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一章・アイヅ王子との婚約破棄編
19話・アイヅ王子との婚約破棄成立です
しおりを挟むアイヅ王国の王子はとうとう婚約者希望を発表した。
その言葉の相手はバクーフ王の娘「スズカ」だった。
パーティー会場は熱狂の渦に包み込まれそうになるけど、アイヅ王子が次の言葉でかき消した。
「……婚約者はスズカという予定だったけど、この国のクエストクラスのアヤカにしたい。僕の意思として貴族令嬢でもあるアヤカを任命するよ。ジュテーム! モナムール! トレビアーン! アヤカ!!!」
『!?』
アイヅ王子の言葉で私に注目が集まる。
バクーフ王は長いヒゲがブイの字になっていて、唖然とした顔のスズカは固まっているわね。これで、面白くなって来たわよ。
(ま、あのツラのスズカはウザいから早くヒロインモードから解除してあげないと)
私は人々を視線を一身に集めながらメインステージへ歩く。ざわめき立つパーティー会場を治めるようにアイヅ王子は語り出した。
「バクーフ王国のクエストクラスのアヤカ。僕は我が母上に似ている君と婚約しようと思うよ。君は僕を惑わせ、僕を王子だと忘れさせてくれる女だ。そんな女が僕には合っているよ」
「ありがとうございます」
と、私は感謝の言葉を述べた。
すると、バクーフ王は長いヒゲを上下に動かしつつ叫ぶ。
「待てーい! その婚約待てーい!」
と、バクーフ王が口を挟んで来た。
「そもそも、クエストクラスは異世界ジパングでは他国との婚約は認められていないぞ! 国の最強の矛と盾であるクエストクラスが国際条約で、他国との婚約が出来ないのはアイヅ王も知る国際ルール。それを破るのかねアイヅ王子?」
「あれ? 確かにそう父上から聞いていたけど、バクーフの法では違うのでは? と母上の幻が……」
「幻? バクーフ王として言わせてもらうぞアイヅ王子。ホームシックだか知らぬが、幻の母上を信じているなど、君はまだ王子としての器も足りないようだな」
「うっ! 確かに……バクーフ王の言う通りです。僕はアイヅ王子として未熟過ぎる……」
だいぶパーティー会場も静まり返っているわね。
そのバクーフ王の言う通り、異世界ジパングでも最強ランクのクエストクラスの結婚は、他国間ではしてはいけない。自国の最強戦力が他国に流出したら、戦争の火種になるからね。
私は魔法が弱いアイヅの切り札になろうとしていた。バクーフは他に四人いるから問題無いとアイヅ王子を騙してね。
私と、私の生み出した母上の幻影に騙されていたアイヅ王子は自信を喪失したまま言う。
「アヤカ。君はクエストクラスが婚約出来無いのを知っていたのか……僕を騙していたのか?」
「私はそんな事、言ったかしら?」
「ぬぁ!?」
腰を抜かしたアイヅ王子は倒れる。
ギャグかよと思う私はまたつまらない質問をされた。
「で、では僕のアイヅ王国をクエストクラスとして守る約束は!? 君は我が国をクエストクラスとして守護したいとまで言ったからこそ、僕も君との婚約を考えたんだよ?」
「私がアイヅ王国を守る? 覚えていないわ。そんな約束」
アゴが外れたように口を開けて涙してるわ。
アイヅ王子は顔芸が出来るのね。
でも飽きたわ。
「では僕への……僕への愛はーー」
「でも私は王子様は好きよ」
と、アイヅ王子の耳元で言葉を遮り言う。
人の話を聞いているより、遮って攻めて責めるのが悪役令嬢。
『……』
かなりアイヅ王子は困惑してるわね。
この婚約者選びの最終日にこんな仕打ちを受けてパーティーは台無し。王子としての品格も地に落ちた。
突き放し、受け入れる。
触れたと思えば離れて行く。
それが悪役令嬢の仕事。
この感覚……カ・イ・カ・ン!
でも、落ちたなら登るだけ。
アイヅ王子という自覚があるなら、登り続けるしかないのよ。
私はアイヅ王子を立ち上がらせた。
「アイヅ王子。自国の防衛を好きな女に頼ってどうするの? それじゃ家臣はついて来ないわよ。地に落ちたなら這い上がる事をしないとね王子様」
「……」
欲をかいたわね王子様。
私はクエストクラスだから婚約破棄するしかない。
だから、悔しい顔をしつつもアイヅ王子は国の王子として言ったの。
「アイヅ王国王子として婚約者選びをしに来た私だったが、今回は「婚約破棄」とさせていただく! 失礼!」
と、アイヅ王子はメインステージから去ったの。瞳の色が赤からピンク色になり、どうやらスズカもヒロインモードが解除されたようね。
観客はぽかーんとしてるけど、バクーフ王国の家臣達はアイヅ王子に外交の件を話しているわ。婚約破棄の混乱から爆発した王子は、婚約せずとも外交を結ぶと言って歩いて行く。
「婚約破棄成立ね。ミッションコンプリート。乾杯♪」
婚約破棄が決まるカオスなパーティー会場で、私は一人笑っていたの。そして、ヒロインモードが解除されたスズカと、遠くから乾杯をしてウインクをしたわ。スズカも笑って私を祝福してくれたわ。
初回の「婚約破棄」成立大成功!
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