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三章 王都オリーブ編3 王国に潜むの影
302 新たな旅へ 王都からの出発
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二人は第2ギルドに入ると、そのままギルドマスターの部屋に向かった。
「ここまで来てなんですが、渡してない報酬とは?」
「そんなの無いわよ」
「へ?」
「ちょっと話しがしたくて」
「でしたら昨日話してくたら」
「レラが居たからね」
「レラのことですか?」
「ええ。一緒に連れて行くんでしょ」
「そのつもりです。レラも望んでますし、故郷を探すという約束もありましたから」
「例えレラの故郷が見つかっても、受け入れてくれるとは限らないわよ」
「それはどういう?」
「レラが故郷を捨てて出て行ったと思われてるかも知れないってこと」
「そんなことは……」
「フェアリーは静かな森の中で、同族同士だけで暮らしてることが多いの。それが勝手に出て行ったとしたら、どうなると思う?」
「二度と戻れず追放ですか」
「かも知れないわ」
「その時は、ここに連れて戻ってきます。ですので、あの家をお願いします」
「あんな変わった家を、カズさん以外に住まわせられないわよ」
「変わった家を俺以外に……そうですか。なら戻って来る場所は残ってるってことですね」
「家を管理するだけだったら、月に一度に魔力を少し補充すればいいだけだから楽なものよ。以前はレラが隠れ住んでたから、数日に一度は補充に行く必要があったんだけど。カズさんに買ってもらって正解だったわ」
「俺的には色々便利ですし風呂もあったので、あの家を買えて良かったです。レラは少しワガママがありましたけど」
「うふふふ。レラをよろしくね」
「はい」
レラを嫁に出すような言い方をしたフローラとの話を終えたカズは、街へと買い物に行った。
毎日時間が出来たら、住人達に迷惑が掛からないように少しずつ食材を買い集めた。
品薄や品切れをおこさなおように、カズは同じ食材を大量に買うことはしなかった。
それでも香辛料は多く買った。
狩をして肉や魚を調達しても、塩だけで食べるのは辛いと分かっていたからだ。
現在アイテムボックスに、三人と小さいの一人が食べる量としては、二ヶ月分くらいはあるだろう。
国を出て次の街に着くまでどれ程あるか分からない、この量でも安心はできないと思ったカズは、少し足を伸ばして他の場所へ買い物に向かった。
第2ギルド周辺から離れ、向かった先は第3ギルド周辺の商店街。
売っている食材は、肉よりも海産物の方が多かった。
第2ギルド周辺の店は肉や魚より、野菜を主体として売る商店の方が多かった。
その理由は何ヵ所目かの店の従業員が、客の主婦達に話していたのをカズは耳にした。
肉なら第1ギルド周辺が良い、あそこのギルドマスターは肉が主食なため、色々な種類の獣やモンスターの肉が揃ってる店が多い。
野菜や果物なら第2ギルド周辺が良い、ハイエルフのギルドマスターの美貌を支えているのは、体に良い様々な野菜と果物を主食としているからだ。
海産物を買うならここ第3ギルド周辺が一番、海から離れたこの場所で新鮮な海産物を買えるのはここだけ。
健康を考えた食事をする第3ギルドマスターは、かのグレシード家の貴族様だ。
王都中心部周辺の商店街で、バランスの取れた食材が揃うのはここだけ、特に海産物は買いだ。
各場所で違う食材が買える情報はありがたいが、勝手に三人のギルドマスターの名前を使ったあげく、店が得になる話をしてないんだから、後々怒られても知らないぞ。
と、カズはどや顔で海産物推しの説明をする、肉屋の従業員にツッコミたくなった。
魚介類もある程度買い、日暮前には戻ろうと大通りを歩いていたら、偶然第3ギルドマスターのフリートと、第1ギルド所属の冒険者アイガーと出会った。
あれ以降二人とは会っていなかった事もあり、少し話しをすることにした。
