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今日もアクアオッジ家は平和です
44 ⑲バタンキューか生き埋めか
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「今だ、メリル! あの絵を光魔法で焼き払え!」
アンドリュー王子の声が響いた。
今なら王子が真名を支配してるから、敵も弱くなってるんだっけ?
それならやるしかない!
目まぐるしい状況に慌てていたメリルだったけれど、王子の言葉で自分がやらなきゃいけないことを正確に把握する。
「やってやる! というかやらないとやられちゃう!」
戦闘ポーズを取りとてつもない大きさの光の玉を生み出す。神々しい光に照らされるメリルは、ポーズはさておき美しかった。
まるで陽の光そのものに導かれるように、精霊たちが次々に光の玉に集まっていく。
"メリル行け~"
"わたしも手伝う!"
光の精霊がちょちょいとメリルに向かって指を振る。と、ますます光の玉の光量が増し大きくなる。
光の玉が、身長どころか天井まで届きそうな、とんでもない大きさになったのを見て、メリルがにかっと笑った。
「見よ、超特大の光玉を! お前なんかに血液チューチューされてたまるもんかぁ……重ねがけの玉を喰らえー!」
その時、額縁を覆っているひび割れた結界が、パリーン……と音を立てた……
結界がバリバリと割れ、悪魔の両腕が勢いよく飛び出したのと、ほぼ同時にメリルの放った光の玉が、迎え撃つかのように光の爆発を起こした。
何も見えなくなるほど光が部屋中に満ちた直後、光の玉が直撃した悪魔の両腕が、蠢く指先から真っ黒く焼け焦げていき、破片となってポロポロと崩れ落ちていく──
ようやく目を開けていられないほどの光量が収束していくと、光で焼け焦げた悪魔が、裂けた口からぼそぼそと、何かを呟きながら見る間に溶けていった。
"バカな……たかがヒト如きに……"
悪魔の最後の呟きを、みんなは確かに聞き届ける。
空っぽの額縁だけが、まるで何事もなかったかのように壁に残ったまま──
……が。
「……なんか熱くない?」
メリルが灯りを取るため火で燃やしたソファのほうを向くと、火は壁に燃え広がっており、バチバチいいながら壁全体に広がって、そこはもう一面火の壁になっていた。
「げぇっ」
燃やした張本人が令嬢にあるまじき声を上げる。
「精霊たち、火を消せないかい?」
ウィルフレッドが精霊たちに頼み込むと、なぜか精霊たちが慌てている。
精霊ウンディーネが首を傾げている。
"水をかけても勢いが増すばかり"
精霊シルフィードも右往左往している。
"空気を遮断しても別の場所に燃え移っちゃう。いっそ部屋全体の空気を抜いてみる?"
ウィルがブンブンと首を横に振りながら、ぎょっとしたようにシルフィードを凝視した。
メリルもそれに倣う。風の精霊は勢いなだけの発言が多いから、勢いだけでやる予感がする。絶対やる。
本当にそれをやられたら、みんなで倒れ伏して遭難する未来しか見えない。
「いや、それだと僕らもバタンキューだ」
ウィルが焦ってそう言うと、シルフィードがプッと笑った。
"バタンキュー、だって! アハハおもしろ!"
ウィルの発言だけ聴こえた王子とソルが、目に見えて真っ青になった。
ろくな提案じゃないことを、すぐに察したんだろう。その通り~♪
精霊ノームが空中で胡坐をかいて、ウンウン唸っている。
"いっそ、この地下室全部を地中に埋めてみるかのう?"
ウィルが静かに首を振った。ちょっと諦めが入っている。
「僕たち生き埋めになっちゃうからやめて……」
「いったいどういうことになってるんだ……?」
王子はそう言うけれど、通訳必要かな?
