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第九話 落とした盥は金か? 銀か?
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さて。数時間ぐっすり眠って朝になった。
私は一度寝るとほぼ起きないし、寝ている時に近付いて来る者がいれば、無意識下でボッコボコのギタンギタンにするので、夜のうちに何があったのかは分からないが、ユニコーンの服はえらくくたびれており、筆頭補佐官は新品の執事のような服に着替えている。新品の服とは大変うらやましく思う。
ちなみに毛布も貸し出してくれたので返却したら、毛布をいつまでも嗅ぎ続けるので、燃やしてやろうかと思ったが、ありったけの意志力で思いとどまった。
代わりに拳で殴ろうとしたが未遂に終わり、筆頭補佐官は逃げたせいで黒髪がやや乱れている。
自分の髪の色を見てみたが、白ではなくなっている。薄いグレーになっていた。
順調に魔力は増えているものの、帰還するまでに黒髪に戻すのは間に合わなさそうだ。
戴冠式に間に合えばいいという話ではない。首尾よく皇都に戻っても、間違いなく襲撃されるだろう。その時に対処出来る魔力が残っているかどうか。
身体に戻す魔力とは別に、魔力を別に貯めているが、それは皇都に戻るために使用する移動用の魔力だからなあ。
筆頭補佐官がいつの間にかまたエプロン姿になっていた。昨日は白だったのに、今日は薄いピンクだ。
毛布持ったままエプロンつけたのか。器用だな。
おい、まだ嗅ぐか。
エプロン何枚持っているのだろうか。ずっと見ていたら何を勘違いしたのか、筆頭補佐官が頬を赤らめる。
「そんなに見つめないでください。今朝も殿下の寝顔を見ていたら、いろいろと……困ったことになって着替える羽目になったのですから」
……いや、その"困った"はいらん情報だ。
しかも着替えなきゃならん何をした。
なので私は世間一般の人がすることと同様の態度を取ることにした。
聞かなかったふりである。
諦めた筆頭補佐官は名残惜しそうに毛布を空間にしまうと、甲斐甲斐しく朝食の準備を始めた。
毛布の匂いを嗅ぐのを止めてくれたのでほっとする。
フライパンに卵を割り入れていたので、卵料理が食べられることが有難い。
……ちゃんと筆頭補佐官は手を洗っているだろうな?
ユニコーンは焚き火の側にはりついて、調理の様子をじっと観察している。
卵の次にベーコンとソーセージがフライパンに投入されると、不思議そうに首を傾げた。
【このべーこん、というのはどういう動物の皮なのだろう。それとこのそーせーじ、とやらは、どの身体の部位なのだろうか。人とは面白い形状のものを食すのだな】
そう言って自分の手の指をじっと見たあと、首を横に振り振りして、その後自分の下半身をずっと見ている。
何にでも興味を惹かれるユニコーンの観察は面白いが、朝食に向けて顔を洗っておこう。
用意してくれた洗顔セットで顔を洗い終わると、どこに水を捨てるか悩んだ。
そういや、近くに沼があったな?
盥を持って移動する。
盥の中の水を捨てようとしたその瞬間、細く長い蔓状の水草のようなものに盥が奪われ、哀れ盥は沼へと引きずり込まれた。
あっという間の出来事で呆然。私もまだ万全じゃないが、水草が出てくるまで気付けなかった。
かなりの魔力持ちがいる。
水面が静まり返った沼から、ブクブクと泡が浮かび上がってくる。
やがてプカリ……と緑色の髪をした男の顔だけ出てきた。
……いや、どう考えても人間じゃないよな。ずっと沼の中にいたみたいだし。
そのまま垂直にゆっくりと上半身裸男が、ずるり……と浮上してくる。
既に見せ魔がいたので私、驚カナイ。
それにしても不自然に下半身だけ見えない。
……私は下半身を見たい痴女ではない。不自然、というところを強調させて頂きたい。
"そなたの落とした盥は、金か? 銀か?"
キンキラの盥と渋銀の盥を胸の辺りでそれぞれ捧げ持つようにしている。
どっちでもありませんよー。金属でしたが。
そう言うと、露出男は同じことを繰り返してくる。
"そなたの落とした盥は金か? 銀か?"
だから違うって言ってんじゃん。しかも落としたんじゃなくて、そっちが奪ったんだよな?
