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10話 安里翔
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安里翔は自らの身に何が起こったのか、未だに理解出来ずにいた。
学校の教室に居たかと思えば、いつの間にか、全く身に覚えの無い城の中に居て、次の瞬間には、広大な原野の中に居たのだ。眩しい日差しに思わず目を細める。
この場に居る人間らしい人間は、横に居る破廉恥なコスプレ女と、上半身裸のモヒカンのおっさんだけだ。怖い顔をした魔王と呼ばれる老人の姿が消えているのは、せめてもの救いだ。
「ちょっと、あんた!いつまで私の手を握ってんのよ!」
破廉恥女は俺の手を強く振り払った。
「そんなに乱暴にしなくてもいいだろ!そもそも、こんな訳の分からない所に、勝手に連れて来といて。一体お前達、俺をどうする気だ?」
「はぁ?あんた、何言ってんの!勝手に付い来といて!こっちはね、すっごく迷惑してんのよ!それよりもあんた誰なの?セシルを何処に隠したの?」
破廉恥女は、顔を俺に近付けながら、一息に捲し立てる様にしてペラペラ喚いた。風になびく美しい黒髪、長いまつ毛と、ぱっちりした瞳に、思わず息を呑んだ。生意気な性格は別として、きっとこの世界の美的感覚から言っても、この女は美人の部類に入るのだろう。
「セシルって誰だよ!第一、俺だっていつの間にか訳の分からない所に居て困ってんだよ!お前達の方こそ責任持ってタクシーで俺を元いた学校までちゃんと送り届けろよ!」
「まぁまぁ二人共落ち着け。今は下らない言い争いをしている場合じゃないぞ」
俺はこのおっさんの一言が気に食わなかった。上半身裸の露出狂の癖に、小さな子供を窘める様な物言いが癇に障る。
「露出狂のおっさんは黙ってろ!」
「何だと!この若造が!今すぐ叩き斬ってやる!」
「もぉー!二人共止めて!兎に角、冷静になって話をしましょう。私はアリシア、そんでこっちがイワン」
「俺は安里翔。普通の高校生だ」
俺は二人に、学校の教室に居た筈なのに、いつの間にか、気が付いたら城の中だった事を話した。
二人は、仲間であるセシルと言う勇者と三人で、魔王軍との最終決戦の真只中であった事を話した。
俺達がこうして、無事に魔王城から脱出出来たのは、アリシアの使う魔法という不思議な力のお陰らしい。荒唐無稽と思える魔法などという力も、実際にこうして目の当たりにしてしまっては信じざるを得ない。
ここでは、人間以外に、獰猛な魔物やモンスターなどといった生物が存在するらしい。成程、どうやら俺は、異世界に足を踏み入れてしまったらしい。
力を持たぬ者が、この世界で単身で生き抜くのは不可能だそうだ。
これが、平和な優しい世界であるなら、まだ救いがあったろう。
しかし、それとは正反対の生きるか死ぬかのサバイバル生活に急に放り込まれるなんて、理不尽にも程がある。
もし俺が、神か何かに選ばれし者だとするなら、選んだヤツは間違いなく人違いしてる。けん玉しか取り柄の無い俺が選ばれるはず無いんだから。
「おーい!俺の名前はあんり・しょうだ。人違いだから早く元の世界に帰してくれ!」
天を仰いで大声でどこの誰とも知れぬ何かに向かって叫んだ
『ポカッ!』
イワンが俺の頭を叩いた。
「馬鹿野郎!そんな大声出したらモンスター共に気付かれるだろ!」
イワンは唾を飛ばしながらガミガミ怒鳴った。
『ポカッ!』
アリシアがイワンの頭を叩いた。
「イワン!アンタのだみ声の方が遥かにうるさいのよ!いつも思うんだけど、赤ん坊じゃないんだから、少しは小さな声で話すって事出来ないの?あんたのだみ声のせいで、ここ最近、私の聴力が著しく下がったんだから!」
アリシアはイワン以上の大声で怒鳴った。
遠くの方から黒い大きな物体がこちらに向かって来る。
「お、おい、二人とも。あれは何だろう?」
「まずいぞ!あれは低級モンスターのシカイヌだ!」
鹿の頭部を持ち、胴体が犬に酷似したモンスターはこちらに迫っている。
「私達はこれからセシルを探しに行くから、あなたとはここでお別れね。それじゃ、バイバーイ」
二人は近くに見える村へと足早に去って行こうとする。
こんな所に一人残されては、元の世界に戻る前に、モンスター達の格好の餌食となってしまう。そもそも、人違いでこの世界に送られてるんだろうから、当然俺には、何ら秘められた力もあるはずが無い。
「ま・・・待ってくれ!一人でこんな所に置いて行かないでくれよー。お願いだ!荷物運びでも何でもするから俺も一緒に連れて行ってくれ!」
二人は足を止め、こちらを顧みた。
「おい、翔!今の言葉、忘れんじゃねえぞ!」
「ありがとう・・・。イワン、アリシア・・・本当にありがとう・・・」
俺は二人の元に急いだ。いつもより呼吸が苦しくなるのに気付いた。あれっ?俺いつの間にか泣いてる。涙は拭っても拭っても止めどなく溢れる。
「ははははは。翔、お前、さっきまであんなに威勢が良かったのに、まさか今、泣いてんじゃないだろうな」
「バカ、泣いデなんガねえよ!」
「イワンそんなに揶揄ったら翔が可哀そうよ。・・・フフフフフ、ハーハッハッハッ。あー苦しい。翔、ちゃんと鼻水も拭きなさいよ」
遂にアリシアとイワンは堪え切れず、立ち止り、腹を抱えて大笑いし出した。
こいつらには、人を労わる人間らしい心が無いのか?
