【更新中】落第冒険者“薬草殺し”は人の縁で成り上がる【長編】

杜野秋人

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第四章【騒乱のアナトリア】

4-52.いつの間にか

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「そう。じゃ、あとは私たちが今夜中にこのダンジョンを制圧すればアンキューラここでの件はってことね」

『それなんすけどねレギーナ氏』

 その時、それまで無言で控えていたマリーが繋げたままの通信鏡の向こうで口を開いた。
 彼女は大まかなルートや次層への降り口の位置、階層ごとの想定される敵の種類など細かく分析して伝えてくれていたが、こうしてメンバーの休憩中や雑談中などでは基本的に黙っている。

「なあに、マリー」
『四層で闇鬼人族ダークオーガってことになると、出現敵のランクを上方修正する必要があるかもっす』

 マリーの想定では、闇鬼人族は六層の想定魔物モンスターであったという。今のところ遭遇したのは一団だけだが、もしまた出現するようだとこれより下層にはもっと強力な魔物が出る可能性が高くなるという。

「ああ、大丈夫よ。私は最初から“達人シルバー”だって思ってるし」
『おっさすがっすねレギーナ氏。その油断せずに兜の緒を締める姿勢、ジブン好きっすよ』
「あなたに好かれても別に嬉しくないし。それに未知のダンジョンで油断できないのなんて当然でしょう?」
『くぅ、その塩対応もポイント高いっすね!』

 いや何のポイントなんだか、レギーナにも周りで聞いてるアルベルトたちにもサッパリ分からない。

『ところで、今そこにアルベルト氏がいるんすよね?』

 そのマリーが、唐突にアルベルトの名を出してきた。

『それって元“輝ける五色の風”ののアルベルト氏っすよね?』
「えっ?」
「創立メンバーなん?」

「いやあ、まあ、確かに“輝ける虹の風”はユーリに誘われて、彼と俺とアナスタシアと、あと空妖精スプライトのリナさんとで組んだパーティだけど」

 でもユーリ以外は新米ふたりだし、リナさんは当時冒険者ですらなかったからなあ、と苦笑するアルベルト。

「えっちょっと、あなたなんでそんな重要な情報を言わないのよ!?」
「そうやんだよ!勇者パーティの創立メンバーとか選定会議のやんかじゃない!」
『いやあ、アルベルト氏に関してはユーリ氏からも除外していいってマワール嬢が言われてるそうなんで、選定会議こっちではタッチしてないっすけど』
「でもユーリ様たちが蛇王を再封印するまではフォローしてたんでしょ?」
『そうっすね。創立メンバーにナーン氏が入って、リナ氏が亡くなってからネフェル氏とマリア氏が入って、そのメンバーで東方行きの指令が出たっすからね。⸺で、アルベルト氏は今回も再封印のメンバーに入ってる、って理解でいいっすか?』

 つまりマリーが気にしているのは、アルベルトが蒼薔薇騎士団にである。正式に加入したのなら勇者パーティの一員として、選定会議でもフォローする必要が出てくるわけだ。

「えっ、ええと……」

 そして何故かレギーナが口ごもる。それを見て、やれやれと苦笑しながらミカエラが言った。

「アルベルトさんは一応、ウチらの慣れん東方行きの道先案内とサポートっちゅうことで雇うとるんよね。やけん加入したわけやないばい」
『あっそうなんすね、了解っす』
「そっ、そうそう!そうなのよ!」

「ばってん、事実上のってことで考えとってもいいっちゃないかね?」

 と言いながら、ミカエラはニヤリとしながらレギーナに目をやった。

「…………えっ?」
「なんだかんだ言うておいちゃんのこと、気に入っとうやろ姫ちゃん」

「………………は?」
「最初は第七騎士団のサポートに置いてくつもりやったハズやのに、なんか連れて来とるし」
「えっ、ええと……」
「普通に戦力に数えとるし」
「いや違、それは⸺」
「作ってもらう飯は美味かし、御者もやってもろうとるし、どうせ蛇王の封印所までアプローズ号で行くつもりなんやろ?」
「そ、それはそうだけど……」
「ちゅうことは、おいちゃんも封印の中までのてくつもり、っちゅうことやん?」

 そう言われれば確かに、御者としてアプローズ号を蛇王の封印所まで運んでもらったあとは一緒に封印の中に入るものと無自覚に思い込んでいたレギーナである。だけどそれは、彼がであって。

「そこまで行ったら、もう実質加入さしたようなもんやん?ほらクレアも喜んどるし」

 そのミカエラの言葉に見れば、クレアが首を大きく縦にぶんぶん頷いていて、ヴィオレは聞かないふりを装って中立を貫いている。

「……えっ?ええとそれは⸺ってダメよ!蒼薔薇騎士団は女性限定なんだから!第一、私が集めたい人を入れるんだから、私の許可無しで勝手なこと言わないで!」
「なァん姫ちゃん、そげん動揺せんでちゃよかろうもん」
「しっしてないわよ動揺なんて!ちょっと使い勝手がよくてって思っただけで!」

 とか言いつつ、いつの間にかアルベルトが一緒にいることにことに、気付かされてしまったレギーナである。





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