41 / 53
三章・チョウシュウ王子との婚約破棄編
41話・チョウシュウ王子がバクーフで軍事演習をします
しおりを挟む今日はバクーフ王国の外に出て、チョウシュウ王国の軍事演習を見学する事になりました。国境付近の草原にて、バクーフ王を中心とした人間達がチョウシュウ軍の活動を見ています。
スズカもバクーフ軍の王族が着用する白い制服に身を包んで、チョウシュウ王子の隣にいます。私は少し離れた所から百人を超えるチョウシュウ軍がおかしな事をしないか警戒しています。
「白兵のナイトに遠距離のウィザードという基本的な構成の軍隊ね。でも、あの部隊は動きは無いわね」
そう、疑問に思っているとチョウシュウ王子は部下に三百メートルは離れた場所に仮想敵のオブジェを立てさせたわ。まさか、あれを攻撃するつもり?
「魔法攻撃はだいたいが三十メートルぐらいが限度。私のようなクエストクラスでも五十メートルを越えれば魔法の威力は落ちてしまうわ。それなのに三百メートルも離れた所から何をしようと言うの?」
私の疑問はバクーフ王国の見学者の疑問でもあり、その疑問をチョウシュウ王子は解決してくれる動きに出たわ。
「それではスナイパー達は所定位置について構え!」
軍隊から出てきたスナイパーと呼ばれる三人組は、草原に示された所定位置に立ち止まり魔力を高めたの。両手を前に出して三角形を作り、その三角形をスコープのように覗いていたわ。そして――。
「撃てーーっ!」
ビー! というレーザーが三百メートルも離れた仮想的のオブジェの頭を貫いたの! バクーフ王国の人間達も驚いているわね。バクーフ王なんかひっくり返ってるし。でもスズカだけはチョウシュウ王子に駆け寄り、素晴らしいと声をかけている。注意するのも面倒だわ……。
「スズカ姫。その場所は危険です。バクーフ王のいる場所までお戻りを」
「いいではないですか。私の側にはチョウシュウ王子がいますもの。安心、安全ですわ。ねぇ、チョウシュウ王子?」
「なるほど。自信過剰に言えばそうなるね。小生の側が安心、安全だからスズカ姫はここで見ていたまえ」
スズカの罠にまんまとハマったチョウシュウ王子はスズカの行動を許した。となると、私も側にいる必要がある。スズカを守るのもクエストクラスの仕事だからね。長距離レーザー魔法を放ったスナイパー達は一礼し、バクーフ王国側にチョウシュウ王子は宣言したわ。
「これがチョウシュウ王国のレアジョブの一つ。スナイパーさ! 自信過剰に言わなくても素晴らしい!」
この驚異的な長距離レーザー魔法にバクーフ王国側も拍手で応えていたわ。これは認めざるを得ないほど素晴らしい魔法だから。
レアジョブ・スナイパー。
長距離射撃のレーザー魔法を得意とするジョブ。両手で作った三角形に魔力を集中してスコープを生み出し、そこから一撃で相手の急所を射抜く。三百メートルからの射撃が可能。
通常魔法の飛距離ならクエストクラスでも百メートルが限度。五十メートルも越えればまず、魔法の威力そのものが落ち出しているわ。それを考える私は話し出す。
「凄まじいジョブだわスナイパーは。アレを連発されたら敵将を始末する事や、暗殺なんて楽勝じゃない。レアジョブを超えてるわ」
「いや、アヤカ君。スナイパーの有効性は確かに相手に見つからずに長距離攻撃が出来、暗殺にも向いているレアジョブだ。けど、一度撃ってしまえば次の発射までは五分のインターバルが必要。消耗が激しくて連射は不可能なのさ」
「なるほど。それがスナイパーの弱点」
「今、小生のなるほどを言ったね? アヤカ君も自信過剰になって来たね!」
すると、スズカまでクスクスと笑っているわ。元々、自信過剰ですわ……という目が何かムカつく!
「なるほど。なんて誰でも言うわよ。それより、今度は鋼鉄のオブジェを用意してるけど何をするの? あれはかなりの硬度がある鉄。カッチン鉄。あれをスナイパーで打ち抜くの?」
「いえアヤカさん。おそらく壊すんですよ。あの三人の兵士の殺気が凄まじいですからね」
「?」
スズカの言う通り確かに凄まじい殺気だわ。狂った戦士のようね。あの変わりよう大丈夫なの?