今真相究明するのは、そこじゃない気がする。
精霊サラマンダーがトカゲ姿のまま、ウィルフレッドの肩に乗ってオロオロしている。
"炎が我の言うことを聞かない"
ああ、なんかまともな発言に思える。
って、よくないよ。
このままじゃ焼け死ぬ。
精霊たちの力じゃ、この炎は消せないということだけは分かった。
「自力で何とかするって言っても……ごふっ」
「喉、大丈夫?」
「大丈夫、じゃない……イガイガゴロゴロする……」
「煙効果、か……」
(魔法って精霊の力を借りて発動させるから、ウンディーネが"水をかけても勢いが増すばかり"って言ってたのが怖すぎて水は使えないや……)
細かい調整で魔法を出せないので、ドカンと水をかけたら大惨事になってしまう、かもしれない。
うーんうーん、やってみないとわかんないかな?
どうしようかな、と唸っていると、みんなもそれぞれの派生スキルを思い浮かべながら、どうにか応用出来ないか考えているのが分かった。
「じゃあ、熱くて死にそうだし、喉が痛いから、ウンディーネ、僕たちをびしょぬれにしてくれない?」
"分かった!濡らせばいいのね?"
「うん。時間稼ぎだけど、熱くてたまんないから」
最初にみんなが降りてきた階段が壁ごと焼け落ちて、ドーン! バリバリバリ! と大きな音がした。
ウンディーネがみんなの頭上に、小さなタライ一杯くらいの大きさで水の塊をプカプカ浮かせて、そのまま落下させた。
微妙な匙加減の水の量だったけれど一部多かったらしく、水が流れて壁のほうに行き着くと、ごうっと炎の勢いが爆上がりする。
(ひえええ! ウンディーネの言ってたことホントだったんだ!)
「わたしが水魔法で消そうとしなくてよかったぁ……」
危うくみんなをミナゴロシにするとこだったよ……
……まあ、わたしがソファを火だるまにした時点で、そうなってるんだけどね……
「うん。だからメリルじゃなくてウンディーネに頼んだ」
「ウィルフレッドが冷静で本当に良かったと思う」
「メリルお嬢様の力はどちらかというと攻撃寄りですからね」
……ソルの気遣いが、こんなに居たたまれなかったことって、これまであった!?
今や天井にも火の手が伸びていて、バラバラと木の破片が落下してるし、煙の量もどんどん増えてきた。
焼け死ぬ前に煙を吸い込んで倒れちゃいそう。
これはやばすぎる。完全に万事休す、だ。
その時だった。
アンドリュー王子が何かを思い出したようにハッとすると、額縁のほうに歩きだす。
「あの悪魔、最初に見たときさかさまだったけど何かを指さしていたよね? どこを指していたんだろう……?」
「さかさまになってまで、何を指していたんだろう」
「どうして指していたんだろう」
(必ずあのポーズをするに至った理屈があるはず──)
人に聞かせるようにじゃなく、まるで自分に言い聞かせるように、次々と疑問を投げかけている。
考えるのが苦手なメリルには、どの問いもさっぱり分からなかかった。
だが、解くことを得意な人はいるもので──まさしく王子がそうだった。
「分かった。……予想が正しければ──」
水を滴らせながら、王子が欠けた円形部分のほうに歩きだす。
「この地下室は、上部を切り取ったような円形構造なのに、左右対称じゃないんだ」
「左側方向には、もう落ちちゃったけど階段があって、人の出入りがそっちなら、床の傷は当然そちらが多いはずだろう?」
言いながら王子は何かを置く台座に近づくと、台座の裏を覗き込む。
「だけど、ここから右側方向のほうが、床の木の傷が多いんだ……」
「あったあった」
王子が何かを押したのかカチリ、と音がしたかと思うと横滑りに壁が動いて、ぽっかりと空間が姿を現した。
「この壁の下、床の傷が一番多かったんだ」
これには全員驚いてしまう。
「なんで分かったの!?」
「答え合わせはあとで! 早く脱出しよう!」
「う、うん!」
空間の先は上り階段になっていて、幸か不幸か燃え盛る炎が灯り代わりになって、しっかり出口まで見える。
「急げ!」
うん急ごう。
階段を下りたときよりずっと機敏ですよ。怖くないし。
脱出出来ると分かったみんなの逃げ足は速い。
早く逃げなくちゃ。地下室を飲み込もうとしている炎が、新たな空気を求める前に。
アンドリュー王子の声が響いた。
今なら王子が真名を支配してるから、敵も弱くなってるんだっけ?
