45 / 75
45話 Cecil
しおりを挟む
「僕は何を信じたら良いか分かりません。
例え桃恵先生がこの先、敵になるかもしれないとしても、僕は今ここにいるみんなを信じたい。
だから、それまではお互いに協力して、信じ合う事は出来ませんか?」
「ありがとうセシル君。こんな私を信じるって言ってくれて。
私は盲目に自分の願いを叶えようとする余り、大切なものを見失ってしまってたかもしれないわ。
そうね。私達はゲートを探すって目的は一緒だから、これからもお互い協力しましょう。」
桃恵先生の言葉が純粋に嬉しかった。
僕は桃恵先生を疑わなくて良いんだ。
きっと僕達だけでは、ここまでの真相に辿り着く事は出来なかっただろう。
桃恵先生がいつでも僕達に手を差し伸べてくれて、陰ながら助けてくれたお陰だ。
陽菜さんは、桃恵先生に駆け寄って、抱き着きながら嬉しそうに言った。
「私も桃恵先生と争うのは嫌だったから恐かったんですよ。だから元通り戻れて本当に良かった。」
七海さんもその様子を横で見て、笑顔で陽菜ちゃん良かったねと小さく呟いた。
桃恵先生にはまだ聞きたい事があったけど、今日は困らせる様な質問をするのは止めておこう。
また日を改めて聞く事にしよう。
「ねえ聞いて。私一つ思い出した事があるの。」
七海さんが徐に口を開いた。
「何を思い出したんですか。」
「おじいちゃんは病床で無くなる寸前まで本の原稿を書いてたの。
それは、ANOTHER WORLD STORIESへと繋がる物語って言ってたの。」
「その原稿は今何処にあるんですか?」
「私の部屋にあったと思う。」
「でしたら、今からみんなで七海さんの家に向かいましょう!」
「ごめんなさい。みんなで行くとおばさんが気を悪くするから、学校の近くの公園で待ってて。すぐに取ってくるから。」
「分かりました。」
七海さんの含みのある言い方が気になった。
実の両親は既に他界し、遠縁の親戚の家で暮らしていると前に話してくれていたが、その家族とは上手く行っているのだろうか。
七海さんは僕達と別れて、家に向かって走って行った。
七海さんを見送って、僕達も公園に向かって歩き始めた。
すると、歩き始めて直ぐに、桃恵先生の携帯が鳴った。
電話を終えた桃恵先生は、急用が出来たと言い残して去って行った。
僕は七海さんと二人で再び、公園へと向かって歩き出した。
「セシルくんってさ~、七海ちゃんの事どう思ってるの?」
陽菜さんが下から僕を見上げて揶揄う様に言った。
「何かと力になってくれるし、信頼出来る良い人だと思います。」
「そういう意味じゃ無くて、好きかどうかだよ~。」
「それは勿論好きですよ。七海さんも陽菜さんも桃恵先生も、一さんも、僕は皆さん大好きですよ。」
「ありがとう!でも違うの!そうじゃ無くて、他の誰とも違う特別な好きって想いだよ~。」
「そっ・・・、それは・・・」
陽菜さんの洞察力にはいつも驚かされる。
僕は近頃では、元の世界に戻る事よりも、七海さんの事を考える時間の方が多くなっていた。
今まで、戦いの中に生きて来て、こんなに誰かの事を考えたるする事など無かった。
頭の中がその人の事で一杯になってしまう。これが人を愛するという事なのだろうか。
もしそうだとしても、僕は訳も分からず、気が付いたらこの世界に居たのだ。
いつまた、訳の分からないまま消えてしまう可能性だってある。
そんな僕が、一方的な勝手な想いを、彼女に伝えても、きっと困らせるだけだ。
「私の勘が正しければね、七海ちゃもセシルくんの事好きだと思うんだ~。
だからね。もし、セシルくんが元の世界に戻るって時が来たら、七海ちゃんだけには、ちゃんとお別れを言ってあげて。」
七海さんが、僕の事を特別な存在だと想ってくれているかもしれないなど、考えもしなかった。
でも、そんな素振りは一切無かったから、それは希望的観測なだけかもしれない。
だけどもし、七海さんが僕の事を好だと思ってくれていたら、どんなに嬉しい事だろう。
公園に到着すると、七海さんはブランコに座り、ぼんやりと枯葉が風に吹かれるのを眺めていた。
「この公園にね、子供の頃よく翔と遊びに来てたんだ~。
翔ったら酷かったんだよ~。
自分から、かくれんぼしようって言っておいて、ちょっと探して私が見つからないと、一人で楽しそうにブランコで遊び始めるんだよ~。
私が怒って出てくと、陽菜みーつけたって笑いながら言うの。も~、信じらんないでしょ~。
でも、ちゃんとカッコいい所もあったんだよ。
小学校の低学年の頃にね、柔道をしてる年上のガキ大将に、私がいじめられてる時なんか、必死に立ち向かってくれたんだよ。
体中傷だらけでボロボロになりながら、何度投げ飛ばされても、決して負けを認めずに何度も何度も立ち上がってくれたんだ~。
相手が二度と私に手を出さないって約束するまで、必死に食らい付いてくれてた。
それでね、結局ガキ大将の方が、翔に根負けして逃げてったの。
その時にね、翔が自分の方がいっぱい血も出て痛そうなのに、笑いながら陽菜、大丈夫かって言うんだよ。
あの時、痛いの我慢して、私を心配させまいと、無理して作った笑顔。これから先も私、ずーっと忘れない。
今はどこに居っちゃったか分からないけど、元気にしてるかな。ご両親みたいに記憶が無くなったりして、私の事、忘れて無いかな?ちゃんと憶えててくれてるかな?