「さて、バクーフ王国の諸君! 今度は我がチョウシュウ王国が誇る白兵最強ジョブ・バーサーカーの紹介だよ!」
猛獣のような目つきと、殺気に溢れる気配を全開にしている三人のバーサーカーは一斉に剣を抜き、標的と定めたカッチン鉄に走り出した!
(早いわ――本当の獣みたい。スピードは本物。後はパワーね……)
一斉に飛び上がるバーサーカー達はカッチン鉄を一刀両断にしたの! 上位モンスターのゴーレム並みの硬度があるカッチン鉄を一刀両断した事実に驚きを隠せないわ。
バクーフ王が泡を吹いている様子でバクーフ側の反応も丸わかりね。フッとぐるぐるメガネを指で上げたチョウシュウ王子は上出来だ……と言わんばかりに笑っている。そこでスズカは言った。
「あれがバーサーカーですか。素晴らしいです。あのスピードとパワー……私の愛もあれほど激しいものだと思います」
「なるほど。そんな愛を小生も欲しているよ。このバクーフに来てから小生も変化の時が来たようだ。人間の感情に興味が湧いているよ」
何かいい雰囲気になってるけど、私はチョウシュウ王子にバーサーカーについての説明を求めたわ。
レアジョブ・バーサーカー。
基本からしてモンスターレベルの身体的な強さがある。それに加えて能力三倍増しのバーサーカーモード。兵士としてはかなり強力だけど、命を削るようなジョブだわ。
そのバーサーカー達は何かの赤いサプリメントのような物を飲んでいたわ。そういえばスナイパー達も飲んでいたわね。
「チョウシュウ王子。あの赤いサプリメントは?」
「あれはマジックサプリさ。あのサプリメントを使わないと身体の疲れが溜まってしまうんだ。あのレアジョブは戦闘後の回復がキーポイントだからね」
「マジックサプリ……」
マジックサプリは魔物の血の成分で出来てるようなの。副作用として目の下が黒くなり睡眠時間が増える。確かにあの二つのジョブには必要不可欠だけど、確実に危険なアイテムでもあるわ。バクーフには必要無いジョブとアイテムだと思う。それをチョウシュウ王子は外交で輸出しようとしてるのね。
「どうだったかなバクーフ王国の諸君! 短い時間だったがこれでチョウシュウ王国の軍事演習は終わりだ。何か質問があれば家臣達に頼むよ! では、チョウシュウ王国軍事演習にお付き合い頂き感謝する」
そうして、チョウシュウ王国の軍事演習は終わったわ。バクーフ王国の軍人達はこぞってスナイパーやバーサーカーについての説明を求め、もう一度スナイパー達は演習をする事になっていたの。その最中、チョウシュウ王子とスズカは関係を深めていた。
「チョウシュウ王国は海運をしていて外の国と付き合いがあるから新しいジョブやアイテムがあって素敵です。ですが、本当にバクーフ王国の姫である私なんかでよろしいのですか?」
「当然だよ。バクーフ王国は勇者を輩出したとされる異世界ジパングにおいての大国だ。ドラゴンが舞い降りる地でもあり、小生は自分の子が勇者になれば最高のデータを取れるだろうから楽しみで仕方ないよ」
「まぁ、王子様は話が早いですわ。でも、私は王子様の候補の誰にも負けたくないです」
じっ……とチョウシュウ王子の目を見つめ、手を握るスズカは言った。それをぐるぐるメガネの奥の瞳で優しく笑い、王子も受け入れていたわ。そして、スズカはキラーワードを言う。
「私の生きた人生である15年の全てで王子様を愛します」
弾けろ! 弾けてしまえ! 弾けて混ざれ! 軟弱姫! と私は心で叫ぶ。すると――いきなりチョウシュウ王子は叫びました。
「危ないスズカ!」
チョウシュウ王子はスズカを抱え込むように地面に転がっている。周囲は一時騒然としてるけど、私が問題無いと落ち着かせるの。私は何かがここに飛んで来たのがわかった。スズカに向かって飛んで来ていたのは石。ただの石ころだったの。
『……』
ですが、何かバクーフ王国側の人間達がザワザワしてますね。何が起きたのでしょうか?