……面倒くさっ。
「どっちでもありません、って答えが気に食わないのか? まさか、金か銀って言った瞬間、喰う気だったんじゃないだろうな?」
目の前の男の眉がピクリと動いた。
私は一度寝るとほぼ起きないし、寝ている時に近付いて来る者がいれば、無意識下でボッコボコのギタンギタンにするので、夜のうちに何があったのかは分からないが、ユニコーンの服はえらくくたびれており、筆頭補佐官は新品の執事のような服に着替えている。新品の服とは大変うらやましく思う。
ちなみに毛布も貸し出してくれたので返却したら、毛布をいつまでも嗅ぎ続けるので、燃やしてやろうかと思ったが、ありったけの意志力で思いとどまった。
代わりに拳で殴ろうとしたが未遂に終わり、筆頭補佐官は逃げたせいで黒髪がやや乱れている。
自分の髪の色を見てみたが、白ではなくなっている。薄いグレーになっていた。
順調に魔力は増えているものの、帰還するまでに黒髪に戻すのは間に合わなさそうだ。
戴冠式に間に合えばいいという話ではない。首尾よく皇都に戻っても、間違いなく襲撃されるだろう。その時に対処出来る魔力が残っているかどうか。
身体に戻す魔力とは別に、魔力を別に貯めているが、それは皇都に戻るために使用する移動用の魔力だからなあ。
筆頭補佐官がいつの間にかまたエプロン姿になっていた。昨日は白だったのに、今日は薄いピンクだ。
毛布持ったままエプロンつけたのか。器用だな。
おい、まだ嗅ぐか。
エプロン何枚持っているのだろうか。ずっと見ていたら何を勘違いしたのか、筆頭補佐官が頬を赤らめる。
「そんなに見つめないでください。今朝も殿下の寝顔を見ていたら、いろいろと……困ったことになって着替える羽目になったのですから」
……いや、その"困った"はいらん情報だ。
しかも着替えなきゃならん何をした。
なので私は世間一般の人がすることと同様の態度を取ることにした。
聞かなかったふりである。
諦めた筆頭補佐官は名残惜しそうに毛布を空間にしまうと、甲斐甲斐しく朝食の準備を始めた。
毛布の匂いを嗅ぐのを止めてくれたのでほっとする。
フライパンに卵を割り入れていたので、卵料理が食べられることが有難い。
……ちゃんと筆頭補佐官は手を洗っているだろうな?
ユニコーンは焚き火の側にはりついて、調理の様子をじっと観察している。
卵の次にベーコンとソーセージがフライパンに投入されると、不思議そうに首を傾げた。
【このべーこん、というのはどういう動物の皮なのだろう。それとこのそーせーじ、とやらは、どの身体の部位なのだろうか。人とは面白い形状のものを食すのだな】
そう言って自分の手の指をじっと見たあと、首を横に振り振りして、その後自分の下半身をずっと見ている。
何にでも興味を惹かれるユニコーンの観察は面白いが、朝食に向けて顔を洗っておこう。
用意してくれた洗顔セットで顔を洗い終わると、どこに水を捨てるか悩んだ。
そういや、近くに沼があったな?
盥を持って移動する。
盥の中の水を捨てようとしたその瞬間、細く長い蔓状の水草のようなものに盥が奪われ、哀れ盥は沼へと引きずり込まれた。
あっという間の出来事で呆然。私もまだ万全じゃないが、水草が出てくるまで気付けなかった。
かなりの魔力持ちがいる。
水面が静まり返った沼から、ブクブクと泡が浮かび上がってくる。
やがてプカリ……と緑色の髪をした男の顔だけ出てきた。
……いや、どう考えても人間じゃないよな。ずっと沼の中にいたみたいだし。
そのまま垂直にゆっくりと上半身裸男が、ずるり……と浮上してくる。
既に見せ魔がいたので私、驚カナイ。
それにしても不自然に下半身だけ見えない。
……私は下半身を見たい痴女ではない。不自然、というところを強調させて頂きたい。
"そなたの落とした盥は、金か? 銀か?"
キンキラの盥と渋銀の盥を胸の辺りでそれぞれ捧げ持つようにしている。
どっちでもありませんよー。金属でしたが。
そう言うと、露出男は同じことを繰り返してくる。
"そなたの落とした盥は金か? 銀か?"
だから違うって言ってんじゃん。しかも落としたんじゃなくて、そっちが奪ったんだよな?
……面倒くさっ。
「どっちでもありません、って答えが気に食わないのか? まさか、金か銀って言った瞬間、喰う気だったんじゃないだろうな?」
目の前の男の眉がピクリと動いた。
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