「あんの愚弟ども!」次期皇帝は言った。~魔の森に飛ばされ城に戻る頃には、変な奴らばかり周りにいるんだが~

鈴白理人

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第十話 またしても下半身問題

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 するとどうだろう。
 山ほどの水草が一気に沼から出てきて、私を捕らえようとするじゃありませんか。
 沼から遠ざかるようにジャンプして逃れると、沼からは離れられないのか、それ以上の攻撃はしてこない。
 
 あれだよな? 正直者に金銀くれる、あの有名なパターン。
 ……って実態はこれか。結局、沼の中に引きずり込んで喰らう罠ってわけね。
 伝承って案外、捕食の布石だったりするんだな。世知辛い。

 なんて考えていたのがいけなかった。

 いきなり足元から、水草が地面から飛び出てきたかと思うと私の足に絡み付いた。
 まさかの地面からの奇襲に、さすがに驚いた。
 沼からしか攻撃してこないっていつの間にか思い込んでいた。
 魔力も足りてないってのに油断するなんて、自分の愚かさに我ながら呆れる。

 足首に絡まったまま沼に引きずり込もうとしてきたので、全力で抵抗させて頂こうと思う。服がドロドロになるのだけは着替えが無いのでごめんこうむりたい。
 
 必死に抵抗していると、何だか綱引きみたいになってきた。

 業を煮やしたのか、とうとう沼男が地上へと這い上がってくる。

「やっぱ水魔か」

 ……馬、だな。下半身だけ、馬。

 こ奴もユニコーンのように伝説級の生物だが、下半身はそのまんま馬だ。
 やっぱり伝承が残されていて、人間が興味のありそうなものを水場の近くに置いておびき寄せ、水中に引きずり込んで喰らうらしい。

 よく考えたら、伝説級と言われるのは、きっと目撃者が喰われて目撃例が減るからに違いない。

 馬だし移動手段に……って無理か。水魔だから沼の外には出られないよな。

 となると、生存競争に打ち勝つしかない。今の私の魔力総量で勝てるだろうか。
 


"片付けるの手伝おうか?"

 ……ん?
 何か聞こえた?
 いや、頭の中に響いた?

"どっちかが滅びるしかないみたいだし、お姉さん美人だから、生き残るならお姉さんのほうがいいかなって"

 妙に高い声が頭の中に響いた。まだ声変わり前って感じだ。

 まあ、ちまちま貯めてる魔力消費するのイヤだし、手伝ってくれるならそれに越したことは無いんだけど。

"お姉さん正直者だね。ちょっとだけ待ってて"

 いきなり沼の中央付近の水面からぼっこりと水柱が立った。

 "あぎええええええええ"
 この声というか断末魔は、さっきの水魔の声だな?

 今度は沼の水面がごっそり下がって、中央に向けて渦を巻いた。
 と思ったら、中央の窪んだところにとんでもない圧がかかって、水面ごと押し潰される。
 えらく強引な魔力任せのお片付けだった。

 沼の水面が静かになるまで、そんなに時間はかからなかった。


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