは、今度は目頭を赤くして涙目になり、耳と尻尾は垂れ下がりっていた。
「いや半妖だからとか関係ないですし、ビワさんのことも嫌いじゃないから! むしろ可愛いくて、黄色い長い髪も綺麗だし、そのもふもふの尻尾を触りたいと思って……はっ!(ぬぉぉー! 俺はまた何を言ってるんだ!)」
「尻尾は…ダメ。恥ずかしい…から」
「あらぁ! やっぱりカズさんはビワがお好み!」
「あのマーガレットさん。満面の笑みを浮かべながら、俺とビワさんをからかって、遊ばないでください」
「分かっちゃったかしら! 二人とも良い反応してくれるんですもの!」
「奥様…意地悪です」
「ごめんなさい。でもビワの色んな顔が見れて、私嬉しいわ」
「私も…奥様の笑顔が見れて…嬉しい…です。でも奥様…まだ安静にしてないと…駄目。無理して…明るくしなくて…いい」
「ありがとうビワ。さて次は、ミカンの事を、教えてあげましょう」
「本人が居ないんですから、簡単な紹介でいいですから」
「ミカンは人族で、14歳の可愛い女の子よ。我が家に来たのは、ビワより少し前で、五年半くらいかしら。初めて会った頃は、純粋で良い子だったのだけど、私が子供達をからかっているのを見て、それを覚えてしまってね。カズさんはミカンに、からかわれなかったかしら?」
「……何故だか、お兄ちゃんと呼ばれる事になりました」
「ミカンにお兄ちゃんが出来たのね。カズさんは妹が出来て嬉しい?」
「な、何を言ってるんですか! 俺にそんな趣味は……」
「冗談よ。ごめんなさいお兄ちゃん」
「カズ…お兄ちゃん」(ボソッ)
「んっ?」
ビワを見たら、口を押え顔を背けた。
「ビワも呼びたいのかしら?」
「……」
「マーガレットさん」
「あらごめんなさい。ついね」
三年近く話せなくて溜まった分が、一気に出てきたんだな。
寝たきりで、命も危険だった訳だし、無理もないか。
だが、からかい過ぎだよ!
「それじゃあ、次は『キウイ』ね」
「キウイさんですか。まだしっかりと、会ったことないです」
「キウイは18歳で、猫の獣人族よ。いつも明るく元気な女性! ビワとミカンの二人とは違い、雇った娘なの。最初の頃は暇が出来ると、日向でゴロゴロしてることがよくあったわ。その度に、ベロニカに叱られてたわね」
「それはまさしく、気ままな猫みたいですね」
「ふふっ、そうね。我が家に来たのは、メイドの中では一番最後で、四年ほど前だったかしら。私の母が体調を崩して、気分が憂鬱な時に、当時からひょうきんで、周りを明るく、楽しくしてくれようとするキウイを雇ったの。それで母は気持ちが少し明るくなってきたけど、結局体調は良くならずに、仕事を引退してアヴァランチェに移り住み、静養することになったのだけど」
「でも今のジニアさんは、元気でしたよ」
「そうよね。カズさんは会ってるのよね」
「ええ。今回の依頼で、アヴァランチェのお屋敷に行った時に」
「母が元気になった今だから言えるけど、当時キウイには悪い事をしたわ。母が元気にならなかったのを見て、自分が役に立たなかったと思ってしまったのね。そのあとキウイはメイドを辞めようとしたわ。でも私が無理を言って、続けてもらったの」
「それもこれも、元々が呪いのせいですから、皆さんが気に病む事はないんですよ」
「カズさん。それをキウイにも言ってあげて」
「俺よりマーガレットさんが言った方が、気持ちが安らぐと思いますよ。機会があったら、俺からも言っておきますけど」
「そうね。キウイも大事な家族ですものね」
「ええ」
「そうだわ! カズさんに一つ注意が」
「なんですか?」
「キウイは胸が大きいから、凝視しないように!」
「しませんよ!」
「そうよね。カズさんの好みは、ビワだものね」
「そ、そんな……わた…しだなん…て」
「マーガレットさん。ビワさんが本気にしますから、そういった冗談はやめましょう。俺も返答に困りますから」
「あら、今度はアッサリと流しちゃうのね。寂しいわ。ビワは良い反応をしくれるのに」
「奥様……からかわないで…ください」
「あら! ビワの怒ったところが見れるなら、もっとやろうかしら!」
「……」
「ビワさん。こんな時のマーガレットは、相手にしない方が良いと思いますよ」
「カズさんたらヒドイわ。また身体の具合が、悪くなりそうだわ」
「奥様!」
「ビワさん大丈夫です。冗談ですから。マーガレットさんも、今の状態でその冗談は、ビワさんが本気にしますから」
「ちょっと悪ふざけが過ぎたわね。ごめんなさいビワ」
「もう! 怒りますよ奥様!」
「良いわ。ビワの怒った顔も可愛いわ。カズさんも、そう思うでしょ!」
「マーガレットさんは、懲りないですね。同意ですが」
「もう! ……二人もと…知りません」
ビワが怒って、そっぽを向いた。
「ちょっとおふざけが過ぎたわね。あとは、ベロニカとアキレアね」
「そう言えば、ベロニカさんはメイド長と聞きましたが、こちらでメイドさんになってから、長いんですか?」
「長いわよ。何せ母を子供頃から、お世話をしていたのですから」
「それはベテランですね!」
「私もこうなる前までは、ベロニカによく叱られたものよ。私がこの性格だから」
「アハハ……(これで誰が一番偉いか分かったな)」
「本当は母が仕事を引退して、アヴァランチェで静養する時に、付いて行くつもりだったらしいの。でもビワ達メイドが、まだ未熟なのを知ってたから、こちらに残って教えるようにと、母がベロニカに言ったの」
「ベロニカさんも、ジニアさんが心配だったんでしょうね」
「そうね。何せ母は子供の頃からベロニカの事を、姉のようにしたっていたと聞いたことがあるから。私の子供達にも、メイド達とそうなってほしいと思ってるわ」
「それは良いですね(全ての貴族が、こんなに穏やかなら良いのにな)」
応援ありがとうございます!
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