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三章 王都オリーブ編1 王都オリーブ

114 親子の再会 と 心よりの感謝

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 カズが外に出ると、そこには三人が屋敷に入らずに立っていた。

「あれ三人そろって、どうしたんです? アキレアさんが探してたよ」

「……」

「……」

「それがにゃ……」

 三人が後ろを向くと、メイド服がスゴく汚れていた。

「どうしてそんなことに?」

「にゃちきとミカンが、掃除をしてる時ににゃ……」

「ビワお姉ちゃんが来たもんで、掃除を手伝ってもらってたの。そしたら……」

「私が…転んだ時に…二人を…巻き込んじゃって……ごめんなさい」

「こんなに汚したら、アキレアに怒られるにゃ」

「……私が…悪い…のよ」

「誰か魔法は使えないの?」

「にゃちきとビワは、使えなくもないけど、仕事中は魔法を使っちゃ駄目って、アキレアに言われてるにゃ」

「それは、時と場合によるんじゃないの?(変に真面目だな)」 

「私が悪い…から、私が…謝ってくる」

「ハァー……〈クリーン〉」

「わっ! ミカンの服キレイになった!」

「カズにゃん」

「あの…魔法は…」

「仕事中に、魔法を使わないように言われてるのは、キウイさんとビワさんでしょ。俺は言われてないから」

「カズお兄ちゃん。ありがとう」

「やっぱりカズにゃんは、優しいにゃ」

「あ…ありがとう。カズ…さん」

「いいから。ほら早く行かないと、アキレアさんが怒るよ」

 三人は小走りに、アキレアの元へ向かって行った。
 これで怒られずにすむと思った三人だったが、小走りでも走って来たことにかわりはないので、結局怒られた。
 しかも掃除をしてたにも関わらず、服がキレイ過ぎると怪しまれて、それがきっかけで、キウイが古い馬車を片付けるように、ジルバから連絡が来ていたのを、報告し忘れていたのがばれ、それを片付けるのをカズ頼んだ事も、メイド服を汚して屋敷に入れずにいた事も、全部ばれてしまい、キウイは余計に怒られてしまった。

「ほら三人共シャキッとしなさい。そろそろお嬢様達が乗った馬車が着く頃ですから。さぁ入口まで迎えに行きますよ」

「あの俺は?」

「カズさんは部屋で待っていてください。あとで呼びに来ます」

「そうですか。分かりました」

 部屋の窓から、一台の馬車が入って来るのが見えた。
 馬車からは、デイジーとダリアが降りてきて、少ししたら、バタバタと廊下を走る音が聞こえた。
 デイジーとダリアは、勢いよくマーガレットが居る部屋に入った。