肉屋の従業員がギルドマスターの名前を勝手に使ってた事を、カズは黙っててやることにした、肉屋なのに海産物を宣伝してるんだから、どうせ店主に怒られるだろと。
三人は近くにあるフリート行き付けの、喫茶店風の店に入った。
二人が一緒に居た理由をカズ尋ねると、アイガーはバルフートの代わりに出向いたとフリートが答えた。
次にフリートはドセトナの事を話しだした。
あれから家督を継いで当主となり、トリモルガ家の汚名をすすぐ為、日々奮闘していると。
トリモルガ家に居た二人の獣人、ホップとエビネに関しては、カズは会ったので知っていると伝えた。
アイガーは第4ギルドに行き、ギルドマスターが決まるまで、仮としてギルドマスターを一時的にする事になったと言う。
王都北東にある第4ギルドは、かつてサブ・ギルドマスターが手引きし、盗賊に身を落とした冒険者崩れが、素性を偽り出入りしてい場所だった。
一時閉鎖を余儀なくされるところだった第4ギルドだが、隣接する街の第5ギルドと第9ギルドが管理することで、一時閉鎖を免れた。
未だにギルドマスターとサブ・ギルドマスター未定の第4ギルドは、新たなギルドマスターを決めるべく、何人もの冒険者を試しで任せていた。
そして今回は第1ギルドのアイガーが選ばれたそうだ。
第9ギルドマスターの白狼エルブルスとアイガーは師弟関係にあるので、何かと手助けはしてもらえるはずだと。
前ギルドマスターについては、事件後体調が万全には戻らず結局引退したとの事だった。
二人の話を聞いた後、カズは国を出る事と、トラちゃんが王都で働き暮らす事を伝えた。
二人共フローラから話を聞いていたらしく、カズが国を出るのは知っていた。
テイムされてないモンスターが、王都で暮らしている事も噂で知っていた。
カズはトラちゃんの事を二人にも頼むと、嫌な顔をせず聞き入れてくれた。
三十分程話をしたあと、フリートとアイガーに別れを告げたカズは、レラとアレナリアが待つ家へと戻った。
日は既に落ち街灯が照らす夜道を、カズは小走りで家に向かう。
庭に居る馬に買ってきた野菜を与えると、カズは明かりが灯る家に入った。
「ただい…」
「カズ遅いよ! お腹空いた」
「また第一声それか。あれ、アレナリアは?」
「居るよ」
「二日酔いは治ったのか」
「もう平気なはず」
「俺が出掛けた後はどうしてた?」
「え~とね、一度お昼くらいに目が覚めたんだけど、朝の残ったスープを飲んだらまた寝ちゃって、少し前に起きて、今はお風呂に入ってる」
「そうか。レラ、アレナリアは……」
「アレナリアが、何?」
「あ、いや。まぁいいか(サブマスを辞めたのフローラさんは知ってるみたいだし、俺がとやかく言っても仕方ないか。もうアヴァランチェのギルドには、アレナリアが王都に居るを知らせてあるだろうしな。まあなんとかなるだろ)」
「それよりはごはん!」
「ささっと肉野菜炒めでも作るから、買っておいた唐揚げでも食べててくれ」
「唐揚げ! じゃあ麦シュワも」
「私も欲しいわ」
風呂から出たアレナリアが、髪を拭きながらリビングに来た。
「せっかく少し痩せたんだから、気を付けないとまた太るぞレラ。それに明日は出発する日だからな。二人とも起きなかったら置いていくからな。それでいいならお酒を出すぞ」
「あちし我慢する」
「やっぱり私もやめておくわ。昨夜飲み過ぎたから」
本当に置いていったりはしないと思っている二人だったが、今回はカズの言うことを素直に聞いた。
「食べ終わったら、必要な物を用意しとけよ」
「は~い」
「私は持ってきた荷物だけだから」
三人は食事を済ませたると、明日の支度を整えてから就寝した。
ほぼ一日寝ていたアレナリアだったが、まだ疲れが残っているのか、横になるとすぐに寝てしまった。
◇◆◇◆◇
カズは朝一馬に食事を与え、馬車に荷物を積み込み出発の用意をした。
屋内に戻ると、眠そうな顔をしたレラとアレナリアが起きていた。
