『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合

鈴白理人

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12 荒野を耕す

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 クローバーは根付いて繁殖するのは速いけれど、撲滅の難しい植物だ。
 
 植えてもいい場所を丁寧に聞いていると、なぜか鳥や牛も見学しにきていた。
(ほんと、動物って好奇心旺盛だよなあ)
 早速鍬で土を耕し始めた。
 最初のほうはずっと鍬が石に当たってカツンと音がした。

 数時間没頭してひたすら耕す。

 汗が目に入ってしみるのも我慢だ。
 全て耕すならきっと夏の間には終わらないだろう。やれるところまで頑張ろう。
 耕すそばからミミズがやってきて"ここの土はまったりとしていてうまいうー"そう言ってる気がした。どうやら領主館にいるミミズとは親戚じゃなさそうだ。ここにいるのはちょっとグルメ評論家っぽい。

 それに一羽、二羽と少しずつ数を増やして、領主館のほうでは見なかった渡り鳥たちが興味深そうにアーサーの行動を見学しにやってくる。近くに湖があるからそのせいかもしれない。
「ミミズは頑張ってお仕事してくれてるから食べないでやってね」と言うと、"あんなに頑張ってるのに食べるわけないない"って言ってくれてほっとする。


 鶏は飼われている場所が離れているのでミミズの身は安全そうだ。アーサーは鶏がちょっと苦手だった。攻撃的で攻撃力もある。
 メスより数は少ないけれどオスは威嚇してくるので、常に賄賂キュウリを持っていき、『美味しい思いが出来る奴』認定をもらう。賄賂を渡すとき、真正面からは近づかない、を守れば大丈夫になった。
 特に小躍りするような動きをしたときは足蹴りを喰らわせて来ようとする兆候なので戦略的撤退だ。これ大事。
 アーサーが喜んで小躍りすると、この鶏の動作にそっくりだったが、アーサーが大人になってもそれを指摘する者は現れなかった。きっとみんなアーサーを気遣ってたんだな……ゴニョゴニョ

 一応鶏の気持ちも分かるけれど「ミミズは食べないでやってね」って言うと、"食べないわよやーね"って言ってくれる。くれるんだけど……ミミズがたまに土から頭を出すと、じ~~~~~っと見てるんだよね。すごい眼力。菜っ葉とか野菜くずが好物だから持っていくとミミズのことは忘れてくれるんだけど、目付きがイっちゃってる。
 ただ、ミミズを食べたことのない鶏は餌だと思わなくなると教わったので、ミミズを食べない期間が長くなったら、他の餌だけで満足してくれるようになるっぽいから大丈夫かな。そうか。それで鳥頭って言うのか。アーサー納得する。

 昼食に呼ばれたのでちょっと遅れながらも向かうと、農家の主人一家と従業員のみんなが、緑と白のアスパラガスを涙を流して美味しそうに食べている最中だった。商人からアスパラガス購入したのかあ。つい自分のことのように嬉しくなった。

「あ、アーサー坊ちゃま、先に食べててすみません」

 坊ちゃまはやめて……。アーサーでいいから。
「僕が遅れちゃっただけなので」

「分かりました。アーサー。これからはもっと早く呼びますね」

「ありがとうございます」
 その言葉と一緒に、胸の中にじんわりとあたたかいものが広がった。
 お礼、大事。うん、大事。

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