「お母様!」

「お母様!」

「デイジー、ダリアお帰りなさい」

 両腕を大きく広げたマーガレットの胸に、デイジーとダリアが飛び込んで、三人は大粒の涙を流しながら喜び、強く抱き合った。

「お母様もう大丈夫なんですか? 痛い所はありませんか? 食欲はありますか? まだ横になっていた方が?」

「落ち着いてデイジー。私はもう大丈夫です」

「お母様。本当に大丈夫ですか? ぼくは……」

「大丈夫よダリア。心配してくれてありがとう」

「奥様。お元気になられたのですね」

「ジルバもありがとう。子供達に付いて、守ってくれて感謝しています」

「とんでも御座いません」

「お母様。もう起きて大丈夫ですか? まだ治ったばかりですし、やっぱり横になっては?」

「大丈夫よデイジー。アキレアが薬を調合して、飲ませてくれてからは、とても調子が良いわ。デイジーとダリアが、薬の材料を探してくれたお陰ね」

「たまたまですわ。カズさんに会わなければ、氷結花を見つけることも、お母様の元へ届けることも出来なかったです」

「そうだったの。カズさんには、感謝しっぱなしね」

「アキレア。カズ殿はいつ来られましたか? 奥様のご病気が治られたと、寄った街のギルドから、私し達が連絡を受けたのが、十日前でしたから」

「カズさんが、モルトさんに連れて来られて、お屋敷に来たのが、確か……十六日前です」

「十六日ですか! 本当ですか?」

「はい。間違いないかと。王都に来た正確な日付は分かりませんが」

「そうですか……」

「あのう、それが何か?」

「いえ。やけに早く着いたと思いまして……」

「デイジーとダリアも帰って来たことですし、改めましてカズさんに、しっかりとお礼を致しましょう」

「ではせっかくですから、奥様は正装に着替えてはどうでしょう? これから先の事ですが、他の貴族の方々と会うときの練習も兼ねては」

「別にいいわよ。カズさんは形式ばったことは苦手でしょうし」

「これは奥様の為でもあります。それに一度だけでも、貴族としてお礼を申し上げた方が、宜しいと思いますが」

「分かりました。ベロニカのおっしゃる通りにします」

「それでは、私しとアキレアは、奥様の着替えを手伝いますので、他の皆さんは、先にお部屋へ移動して下さい。奥様の着替えが終わったら、アキレアにはカズさんを呼んできてもらいます」

「分かりました」

 親子の再会を果たしてから三十分程経った頃に、カズを呼びにアキレアがやって来た。

「カズさん。皆様がお待ちですので、お越しください」

「はい。分かりました」

 アキレアに付いて行き、一室へ案内された。
 そこは屋敷の主が、大切な人と会う為に使われる部屋だった。
 中に入ると、正装したマーガレットと、その横にデイジーとダリアが座っていた。
 そして脇には、ジルバとメイド長のベロニカが居る。
 一緒に入ってきたアキレアと、部屋に居たキウイ、ミカン、ビワの四人は、ベロニカの横に並んだ。

「カズさん。どうぞお掛け下さい」

 カズはテーブルを挟んだ向の席に座った。
 座る際に、ビワが椅子を引いてくれた。

「ありがとうビワさん」

「……」

 ビワは黙ったまま軽く一礼すると、メイドの列に戻った。

「カズさん。改めまして今回の件に関して、お礼を申し上げるのに、貴族としての形式を取らせていただきます。残念ながら主たる主人は、帰ってきてはい居ませんので、代わりに私が、オリーブ・モチヅキ家の代表として、お礼を申し上げます。誠にありがとうございました」

「カズさん。お母様を救ってくださり、ありがとうございます」

「ありがとうございます。お母様を助けてくれて」

 マーガレットの後に、デイジーとダリアもお礼を言って頭を下げた。
 それと同時に、立っていたジルバとメイドの五人も頭を下げた。

「いえ、そんな……」

「しかも、急に苦しくなった私を助けてくださり、勝手に護衛の依頼を頼んでしまったのに、快く受けてくださって、ありがとうございました。アヴァランチェでは、子供たちが危険な所を、助けてくださったとも聞きました。カズさんには、感謝してもしきれません」

「いえそんな、とんでもない」

「プリンのことに関しても」(小声)

 並んでいたメイド達も、小さく頷いていた。

「んっ? プリン?」

「あ、いえ。取りあえず今回の報酬等は、ギルドの依頼も含みますので、モルトさんに話を通しておきます。ジルバ頼みますよ」

「はい奥様。お任せください。明日モルトが来ますので、その時に今回の件に関して、詳しく話を聞こうと思います。カズ殿にもその時に」

「はい」

「ベロニカ。もういいかしら? カズさん相手なんだから、こんな堅苦しいことしなくても」(小声)

「一応貴族として、お礼を申し上げる訳ですから、旦那様が居ない今は、奥様が代表して、いただかないといけません。それにしっかりと、お礼を申し上げたいと言ったのは、奥様ではないですか」

「それはそうだけど……」

「まあ良いでしょう。奥様もまだ体力が戻ってないですし、こういった形式上の事をする、良い練習になったでしょうから」

「ありがとうベロニカ」

「ですが、奥様にはもう少し、緊張感をもっていただきたいものです」

「うぅ……ベロニカは厳しいわ。さぁ皆、いつものように、楽にしてくれて良いわよ。カズさんも楽にしてね」

「は、はい(なんだったんだ?)」

「それじゃあ、今日は皆で夕食を食べましょう。デイジーにダリアも帰って来てくれたから、楽しく食事したいわ。アキレアお願い」

「はい奥様。キウイ、ミカン、ビワ行きますよ」

「私も手伝いましょう」

「メイド長は奥様の側に」

「今はデイジー様と、ダリア様が側に居るので大丈夫です。何かあってもジルバも居ますから」

 五人のメイドは、夕食の支度をする為に、部屋を出た行った。
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