私の夫は昔愛した彼女を選んだ。さようなら旦那様、私は孤独に耐えられませんので家を出ます

吉乃

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11.新たな生活の始まり

盛大な祝宴が終わり、アレクシスとルシアは正式に夫婦としての生活をスタートさせた。

結婚直後の二人には、多くの貴族たちの視線が向けられていた。

「この二人は、本当に愛し合うことができるのか?」

「過去の傷を乗り越えて、幸せになれるのか?」

貴族たちは陰で噂をしていたが、ルシアもアレクシスも、それらの言葉に耳を貸さなかった。

彼らはすでに、過去の痛みを知っていたからこそ、結婚とは「尊重」と「信頼」で築かれるものだと思っていた。

だからこそ、その思いを胸に刻み接していくことが、お互いを大切にする、最も幸せな人生を送るための道だと信じていた。





祝宴が終わり、夜の静寂が王都を包み込む頃——

ルシアとアレクシスは、正式に夫婦としての生活を始めるため、リューンハイム侯爵邸へと向かった。

馬車の中、ルシアは外の景色をぼんやりと眺めながら、心臓の高鳴りを抑えられずにいた。

今日から、彼と共に過ごす日々が始まる。


(私は……本当に、妻になったのよね。)


アレクシスは隣に座り、無言のまま夜の街を見つめていた。

彼の横顔は落ち着いていて、何一つ動揺を見せていないように見える。


しかし、ルシアの胸は、**これから訪れる"夫婦としての初夜"**のことでいっぱいだった。

やがて馬車が侯爵邸に到着すると、屋敷の使用人たちが二人を迎えた。


「ようこそ、ルシア様。」


家政婦長が恭しく頭を下げ、すぐに侍女たちがルシアの手を取る。


「奥様、お部屋のご準備を整えております。どうぞこちらへ。」


ルシアは少し緊張しながらも、アレクシスに一礼し、侍女たちに導かれて夫婦の寝室へと向かった。



寝室に入ると、温かい湯が張られた大理石の浴槽が用意されていた。

ルシアは侍女たちに手を取られ、静かに衣服を脱がされる。


「奥様、本当にお美しい……。」

「肌がとても滑らかですわ。」


侍女たちは慎重にルシアの髪をほどき、優しく櫛を通した。

湯に浸かると、心地よい香りのするハーブオイルが溶け込んだ湯気が立ち上る。


(落ち着かなくちゃ……でも……。)


ルシアは、自分がこうして支度を整えられていることに改めて実感が湧いてきた。

これから、アレクシスと"夫婦として"の時間を迎える。

侍女たちはルシアの肌を丁寧に洗い、髪を優しく洗い流す。


「……奥様、とても美しく仕上がりました。」


湯から上がると、身体を柔らかな布で包まれ、

純白の薄手のナイトドレスが丁寧に着せられた。

繊細なレースがあしらわれたそのドレスは、軽やかで肌に馴染む。

肩口がわずかに開いていて、普段の貴族のドレスよりもずっと女性らしさを引き立てるデザインだった。


(……アレクシス様、どんな顔をするかしら。)


ルシアは鏡の前に立ち、ドキドキしながら髪を整えられるのを待った。

侍女たちは、香りの良いオイルを髪になじませ、艶やかに結い上げる。

ふわりと揺れる髪飾りが、ルシアの緊張をさらに高めた。


「奥様、準備が整いました。」


侍女の一人が微笑みながら告げる。


「……ありがとう。」


ルシアは小さく頷きながら、ベッドの傍へと座った。

今、この寝室には彼女一人。

そして、アレクシスが来るのを待つのだった。




扉の向こうから、静かな足音が聞こえてくる。


(……)


ルシアの心臓が高鳴る。

そして、扉がゆっくりと開いた。

そこに立っていたのは、ガウンを羽織ったアレクシスだった。

ガウンの下から覗く彼の身体は、まさに鍛え抜かれた騎士そのものだった。

広い肩幅、引き締まった胸板、そして戦場を知る男だけが持つ無駄のない筋肉。

普段の礼服姿では見えない、彼の本来の逞しさが、今目の前にあった。

ルシアは、思わず息をのむ。


(……こんなにも、逞しい人だったのね。)


普段は冷静で、優雅な振る舞いをするアレクシス。



「……待たせましたね。」


アレクシスが静かに言う。


「い、いえ……。」

ルシアは、ぎこちなく首を振った。

彼はルシアの前に近づき、そっと手を差し出した。


「……手を。」


ルシアは、彼の大きな手に自分の手を重ねる。

指が絡まると、彼の手の温もりが静かに伝わってきた。

(……熱い。)

その瞬間、彼女の胸の奥で、"恐怖"ではなく、別の何かが静かに芽生えた。

それは——安堵と、確かな信頼。


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