それならやるしかない!
目まぐるしい状況に慌てていたメリルだったけれど、王子の言葉で自分がやらなきゃいけないことを正確に把握する。
「やってやる! というかやらないとやられちゃう!」
戦闘ポーズを取りとてつもない大きさの光の玉を生み出す。神々しい光に照らされるメリルは、ポーズはさておき美しかった。
まるで陽の光そのものに導かれるように、精霊たちが次々に光の玉に集まっていく。
"メリル行け~"
"わたしも手伝う!"
光の精霊がちょちょいとメリルに向かって指を振る。と、ますます光の玉の光量が増し大きくなる。
光の玉が、身長どころか天井まで届きそうな、とんでもない大きさになったのを見て、メリルがにかっと笑った。
「見よ、超特大の光玉を! お前なんかに血液チューチューされてたまるもんかぁ……重ねがけの玉を喰らえー!」
その時、額縁を覆っているひび割れた結界が、パリーン……と音を立てた……
結界がバリバリと割れ、悪魔の両腕が勢いよく飛び出したのと、ほぼ同時にメリルの放った光の玉が、迎え撃つかのように光の爆発を起こした。
何も見えなくなるほど光が部屋中に満ちた直後、光の玉が直撃した悪魔の両腕が、蠢く指先から真っ黒く焼け焦げていき、破片となってポロポロと崩れ落ちていく──
ようやく目を開けていられないほどの光量が収束していくと、光で焼け焦げた悪魔が、裂けた口からぼそぼそと、何かを呟きながら見る間に溶けていった。
"バカな……たかがヒト如きに……"
悪魔の最後の呟きを、みんなは確かに聞き届ける。
空っぽの額縁だけが、まるで何事もなかったかのように壁に残ったまま──
……が。
「……なんか熱くない?」
メリルが灯りを取るため火で燃やしたソファのほうを向くと、火は壁に燃え広がっており、バチバチいいながら壁全体に広がって、そこはもう一面火の壁になっていた。
「げぇっ」
燃やした張本人が令嬢にあるまじき声を上げる。
「精霊たち、火を消せないかい?」
ウィルフレッドが精霊たちに頼み込むと、なぜか精霊たちが慌てている。
精霊ウンディーネが首を傾げている。
"水をかけても勢いが増すばかり"
精霊シルフィードも右往左往している。
"空気を遮断しても別の場所に燃え移っちゃう。いっそ部屋全体の空気を抜いてみる?"
ウィルがブンブンと首を横に振りながら、ぎょっとしたようにシルフィードを凝視した。
メリルもそれに倣う。風の精霊は勢いなだけの発言が多いから、勢いだけでやる予感がする。絶対やる。
本当にそれをやられたら、みんなで倒れ伏して遭難する未来しか見えない。
「いや、それだと僕らもバタンキューだ」
ウィルが焦ってそう言うと、シルフィードがプッと笑った。
"バタンキュー、だって! アハハおもしろ!"
ウィルの発言だけ聴こえた王子とソルが、目に見えて真っ青になった。
ろくな提案じゃないことを、すぐに察したんだろう。その通り~♪
精霊ノームが空中で胡坐をかいて、ウンウン唸っている。
"いっそ、この地下室全部を地中に埋めてみるかのう?"
ウィルが静かに首を振った。ちょっと諦めが入っている。
「僕たち生き埋めになっちゃうからやめて……」
「いったいどういうことになってるんだ……?」
王子はそう言うけれど、通訳必要かな?