パンとスープの簡単な朝食を済ませた二人に、忘れ物がないかを確かめさせ、その間にカズは裏の倉庫に住むトラちゃんを連れて来た。
三十分程すると、フローラはジルバが操作する馬車を案内してきた。
本来はモルトが案内をするのだが、今回は三人に別れを告げるため、代わりにフローラがやって来た。
馬車からルータが顔を見せ、カズに挨拶をした。
ビワは王都を出るまで、ルータの世話をするとのことだ。
レラとアレナリアはフローラと別れを告げると馬車に乗り込んだ。
カズも馬車に乗ろうとすると、フローラが歩み寄る。
「いいこと、アレナリアはある程度大丈夫でしょうけど、ビワさんはしっかり守ってあげなさい」
「分かってます」
「この国を出ると危険な場所は、思っている以上あるわ。場合によっては、人を殺める覚悟も必要よ」
「……」
「カズさんは優しいから、悪人でも命を奪いたくないでしょう。けど躊躇したら一緒に居る小さいレラや、非力なビワさんが死ぬ事になるのよ」
「それは……分かってるつもりです」
「カズさんには強い。でも何があるか分からないのがこの世界。知らない魔法やスキル、アイテムやアーティファクト一つで、レベル差を覆す事だって起こるわ。それは死に直結する事。カズさんが死んだら、一緒に居る女性三人はどうなると思う? それは言わなくても分かるでしょ」
「……はい」
「そのカズさんの優しさが、時には弱い者を危険にさらすかも知れないの。脅すような事を言ってごめんなさい」
「そんな。肝に銘じておきます」
「くれぐれも気を付けて」
「はい」
「時間を取らせたわね」
「フローラさんにはお世話になりっぱなしで、今までありがとうございました。それに……」
「まだ何か?」
「先日は恥をかかせたようなので、もし次に挽回する機会があれば、躊躇しないで抱かせてもらいます(この旅でどうするかを決めないとな)」
「バ、バカなこと言ってないで、早くに行きなさい」
思ってもいなかったカズの発言に、照れて頬をうっすらと染めるフローラだった。
ジルバの操作する馬車の車部分の上に、護衛を受け持ってるトラちゃんが乗り、カズ達が乗る馬車はその後を付いて行き、王都を東へと向かい走りだした。
「ここまで来てなんですが、渡してない報酬とは?」
「そんなの無いわよ」
「へ?」
「ちょっと話しがしたくて」
「でしたら昨日話してくたら」
「レラが居たからね」
「レラのことですか?」
「ええ。一緒に連れて行くんでしょ」
「そのつもりです。レラも望んでますし、故郷を探すという約束もありましたから」
「例えレラの故郷が見つかっても、受け入れてくれるとは限らないわよ」
「それはどういう?」
「レラが故郷を捨てて出て行ったと思われてるかも知れないってこと」
「そんなことは……」
「フェアリーは静かな森の中で、同族同士だけで暮らしてることが多いの。それが勝手に出て行ったとしたら、どうなると思う?」
「二度と戻れず追放ですか」
「かも知れないわ」
「その時は、ここに連れて戻ってきます。ですので、あの家をお願いします」
「あんな変わった家を、カズさん以外に住まわせられないわよ」
「変わった家を俺以外に……そうですか。なら戻って来る場所は残ってるってことですね」
「家を管理するだけだったら、月に一度に魔力を少し補充すればいいだけだから楽なものよ。以前はレラが隠れ住んでたから、数日に一度は補充に行く必要があったんだけど。カズさんに買ってもらって正解だったわ」
「俺的には色々便利ですし風呂もあったので、あの家を買えて良かったです。レラは少しワガママがありましたけど」
「うふふふ。レラをよろしくね」
「はい」
レラを嫁に出すような言い方をしたフローラとの話を終えたカズは、街へと買い物に行った。
毎日時間が出来たら、住人達に迷惑が掛からないように少しずつ食材を買い集めた。
品薄や品切れをおこさなおように、カズは同じ食材を大量に買うことはしなかった。
それでも香辛料は多く買った。
狩をして肉や魚を調達しても、塩だけで食べるのは辛いと分かっていたからだ。
現在アイテムボックスに、三人と小さいの一人が食べる量としては、二ヶ月分くらいはあるだろう。
国を出て次の街に着くまでどれ程あるか分からない、この量でも安心はできないと思ったカズは、少し足を伸ばして他の場所へ買い物に向かった。
第2ギルド周辺から離れ、向かった先は第3ギルド周辺の商店街。
売っている食材は、肉よりも海産物の方が多かった。
第2ギルド周辺の店は肉や魚より、野菜を主体として売る商店の方が多かった。
その理由は何ヵ所目かの店の従業員が、客の主婦達に話していたのをカズは耳にした。
肉なら第1ギルド周辺が良い、あそこのギルドマスターは肉が主食なため、色々な種類の獣やモンスターの肉が揃ってる店が多い。
野菜や果物なら第2ギルド周辺が良い、ハイエルフのギルドマスターの美貌を支えているのは、体に良い様々な野菜と果物を主食としているからだ。
海産物を買うならここ第3ギルド周辺が一番、海から離れたこの場所で新鮮な海産物を買えるのはここだけ。
健康を考えた食事をする第3ギルドマスターは、かのグレシード家の貴族様だ。
王都中心部周辺の商店街で、バランスの取れた食材が揃うのはここだけ、特に海産物は買いだ。
各場所で違う食材が買える情報はありがたいが、勝手に三人のギルドマスターの名前を使ったあげく、店が得になる話をしてないんだから、後々怒られても知らないぞ。
と、カズはどや顔で海産物推しの説明をする、肉屋の従業員にツッコミたくなった。
魚介類もある程度買い、日暮前には戻ろうと大通りを歩いていたら、偶然第3ギルドマスターのフリートと、第1ギルド所属の冒険者アイガーと出会った。
あれ以降二人とは会っていなかった事もあり、少し話しをすることにした。
肉屋の従業員がギルドマスターの名前を勝手に使ってた事を、カズは黙っててやることにした、肉屋なのに海産物を宣伝してるんだから、どうせ店主に怒られるだろと。
三人は近くにあるフリート行き付けの、喫茶店風の店に入った。
二人が一緒に居た理由をカズ尋ねると、アイガーはバルフートの代わりに出向いたとフリートが答えた。
次にフリートはドセトナの事を話しだした。
あれから家督を継いで当主となり、トリモルガ家の汚名をすすぐ為、日々奮闘していると。
トリモルガ家に居た二人の獣人、ホップとエビネに関しては、カズは会ったので知っていると伝えた。
アイガーは第4ギルドに行き、ギルドマスターが決まるまで、仮としてギルドマスターを一時的にする事になったと言う。
王都北東にある第4ギルドは、かつてサブ・ギルドマスターが手引きし、盗賊に身を落とした冒険者崩れが、素性を偽り出入りしてい場所だった。
一時閉鎖を余儀なくされるところだった第4ギルドだが、隣接する街の第5ギルドと第9ギルドが管理することで、一時閉鎖を免れた。
未だにギルドマスターとサブ・ギルドマスター未定の第4ギルドは、新たなギルドマスターを決めるべく、何人もの冒険者を試しで任せていた。
そして今回は第1ギルドのアイガーが選ばれたそうだ。
第9ギルドマスターの白狼エルブルスとアイガーは師弟関係にあるので、何かと手助けはしてもらえるはずだと。
前ギルドマスターについては、事件後体調が万全には戻らず結局引退したとの事だった。
二人の話を聞いた後、カズは国を出る事と、トラちゃんが王都で働き暮らす事を伝えた。
二人共フローラから話を聞いていたらしく、カズが国を出るのは知っていた。
テイムされてないモンスターが、王都で暮らしている事も噂で知っていた。
カズはトラちゃんの事を二人にも頼むと、嫌な顔をせず聞き入れてくれた。
三十分程話をしたあと、フリートとアイガーに別れを告げたカズは、レラとアレナリアが待つ家へと戻った。
日は既に落ち街灯が照らす夜道を、カズは小走りで家に向かう。
庭に居る馬に買ってきた野菜を与えると、カズは明かりが灯る家に入った。
「ただい…」
「カズ遅いよ! お腹空いた」
「また第一声それか。あれ、アレナリアは?」
「居るよ」