いいだろう。俺は必ずいつの日か、二人に復讐してやる。
学校の教室に居たかと思えば、いつの間にか、全く身に覚えの無い城の中に居て、次の瞬間には、広大な原野の中に居たのだ。眩しい日差しに思わず目を細める。
この場に居る人間らしい人間は、横に居る破廉恥なコスプレ女と、上半身裸のモヒカンのおっさんだけだ。怖い顔をした魔王と呼ばれる老人の姿が消えているのは、せめてもの救いだ。
「ちょっと、あんた!いつまで私の手を握ってんのよ!」
破廉恥女は俺の手を強く振り払った。
「そんなに乱暴にしなくてもいいだろ!そもそも、こんな訳の分からない所に、勝手に連れて来といて。一体お前達、俺をどうする気だ?」
「はぁ?あんた、何言ってんの!勝手に付い来といて!こっちはね、すっごく迷惑してんのよ!それよりもあんた誰なの?セシルを何処に隠したの?」
破廉恥女は、顔を俺に近付けながら、一息に捲し立てる様にしてペラペラ喚いた。風になびく美しい黒髪、長いまつ毛と、ぱっちりした瞳に、思わず息を呑んだ。生意気な性格は別として、きっとこの世界の美的感覚から言っても、この女は美人の部類に入るのだろう。
「セシルって誰だよ!第一、俺だっていつの間にか訳の分からない所に居て困ってんだよ!お前達の方こそ責任持ってタクシーで俺を元いた学校までちゃんと送り届けろよ!」
「まぁまぁ二人共落ち着け。今は下らない言い争いをしている場合じゃないぞ」
俺はこのおっさんの一言が気に食わなかった。上半身裸の露出狂の癖に、小さな子供を窘める様な物言いが癇に障る。
「露出狂のおっさんは黙ってろ!」
「何だと!この若造が!今すぐ叩き斬ってやる!」
「もぉー!二人共止めて!兎に角、冷静になって話をしましょう。私はアリシア、そんでこっちがイワン」
「俺は安里翔。普通の高校生だ」
俺は二人に、学校の教室に居た筈なのに、いつの間にか、気が付いたら城の中だった事を話した。
二人は、仲間であるセシルと言う勇者と三人で、魔王軍との最終決戦の真只中であった事を話した。
俺達がこうして、無事に魔王城から脱出出来たのは、アリシアの使う魔法という不思議な力のお陰らしい。荒唐無稽と思える魔法などという力も、実際にこうして目の当たりにしてしまっては信じざるを得ない。
ここでは、人間以外に、獰猛な魔物やモンスターなどといった生物が存在するらしい。成程、どうやら俺は、異世界に足を踏み入れてしまったらしい。
力を持たぬ者が、この世界で単身で生き抜くのは不可能だそうだ。
これが、平和な優しい世界であるなら、まだ救いがあったろう。
しかし、それとは正反対の生きるか死ぬかのサバイバル生活に急に放り込まれるなんて、理不尽にも程がある。
もし俺が、神か何かに選ばれし者だとするなら、選んだヤツは間違いなく人違いしてる。けん玉しか取り柄の無い俺が選ばれるはず無いんだから。
「おーい!俺の名前はあんり・しょうだ。人違いだから早く元の世界に帰してくれ!」
天を仰いで大声でどこの誰とも知れぬ何かに向かって叫んだ
『ポカッ!』
イワンが俺の頭を叩いた。
「馬鹿野郎!そんな大声出したらモンスター共に気付かれるだろ!」
イワンは唾を飛ばしながらガミガミ怒鳴った。
『ポカッ!』
アリシアがイワンの頭を叩いた。
「イワン!アンタのだみ声の方が遥かにうるさいのよ!いつも思うんだけど、赤ん坊じゃないんだから、少しは小さな声で話すって事出来ないの?あんたのだみ声のせいで、ここ最近、私の聴力が著しく下がったんだから!」
アリシアはイワン以上の大声で怒鳴った。
遠くの方から黒い大きな物体がこちらに向かって来る。
「お、おい、二人とも。あれは何だろう?」
「まずいぞ!あれは低級モンスターのシカイヌだ!」
鹿の頭部を持ち、胴体が犬に酷似したモンスターはこちらに迫っている。
「私達はこれからセシルを探しに行くから、あなたとはここでお別れね。それじゃ、バイバーイ」
二人は近くに見える村へと足早に去って行こうとする。
こんな所に一人残されては、元の世界に戻る前に、モンスター達の格好の餌食となってしまう。そもそも、人違いでこの世界に送られてるんだろうから、当然俺には、何ら秘められた力もあるはずが無い。
「ま・・・待ってくれ!一人でこんな所に置いて行かないでくれよー。お願いだ!荷物運びでも何でもするから俺も一緒に連れて行ってくれ!」
二人は足を止め、こちらを顧みた。
「おい、翔!今の言葉、忘れんじゃねえぞ!」
「ありがとう・・・。イワン、アリシア・・・本当にありがとう・・・」
俺は二人の元に急いだ。いつもより呼吸が苦しくなるのに気付いた。あれっ?俺いつの間にか泣いてる。涙は拭っても拭っても止めどなく溢れる。
「ははははは。翔、お前、さっきまであんなに威勢が良かったのに、まさか今、泣いてんじゃないだろうな」
「バカ、泣いデなんガねえよ!」
「イワンそんなに揶揄ったら翔が可哀そうよ。・・・フフフフフ、ハーハッハッハッ。あー苦しい。翔、ちゃんと鼻水も拭きなさいよ」
遂にアリシアとイワンは堪え切れず、立ち止り、腹を抱えて大笑いし出した。
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いいだろう。俺は必ずいつの日か、二人に復讐してやる。
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