今真相究明するのは、そこじゃない気がする。
精霊サラマンダーがトカゲ姿のまま、ウィルフレッドの肩に乗ってオロオロしている。
"炎が我の言うことを聞かない"
ああ、なんかまともな発言に思える。
って、よくないよ。
このままじゃ焼け死ぬ。
精霊たちの力じゃ、この炎は消せないということだけは分かった。
「自力で何とかするって言っても……ごふっ」
「喉、大丈夫?」
「大丈夫、じゃない……イガイガゴロゴロする……」
「煙効果、か……」
(魔法って精霊の力を借りて発動させるから、ウンディーネが"水をかけても勢いが増すばかり"って言ってたのが怖すぎて水は使えないや……)
細かい調整で魔法を出せないので、ドカンと水をかけたら大惨事になってしまう、かもしれない。
うーんうーん、やってみないとわかんないかな?
どうしようかな、と唸っていると、みんなもそれぞれの派生スキルを思い浮かべながら、どうにか応用出来ないか考えているのが分かった。
「じゃあ、熱くて死にそうだし、喉が痛いから、ウンディーネ、僕たちをびしょぬれにしてくれない?」
"分かった!濡らせばいいのね?"
「うん。時間稼ぎだけど、熱くてたまんないから」
最初にみんなが降りてきた階段が壁ごと焼け落ちて、ドーン! バリバリバリ! と大きな音がした。
ウンディーネがみんなの頭上に、小さなタライ一杯くらいの大きさで水の塊をプカプカ浮かせて、そのまま落下させた。
微妙な匙加減の水の量だったけれど一部多かったらしく、水が流れて壁のほうに行き着くと、ごうっと炎の勢いが爆上がりする。
(ひえええ! ウンディーネの言ってたことホントだったんだ!)
「わたしが水魔法で消そうとしなくてよかったぁ……」
危うくみんなをミナゴロシにするとこだったよ……
……まあ、わたしがソファを火だるまにした時点で、そうなってるんだけどね……
「うん。だからメリルじゃなくてウンディーネに頼んだ」
「ウィルフレッドが冷静で本当に良かったと思う」
「メリルお嬢様の力はどちらかというと攻撃寄りですからね」
……ソルの気遣いが、こんなに居たたまれなかったことって、これまであった!?
今や天井にも火の手が伸びていて、バラバラと木の破片が落下してるし、煙の量もどんどん増えてきた。
焼け死ぬ前に煙を吸い込んで倒れちゃいそう。
これはやばすぎる。完全に万事休す、だ。
その時だった。
アンドリュー王子が何かを思い出したようにハッとすると、額縁のほうに歩きだす。
「あの悪魔、最初に見たときさかさまだったけど何かを指さしていたよね? どこを指していたんだろう……?」
「さかさまになってまで、何を指していたんだろう」
「どうして指していたんだろう」
(必ずあのポーズをするに至った理屈があるはず──)
人に聞かせるようにじゃなく、まるで自分に言い聞かせるように、次々と疑問を投げかけている。
考えるのが苦手なメリルには、どの問いもさっぱり分からなかかった。
だが、解くことを得意な人はいるもので──まさしく王子がそうだった。
「分かった。……予想が正しければ──」
水を滴らせながら、王子が欠けた円形部分のほうに歩きだす。
「この地下室は、上部を切り取ったような円形構造なのに、左右対称じゃないんだ」
「左側方向には、もう落ちちゃったけど階段があって、人の出入りがそっちなら、床の傷は当然そちらが多いはずだろう?」
言いながら王子は何かを置く台座に近づくと、台座の裏を覗き込む。
「だけど、ここから右側方向のほうが、床の木の傷が多いんだ……」
「あったあった」
王子が何かを押したのかカチリ、と音がしたかと思うと横滑りに壁が動いて、ぽっかりと空間が姿を現した。
「この壁の下、床の傷が一番多かったんだ」
これには全員驚いてしまう。
「なんで分かったの!?」
「答え合わせはあとで! 早く脱出しよう!」
「う、うん!」
空間の先は上り階段になっていて、幸か不幸か燃え盛る炎が灯り代わりになって、しっかり出口まで見える。
「急げ!」
うん急ごう。
階段を下りたときよりずっと機敏ですよ。怖くないし。
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