「二日酔いは治ったのか」
「もう平気なはず」
「俺が出掛けた後はどうしてた?」
「え~とね、一度お昼くらいに目が覚めたんだけど、朝の残ったスープを飲んだらまた寝ちゃって、少し前に起きて、今はお風呂に入ってる」
「そうか。レラ、アレナリアは……」
「アレナリアが、何?」
「あ、いや。まぁいいか(サブマスを辞めたのフローラさんは知ってるみたいだし、俺がとやかく言っても仕方ないか。もうアヴァランチェのギルドには、アレナリアが王都に居るを知らせてあるだろうしな。まあなんとかなるだろ)」
「それよりはごはん!」
「ささっと肉野菜炒めでも作るから、買っておいた唐揚げでも食べててくれ」
「唐揚げ! じゃあ麦シュワも」
「私も欲しいわ」
風呂から出たアレナリアが、髪を拭きながらリビングに来た。
「せっかく少し痩せたんだから、気を付けないとまた太るぞレラ。それに明日は出発する日だからな。二人とも起きなかったら置いていくからな。それでいいならお酒を出すぞ」
「あちし我慢する」
「やっぱり私もやめておくわ。昨夜飲み過ぎたから」
本当に置いていったりはしないと思っている二人だったが、今回はカズの言うことを素直に聞いた。
「食べ終わったら、必要な物を用意しとけよ」
「は~い」
「私は持ってきた荷物だけだから」
三人は食事を済ませたると、明日の支度を整えてから就寝した。
ほぼ一日寝ていたアレナリアだったが、まだ疲れが残っているのか、横になるとすぐに寝てしまった。
◇◆◇◆◇
カズは朝一馬に食事を与え、馬車に荷物を積み込み出発の用意をした。
屋内に戻ると、眠そうな顔をしたレラとアレナリアが起きていた。
パンとスープの簡単な朝食を済ませた二人に、忘れ物がないかを確かめさせ、その間にカズは裏の倉庫に住むトラちゃんを連れて来た。
三十分程すると、フローラはジルバが操作する馬車を案内してきた。
本来はモルトが案内をするのだが、今回は三人に別れを告げるため、代わりにフローラがやって来た。
馬車からルータが顔を見せ、カズに挨拶をした。
ビワは王都を出るまで、ルータの世話をするとのことだ。
レラとアレナリアはフローラと別れを告げると馬車に乗り込んだ。
カズも馬車に乗ろうとすると、フローラが歩み寄る。
「いいこと、アレナリアはある程度大丈夫でしょうけど、ビワさんはしっかり守ってあげなさい」
「分かってます」
「この国を出ると危険な場所は、思っている以上あるわ。場合によっては、人を殺める覚悟も必要よ」
「……」
「カズさんは優しいから、悪人でも命を奪いたくないでしょう。けど躊躇したら一緒に居る小さいレラや、非力なビワさんが死ぬ事になるのよ」
「それは……分かってるつもりです」
「カズさんには強い。でも何があるか分からないのがこの世界。知らない魔法やスキル、アイテムやアーティファクト一つで、レベル差を覆す事だって起こるわ。それは死に直結する事。カズさんが死んだら、一緒に居る女性三人はどうなると思う? それは言わなくても分かるでしょ」
「……はい」
「そのカズさんの優しさが、時には弱い者を危険にさらすかも知れないの。脅すような事を言ってごめんなさい」
「そんな。肝に銘じておきます」
「くれぐれも気を付けて」
「はい」
「時間を取らせたわね」
「フローラさんにはお世話になりっぱなしで、今までありがとうございました。それに……」
「まだ何か?」
「先日は恥をかかせたようなので、もし次に挽回する機会があれば、躊躇しないで抱かせてもらいます(この旅でどうするかを決めないとな)」
「バ、バカなこと言ってないで、早くに行きなさい」
思ってもいなかったカズの発言に、照れて頬をうっすらと染めるフローラだった。
ジルバの操作する馬車の車部分の上に、護衛を受け持ってるトラちゃんが乗り、カズ達が乗る馬車はその後を付いて行き、王都を東へと向かい走りだした。
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