ううん。やっぱり、生きててくれたら、それだけで十分。」
「きっと翔さんなら大丈夫ですよ!陽菜さんに会う為に今も必死に頑張ってる筈ですから!」
「うん。セシルくん、ありがとう・・・」
例え桃恵先生がこの先、敵になるかもしれないとしても、僕は今ここにいるみんなを信じたい。
だから、それまではお互いに協力して、信じ合う事は出来ませんか?」
「ありがとうセシル君。こんな私を信じるって言ってくれて。
私は盲目に自分の願いを叶えようとする余り、大切なものを見失ってしまってたかもしれないわ。
そうね。私達はゲートを探すって目的は一緒だから、これからもお互い協力しましょう。」
桃恵先生の言葉が純粋に嬉しかった。
僕は桃恵先生を疑わなくて良いんだ。
きっと僕達だけでは、ここまでの真相に辿り着く事は出来なかっただろう。
桃恵先生がいつでも僕達に手を差し伸べてくれて、陰ながら助けてくれたお陰だ。
陽菜さんは、桃恵先生に駆け寄って、抱き着きながら嬉しそうに言った。
「私も桃恵先生と争うのは嫌だったから恐かったんですよ。だから元通り戻れて本当に良かった。」
七海さんもその様子を横で見て、笑顔で陽菜ちゃん良かったねと小さく呟いた。
桃恵先生にはまだ聞きたい事があったけど、今日は困らせる様な質問をするのは止めておこう。
また日を改めて聞く事にしよう。
「ねえ聞いて。私一つ思い出した事があるの。」
七海さんが徐に口を開いた。
「何を思い出したんですか。」
「おじいちゃんは病床で無くなる寸前まで本の原稿を書いてたの。
それは、ANOTHER WORLD STORIESへと繋がる物語って言ってたの。」
「その原稿は今何処にあるんですか?」
「私の部屋にあったと思う。」
「でしたら、今からみんなで七海さんの家に向かいましょう!」
「ごめんなさい。みんなで行くとおばさんが気を悪くするから、学校の近くの公園で待ってて。すぐに取ってくるから。」
「分かりました。」
七海さんの含みのある言い方が気になった。
実の両親は既に他界し、遠縁の親戚の家で暮らしていると前に話してくれていたが、その家族とは上手く行っているのだろうか。
七海さんは僕達と別れて、家に向かって走って行った。
七海さんを見送って、僕達も公園に向かって歩き始めた。
すると、歩き始めて直ぐに、桃恵先生の携帯が鳴った。
電話を終えた桃恵先生は、急用が出来たと言い残して去って行った。
僕は七海さんと二人で再び、公園へと向かって歩き出した。
「セシルくんってさ~、七海ちゃんの事どう思ってるの?」
陽菜さんが下から僕を見上げて揶揄う様に言った。
「何かと力になってくれるし、信頼出来る良い人だと思います。」
「そういう意味じゃ無くて、好きかどうかだよ~。」
「それは勿論好きですよ。七海さんも陽菜さんも桃恵先生も、一さんも、僕は皆さん大好きですよ。」
「ありがとう!でも違うの!そうじゃ無くて、他の誰とも違う特別な好きって想いだよ~。」
「そっ・・・、それは・・・」
陽菜さんの洞察力にはいつも驚かされる。
僕は近頃では、元の世界に戻る事よりも、七海さんの事を考える時間の方が多くなっていた。
今まで、戦いの中に生きて来て、こんなに誰かの事を考えたるする事など無かった。
頭の中がその人の事で一杯になってしまう。これが人を愛するという事なのだろうか。
もしそうだとしても、僕は訳も分からず、気が付いたらこの世界に居たのだ。
いつまた、訳の分からないまま消えてしまう可能性だってある。
そんな僕が、一方的な勝手な想いを、彼女に伝えても、きっと困らせるだけだ。
「私の勘が正しければね、七海ちゃもセシルくんの事好きだと思うんだ~。
だからね。もし、セシルくんが元の世界に戻るって時が来たら、七海ちゃんだけには、ちゃんとお別れを言ってあげて。」
七海さんが、僕の事を特別な存在だと想ってくれているかもしれないなど、考えもしなかった。
でも、そんな素振りは一切無かったから、それは希望的観測なだけかもしれない。
だけどもし、七海さんが僕の事を好だと思ってくれていたら、どんなに嬉しい事だろう。
公園に到着すると、七海さんはブランコに座り、ぼんやりと枯葉が風に吹かれるのを眺めていた。
「この公園にね、子供の頃よく翔と遊びに来てたんだ~。
翔ったら酷かったんだよ~。
自分から、かくれんぼしようって言っておいて、ちょっと探して私が見つからないと、一人で楽しそうにブランコで遊び始めるんだよ~。
私が怒って出てくと、陽菜みーつけたって笑いながら言うの。も~、信じらんないでしょ~。
でも、ちゃんとカッコいい所もあったんだよ。
小学校の低学年の頃にね、柔道をしてる年上のガキ大将に、私がいじめられてる時なんか、必死に立ち向かってくれたんだよ。
体中傷だらけでボロボロになりながら、何度投げ飛ばされても、決して負けを認めずに何度も何度も立ち上がってくれたんだ~。
相手が二度と私に手を出さないって約束するまで、必死に食らい付いてくれてた。
それでね、結局ガキ大将の方が、翔に根負けして逃げてったの。
その時にね、翔が自分の方がいっぱい血も出て痛そうなのに、笑いながら陽菜、大丈夫かって言うんだよ。
あの時、痛いの我慢して、私を心配させまいと、無理して作った笑顔。これから先も私、ずーっと忘れない。
今はどこに居っちゃったか分からないけど、元気にしてるかな。ご両親みたいに記憶が無くなったりして、私の事、忘れて無いかな?ちゃんと憶えててくれてるかな?
ううん。やっぱり、生きててくれたら、それだけで十分。」
「きっと翔さんなら大丈夫ですよ!陽菜さんに会う為に今も必死に頑張ってる筈ですから!」
「うん。セシルくん、ありがとう・・・」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
魔力ゼロの俺だけが、呪いの装備を『代償なし』で使い放題 ~命を削る魔剣も、俺が持てば『ただのよく切れる剣』~
仙道
ファンタジー
現代日本で天才研究者だった相模登(さがみ のぼる)は、ある日突然、異世界へ転移した。 そこは『スキル』と『魔力』が全てを決める世界。
しかし登には、ステータス画面もなければ、魔力も、スキルも一切存在しなかった。
ただの一般人として迷宮に放り出された彼は、瀕死の女騎士と出会う。彼女の前には、使う者の命を瞬時に吸い尽くす『呪いの魔剣』が落ちていた。
武器はそれしかない。女騎士は絶望していたが、登は平然と魔剣を握りしめる。 「なぜ……生きていられるの?」 登には、剣が対価として要求する魔力は存在しない。故に、魔剣はデメリットなしの『ただのよく切れる剣』として機能した。
これは、世界で唯一「対価」を支払う必要がない登が、呪われた武具を次々と使いこなし、その副作用に苦しむ女騎士やエルフ、聖女を救い出し、無自覚に溺愛されていく物語。
エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。
レオナルド先生創世記
ポルネス・フリューゲル
ファンタジー
ビッグバーンを皮切りに宇宙が誕生し、やがて展開された宇宙の背景をユーモアたっぷりにとてもこっけいなジャック・レオナルド氏のサプライズの幕開け、幕開け!
200万年後 軽トラで未来にやってきた勇者たち
半道海豚
SF
本稿は、生きていくために、文明の痕跡さえない200万年後の未来に旅立ったヒトたちの奮闘を描いています。
最近は温暖化による環境の悪化が話題になっています。温暖化が進行すれば、多くの生物種が絶滅するでしょう。実際、新生代第四紀完新世(現在の地質年代)は生物の大量絶滅の真っ最中だとされています。生物の大量絶滅は地球史上何度も起きていますが、特に大規模なものが“ビッグファイブ”と呼ばれています。5番目が皆さんよくご存じの恐竜絶滅です。そして、現在が6番目で絶賛進行中。しかも理由はヒトの存在。それも産業革命以後とかではなく、何万年も前から。
本稿は、2015年に書き始めましたが、温暖化よりはスーパープルームのほうが衝撃的だろうと考えて北米でのマントル噴出を破局的環境破壊の惹起としました。
第1章と第2章は未来での生き残りをかけた挑戦、第3章以降は競争排除則(ガウゼの法則)がテーマに加わります。第6章以降は大量絶滅は収束したのかがテーマになっています。
どうぞ、お楽しみください。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
うちの冷蔵庫がダンジョンになった
空志戸レミ
ファンタジー
一二三大賞3:コミカライズ賞受賞
ある日の事、突然世界中にモンスターの跋扈するダンジョンが現れたことで人々は戦慄。
そんななかしがないサラリーマンの住むアパートに置かれた古びた2ドア冷蔵庫もまた、なぜかダンジョンと繋がってしまう。部屋の借主である男は酷く困惑しつつもその魔性に惹かれ、このひとりしか知らないダンジョンの攻略に乗り出すのだった…。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる