ANOTHER WORLD STORIES

佳樹

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68話 安里翔

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「そうかい。翔ちゃんはあっちの世界に足を踏み入れてしまったんだね。」
ばあちゃんは俺がヴァリア城に居た事に関して、顔色一つ変えずに淡々と言った。
「ばあちゃんはどうして俺が現実離れした、魔法やモンスターが存在する世界に飛ばされたのか、何かその理由を知ってるのか?」
ばあちゃんは俺から視線を離した。
その瞳は過去の日々を思い出している様に思えた。

「翔ちゃんの居た世界と、この世界とでは、私が持つ知識にも多少ずれがあるかもれない。
だけど、今の翔ちゃん達の疑問のヒントになると思うからペンダントに纏わる話を続けましょう。

その日、まだ幼かった私は母の誕生日にブーケを贈ろうと思って、絶対に子供だけで入っちゃいけないって言われてた、町の外れにある森に、一人でお花を摘みに行ったの。

初めは森の入り口付近だけで探してたんだけど、綺麗なお花が見つからなくて、探すのに夢中になって、気が付くと、入り口が見えなくなる所まで来てしまってたの。
森の中にはモンスターが住んでるから、絶対に子供だけでは入っちゃけないって父さんから口を酸っぱくして言われてた。
今までは、父さんと一緒の時しか森の中には入らなかった。
だけど、この日父さんは、お城に呼ばれてたから、入り口の近くなら一人でも大丈夫だと思って森へ行ったの。

森を進んで行くと、奥の方から、何かの呻き声が聞こえて、私は目の前に咲いてたお花を一凛だけ摘んで一目散に来た道を走った。
すると、目の前に、道を塞ぐ様にして、大きく口を開けた三つ首の黒い大きな獣が現れたの。
恐怖から私は声を出す事さえ出来なかった。

私の存在に気付いたその獣は、大地が揺れる様な呻き声を上げ、私を目掛けて大きな四つ足で迫って来た。
呻き声で、腰を抜かしてた私は尻餅をついて立ち上がる事が出来なかった。

もうダメだと思った私は思わず目を閉じた。
数秒後、何故か獣の足音が消えた。
私はゆっくりと目を開けると、地面に三つの首が転がってた。

そして視線を上げると、そこにはローブを纏った美しい女性が、光を放つ刃を持って立って居た。
彼女は私の頭を撫でて、優しく微笑んでくれた。
私は神々しく、余りにも美し過ぎるその女性の顔を直視する事が出来なかった。
それは、この世に女神が存在するとすれば、きっと彼女では無いのかと思う程だった。

私は助けてくれてありがとうって言おうと思った。
だけど、息を呑む程の美しさの前に、言葉を失っていた。

私が彼女を直視出来ず、視線を下げていたのは、首から下げていたペンダントが気になったからだと勘違いしたのか、そのペンダントについて話し始めたの。

『このペンダントはね、私の大切な人が肌身離さず身に着けている物を模して作ったの。
少しでも彼に近付きたくて、いつの日か私の思いを受け止めて欲しくて、これを作れる職人が現れるのを待ってたら百年以上も経っちゃった。
オリジナルのペンダントは、彼がずっと思いを寄せる人とペアで作ったんだと知った時から、いつまで経っても現れないその女にに成り代わって、私が彼の隣に立つんだって思いでこれを作ったの。
何をしても動かない彼の心を動かす為の苦肉の策だった。
だけど、結局、彼の心が私に向く事は一度も無かった。

紛い物のペンダントを身に着けた、紛い物の人間・・・。』

私は何の事だか分からず、ポカンとしながら彼女の話を聞いていた。

『あら、ごめんなさい。久し振りに人に会っものだから、ついつい余計な事喋っちゃった。
あなたが私の愚痴を聞いてくれて、少し気も晴れたし、このペンダント、気になるんだったらあなたに上げるわ。』
そう言って、彼女は大切なペンダントを私の首に掛けてくれた。

『失恋の怨念の籠ったペンダントだから、これを身に着けてたらきっと他の魔物達は恐ろしくて寄って来ないわ。』
『お姉ちゃん。助けてくれてありがとう。それにペンダントまでくれて。』
『私が何となくこの森に来たのもきっと、偶然じゃなくて、何者かにそう仕向けられたからかもしれない。
例えそうだとしても、あなたとお話出来て楽しかったわ。まぁ、あなたからしたら、一方的に話し掛けられて迷惑だったかもしれないけど。
長く生きてると、たまに感じる事があるの。いつか、あなたとは、また違った形で会う事になるだろうって。』

そうして、彼女は私を村の入り口まで送ってくれたの。
恩人である彼女にお礼がしたくて、家まで一緒に行こうとしたんだけど、入り口を抜けた瞬間、彼女はぽつりと何かを呟いたの。
だけど、私は彼女が何を呟いたのか、よく聞き取れなかった。

"人間が愛おしくて、命まで助けちゃうなんて・・・私、どうかしちゃったみたい・・・
奴等がこの事を知ったら、私も消されちゃうのかな・・・"

気が付くと、いつの間にか彼女は居なくなってた。

そうして結局、今に至るまで、私と彼女が再会を果たす日は訪れてないの。」


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