「何だあの青い髪のイケメンは……」
すると、メチャクチャイケメンの男がスズカを助けています。青い髪の前髪を下ろしたヘアスタイルで、学ランと呼ばれるチョウシュウ王国の制服。そして、切れ長の青い瞳は女を弄ぶような妖艶さを感じる……。
(あれ? チョウシュウ王子のぐるぐるメガネが地面に落ちてる? じゃあ……まさかあのただのイケメンは――!?)
そのどこから現れたか不明のイケメンは、ぐるぐるメガネのチョウシュウ王子でした!
0
あなたにおすすめの小説
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
勘当された悪役令嬢は平民になって幸せに暮らしていたのになぜか人生をやり直しさせられる
千環
恋愛
第三王子の婚約者であった侯爵令嬢アドリアーナだが、第三王子が想いを寄せる男爵令嬢を害した罪で婚約破棄を言い渡されたことによりスタングロム侯爵家から勘当され、平民アニーとして生きることとなった。
なんとか日々を過ごす内に12年の歳月が流れ、ある時出会った10歳年上の平民アレクと結ばれて、可愛い娘チェルシーを授かり、とても幸せに暮らしていたのだが……道に飛び出して馬車に轢かれそうになった娘を助けようとしたアニーは気付けば6歳のアドリアーナに戻っていた。
《完結》「パパはいますか?」ある日、夫に似た子供が訪ねて来た。
ヴァンドール
恋愛
嫁いですぐに夫は戦地に赴いた。すると突然一人の男の子が訪ねて来た「パパはいますか?」
その子供の顔は戦地に行った夫にそっくりだった。
悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!
たぬきち25番
恋愛
気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡
※マルチエンディングです!!
コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m
2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。
楽しんで頂けると幸いです。
※他サイト様にも掲載中です
村娘になった悪役令嬢
枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。
ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。
村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。
※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります)
アルファポリスのみ後日談投稿しております。
死亡予定の脇役令嬢に転生したら、断罪前に裏ルートで皇帝陛下に溺愛されました!?
六角
恋愛
「え、私が…断罪?処刑?――冗談じゃないわよっ!」
前世の記憶が蘇った瞬間、私、公爵令嬢スカーレットは理解した。
ここが乙女ゲームの世界で、自分がヒロインをいじめる典型的な悪役令嬢であり、婚約者のアルフォンス王太子に断罪される未来しかないことを!
その元凶であるアルフォンス王太子と聖女セレスティアは、今日も今日とて私の目の前で愛の劇場を繰り広げている。
「まあアルフォンス様! スカーレット様も本当は心優しい方のはずですわ。わたくしたちの真実の愛の力で彼女を正しい道に導いて差し上げましょう…!」
「ああセレスティア!君はなんて清らかなんだ!よし、我々の愛でスカーレットを更生させよう!」
(…………はぁ。茶番は他所でやってくれる?)
自分たちの恋路に酔いしれ、私を「救済すべき悪」と見なすめでたい頭の二人組。
あなたたちの自己満足のために私の首が飛んでたまるものですか!
絶望の淵でゲームの知識を総動員して見つけ出した唯一の活路。
それは血も涙もない「漆黒の皇帝」と万人に恐れられる若き皇帝ゼノン陛下に接触するという、あまりに危険な【裏ルート】だった。
「命惜しさにこの私に魂でも売りに来たか。愚かで滑稽で…そして実に唆る女だ、スカーレット」
氷の視線に射抜かれ覚悟を決めたその時。
冷酷非情なはずの皇帝陛下はなぜか私の悪あがきを心底面白そうに眺め、その美しい唇を歪めた。
「良いだろう。お前を私の『籠の中の真紅の鳥』として、この手ずから愛でてやろう」
その日から私の運命は激変!
「他の男にその瞳を向けるな。お前のすべては私のものだ」
皇帝陛下からの凄まじい独占欲と息もできないほどの甘い溺愛に、スカーレットの心臓は鳴りっぱなし!?
その頃、王宮では――。
「今頃スカーレットも一人寂しく己の罪を反省しているだろう」
「ええアルフォンス様。わたくしたちが彼女を温かく迎え入れてあげましょうね」
などと最高にズレた会話が繰り広げられていることを、彼らはまだ知らない。
悪役(笑)たちが壮大な勘違いをしている間に、最強の庇護者(皇帝陛下)からの溺愛ルート、確定です!
婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。
黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」
豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。
しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる