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出会いというか、わかれというか
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人がいない教室に電気を付け、教室へと入る。神一郎の机には前日と同様、ペンやらゴミやらが散らばっている。癖でいつものように、眼鏡のブリッチに手をやる。
よくもまぁ、毎日こんなことできるもんだよ。逆にこれは、自分のこと好きなんじゃないかと思う。いやこれ、好きでしょ。大好きでしょ。
なんて、変な妄想を膨らませつつ、ゴミを廊下にあるゴミ箱に放った。
そして、自分の席へ座りほっと息をつく。そして、時間割をスマホで確認する。神一郎は、時間割で唯一確認するのは、体育があるかないかだ。
なぜなら、クソつまんないから!あ、いやとても退屈な時間って言ったほうが正解かな。
神一郎は、今選択でバレーボールをとっている。そして、神一郎に掃除を押し付けた人たちも同じ種目だ。つまりは、いじめられる。
よくある体育いじめ的なやつならまだいいんだけど、俺のはちょっとまた違う。自分は、運動神経はいい方だ。だから、他の男子が俺を集中して狙っても、簡単にレシーブできてしまう。あと、仲間にわざとタックルされそうになっても、気配でなんとなく避けられる。そんなことを続けていたら、いつしかボールは一切自分に回ってこなくなった。
そこからは、退屈な時間の始まりだ。ただ、呆然と見ているだけの時間。たまに、こぼれ球を取れることはあるが、全くプレーさせてもらえない。サーブは唯一だれにも邪魔されずにプレーできるが、サーブだけだと物足りない。どうせならラリーが続いたほうが楽しい。
まぁ、こんな理由で体育がちょっと嫌なんだよね。
神一郎は、深くため息をついた。その日の体育は、想像してた通り、1ミリもプレーせずに終わった。
そして、時間は過ぎ帰りのホームルームを知らせるチャイムがなった。
先生が連絡ごとを事細かに話している。先生の連絡はいつも長いので、大抵は聞いてない。
「じゃあ、今日はきれいだから掃除無しで」
掃除がないことを確認した神一郎は、帰り支度を始める。すると、一人の男子生徒がこっちに近づいてきた。神一郎が顔を上げると、そこには学級委員の中田(なかだ)文康(ふみやす)がいた。
「ごめん…、神一郎くん、、。仕事手伝ってくれないかな…?どうせ、ひまだよね…?おねがい」
中田は申し訳無さそうにこちらを見つめる。実際は申し訳ない気持ちなんて、1ミリもないだろうが。中田はいつも神一郎が、虐められてるのにも関わらず何もしてこないし、その掃除をしている神一郎を見て、勝手に暇だと断言しているようだ。しかも、断らないことを知っている。
俺は困ってる人はほっとけない。
神一郎は眼鏡のズレを直し、中田に返事をした。その仕事内容はシンプルだった。資料のホチキスどめと、先生から進学の資料か手紙をもらってくるらしい。中田は資料が重いかもしれないから自分が取ってくると言って、教室を出ていった。神一郎は、教卓においてあった紙の束を持って、椅子に座り作業を始めた。
何枚かやるうちに、この作業が楽しくなってきた。けど、これをクラス全員分を作るのは流石に骨が折れそうだ。しかし、中田が帰ってくれば二人でやるから作業スピードは上がるだろう。
中田も重い資料取りに行ってくれたし、しっかりとやろう。けど、中田ちょっと遅いな。
そう思いつつ、作業の半分が終わり折り返し地点に入った。
そこへ、中田が資料を持って帰ってきた。その中田を見た神一郎は、なんか期待が外れたような心持ちになった。中田の手には、片手で持てる程度のプリントがあり、もう片方の手には携帯が握られ、誰かと話していた。
重いって言ってたのはどこのどいつ?しかも、遅かったのは電話してたせいなのかな。いや、今さっきかかってきたのかもしれない。俺らの先生は話が長いことで有名だから、捕まってたんだよきっと。
中田にそんな希望をのせ、神一郎は中田を見つめてみた。すると、視線に気づいたのか携帯をちょっと耳から離す。
「ホチキスどめはどう?順調?」
「今さっき、半分終わったとこかな」
「お、順調そうだね、今日は本当に手伝ってくれてありがとう」
中田はにっこりと微笑む。その微笑みと感謝でここまでの仕事の苦労が、報われた気がした。神一郎は、そんな中田のために早く終わるように、作業を再開した。
一方中田は、鞄をまとめだした。チャックの閉める音を聞いて、神一郎が顔を上げると中田は帰るモーションに入っていた。
え…、これ手伝ってくれない感じ?二人でやって、時短とかじゃないの?さっき、めっちゃ感動したのに、なにそれ。
「あ、そーだ」
中田が動きを止めて、こっちを向く。
あ、そーだよね、手伝ってくれるよね。
だが、中田は何度も神一郎の思いを簡単に裏切っていく。
「ホチキスどめ終わったら、職員室にいる先生に預けといてね、じゃあ僕はお先に!」
そう言って、中田は教室から姿を消した。神一郎は去りゆく中田に何も言えなかった。いや、あえて何も言わなかった。神一郎の目には悔し涙があった。
そーだよね、学級委員の中田も所詮は人間だ。楽して生きたいよね。自分中心だよね。けどさ、手伝ってって言ったからには、最後まで付き合ってくれるのが、セオリーなんじゃないかな…?これ、俺が間違ってる?俺の方が違う説?
神一郎は一人混乱し、眼鏡のブリッチに手をやった。混乱しつつも、何分もしていた作業だからか、しっかりと仕事はこなしていく。
やっと作り終えて、職員室へ向かう。校庭から聞こえるサッカー部の声や、吹奏楽部の演奏の音が学校に響いていた。それを聞くと青春を感じる。そして、そんな青春な空気を差し置いて、神一郎は職員室の扉をノックする。
「失礼します、1年不死原です。厳里(みねさと)先生はいらっしゃいますか?」
神一郎は、職員室を見渡す。厳里先生がどこからともなくやってきた。
「あれ、不死原か。それ中田に頼んだ資料か?中田はどうした?」
「はい、そーです。中田くんの手伝いをしてます」
「不死原は偉いな!じゃあ、これも中田とやってくれると助かる。二人だから下校時間前には終わるだろ」
神一郎は、さっきより多いプリントの束をもらった。その量に、眼鏡がずれ落ちる。
中田がいないからできません、とも言えない自分がむかつく。
「じゃあ、よろしく頼むな」
そう先生は言い残して、職員室の扉はピシャリと閉まる。
神一郎はしばらく職員室の扉を見つめていた。この状況に頭がついていっていないのだ。
ふと我に返り、自分が持ってるプリントを見る。
これ、一人でやるのか…。
神一郎は深いため息をはきながら、教室へと泣き泣き帰っていく。
そして作業が終わったのは、6時くらいだった。外は日が落ちかけている。
こんな時間まで残されることなんて滅多にない。ひどい。
神一郎は、怒り狂いながらも、水無月が待ってることを考え、急いで学校を出る。
水無月おこってるかな。今頃お腹空いて、倒れてたらどうしよう。
どんどん不安になってゆき、コンビニに走り込み、すぐさま買い物を済ませ、走り出す。しかし、神一郎は段差に足を引っ掛け盛大に転ぶ。
足に来る痛みが、時間差でやってくる。そこに一匹の猫がよってくる。
「にゃー」
神一郎が腕に力を入れて起き上がると、そこには水無月がいた。
「おー、水無月!!ごめんな、遅くなって!迎えに来てくれたのかー!ありがとうな」
嬉し涙がこみ上げる。神一郎は、水無月を持ち上げようとした。しかし、水無月はそれを拒否した。いつもは自分からとびのってくるのに、どうしたのだろうか。
水無月がまた、鳴き声をもらす。しかし、その鳴き声は図太くいつもの鳴き声じゃない。
「どうしたんだ?何かあったのか?」
水無月は何も言わずに、進みだした。神一郎はそのあとをついていく。
状況が理解できない。遅くなって、拗ねてるわけじゃなさそうだし、公園でなにかあったのかな。猫と喋れたら、全部解決なんだけどな。
神一郎たちは、公園についた。するとそこには強面の二人のヤンキーが、小学生くらいの男の子の胸ぐらを掴んでいる。何やら揉めているようだ。
「な…、なにしてるんですか!!」
なになにこの状況。神一郎は思わず眼鏡のブリッチに手を当てる。
怖い…けど、男の子の方が怖いはずだ。
男の子の顔には大きな殴られたような跡があった。唇も切れている。
神一郎の目には涙が浮かんだ。怖いからでもあるが、一番は男の子が可哀想と思ったからだ。自分がもっと早くここに来ていれば、男の子は殴られなかったかもしれない。そう考えると胸が傷んでしょうがない。
神一郎は、ヤンキーを睨みつける。
「あぁ?お前コイツの家族かなんか?コイツ生意気なんだよ、お前にも責任とってもらおうか?」
神一郎は手に持っていた牛乳をぽろりと落とす。
怖いけど負けるな。大丈夫だ。
絶えず神一郎は、ヤンキーを見つめる。男の子が不安そうにこっちを見つめていた。神一郎は、ぐっと拳を握りしめた。
ヤンキーは、ゆっくりと神一郎の方へと歩みを進めた。ヤンキーの拳が高く掲げられる。殴られると思い、神一郎は目を瞑った。
『ゴンッ』
図太い音が静かな公園に響いた。
あれ、痛くない…。けど、すごい音がしたような…。
恐る恐る目を開けると、目の前の男が倒れていた。神一郎は自分の目を疑う。
「いてぇ…何するんすか!」
ヤンキーは声を荒らげだ。この男を殴ったのは、一緒にいた男だった。その男は牛乳パックの袋をとり、神一郎に手渡してくれた。
「死神、また後でな」
「え…?」
男はそう言って公園を離れた。
なんで、知らないやつが俺のニックネーム知ってんだよ!?驚きの連続なんだけど!?
神一郎は一瞬にして力が抜け、その場に座り込む。しばらく呆然としたが、ふと我に返る。
「あ、キミ大丈夫だった?顔腫れちゃってる…待ってて救急箱もってくるよ」
そう言ったのはいいものの、腰が抜けて歩けない。
「あはは、恥ずかしいな。ごめんね、彼奴等に何一つ言ってやれなかった」
「いや、吾輩としては十分楽しませてもらった。感謝する」
神一郎はキョトンとする。
すっごい、独特な話し方する子だな。今流行ってるのかな。
「吾輩は、ある人間をさがしていたのだ。今、其奴を見つけた」
男の子はポケットを探り始める。出てきたのはなんといい感じの銃…。
「え、それって銃!?」
神一郎は目を瞬いた。
どういうこと…?こんなアニメとかあったっけ?楓に後で聞こう。
「それっておもちゃだよね?」
「いや、本物である」
「え…いや、そんなまさか。この日本で銃なんか手に入らないし…なんかのアニメでしょ?ね?」
男の子は銃口を神一郎にむけた。今にも打ちそうだ。
いや、偽物ってわかってても、銃向けられると怖いんだけど。今の小学生って過激じゃない?
「赤き月の下、また会えることを願っているぞ死神」
でかい音が聴こえたと思ったら、頭に衝撃が走った。
何も見えない。ほんとに、撃たれたのか…?声も出ない…。今日はなんで、こんなについてないんだ……………。
よくもまぁ、毎日こんなことできるもんだよ。逆にこれは、自分のこと好きなんじゃないかと思う。いやこれ、好きでしょ。大好きでしょ。
なんて、変な妄想を膨らませつつ、ゴミを廊下にあるゴミ箱に放った。
そして、自分の席へ座りほっと息をつく。そして、時間割をスマホで確認する。神一郎は、時間割で唯一確認するのは、体育があるかないかだ。
なぜなら、クソつまんないから!あ、いやとても退屈な時間って言ったほうが正解かな。
神一郎は、今選択でバレーボールをとっている。そして、神一郎に掃除を押し付けた人たちも同じ種目だ。つまりは、いじめられる。
よくある体育いじめ的なやつならまだいいんだけど、俺のはちょっとまた違う。自分は、運動神経はいい方だ。だから、他の男子が俺を集中して狙っても、簡単にレシーブできてしまう。あと、仲間にわざとタックルされそうになっても、気配でなんとなく避けられる。そんなことを続けていたら、いつしかボールは一切自分に回ってこなくなった。
そこからは、退屈な時間の始まりだ。ただ、呆然と見ているだけの時間。たまに、こぼれ球を取れることはあるが、全くプレーさせてもらえない。サーブは唯一だれにも邪魔されずにプレーできるが、サーブだけだと物足りない。どうせならラリーが続いたほうが楽しい。
まぁ、こんな理由で体育がちょっと嫌なんだよね。
神一郎は、深くため息をついた。その日の体育は、想像してた通り、1ミリもプレーせずに終わった。
そして、時間は過ぎ帰りのホームルームを知らせるチャイムがなった。
先生が連絡ごとを事細かに話している。先生の連絡はいつも長いので、大抵は聞いてない。
「じゃあ、今日はきれいだから掃除無しで」
掃除がないことを確認した神一郎は、帰り支度を始める。すると、一人の男子生徒がこっちに近づいてきた。神一郎が顔を上げると、そこには学級委員の中田(なかだ)文康(ふみやす)がいた。
「ごめん…、神一郎くん、、。仕事手伝ってくれないかな…?どうせ、ひまだよね…?おねがい」
中田は申し訳無さそうにこちらを見つめる。実際は申し訳ない気持ちなんて、1ミリもないだろうが。中田はいつも神一郎が、虐められてるのにも関わらず何もしてこないし、その掃除をしている神一郎を見て、勝手に暇だと断言しているようだ。しかも、断らないことを知っている。
俺は困ってる人はほっとけない。
神一郎は眼鏡のズレを直し、中田に返事をした。その仕事内容はシンプルだった。資料のホチキスどめと、先生から進学の資料か手紙をもらってくるらしい。中田は資料が重いかもしれないから自分が取ってくると言って、教室を出ていった。神一郎は、教卓においてあった紙の束を持って、椅子に座り作業を始めた。
何枚かやるうちに、この作業が楽しくなってきた。けど、これをクラス全員分を作るのは流石に骨が折れそうだ。しかし、中田が帰ってくれば二人でやるから作業スピードは上がるだろう。
中田も重い資料取りに行ってくれたし、しっかりとやろう。けど、中田ちょっと遅いな。
そう思いつつ、作業の半分が終わり折り返し地点に入った。
そこへ、中田が資料を持って帰ってきた。その中田を見た神一郎は、なんか期待が外れたような心持ちになった。中田の手には、片手で持てる程度のプリントがあり、もう片方の手には携帯が握られ、誰かと話していた。
重いって言ってたのはどこのどいつ?しかも、遅かったのは電話してたせいなのかな。いや、今さっきかかってきたのかもしれない。俺らの先生は話が長いことで有名だから、捕まってたんだよきっと。
中田にそんな希望をのせ、神一郎は中田を見つめてみた。すると、視線に気づいたのか携帯をちょっと耳から離す。
「ホチキスどめはどう?順調?」
「今さっき、半分終わったとこかな」
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一方中田は、鞄をまとめだした。チャックの閉める音を聞いて、神一郎が顔を上げると中田は帰るモーションに入っていた。
え…、これ手伝ってくれない感じ?二人でやって、時短とかじゃないの?さっき、めっちゃ感動したのに、なにそれ。
「あ、そーだ」
中田が動きを止めて、こっちを向く。
あ、そーだよね、手伝ってくれるよね。
だが、中田は何度も神一郎の思いを簡単に裏切っていく。
「ホチキスどめ終わったら、職員室にいる先生に預けといてね、じゃあ僕はお先に!」
そう言って、中田は教室から姿を消した。神一郎は去りゆく中田に何も言えなかった。いや、あえて何も言わなかった。神一郎の目には悔し涙があった。
そーだよね、学級委員の中田も所詮は人間だ。楽して生きたいよね。自分中心だよね。けどさ、手伝ってって言ったからには、最後まで付き合ってくれるのが、セオリーなんじゃないかな…?これ、俺が間違ってる?俺の方が違う説?
神一郎は一人混乱し、眼鏡のブリッチに手をやった。混乱しつつも、何分もしていた作業だからか、しっかりと仕事はこなしていく。
やっと作り終えて、職員室へ向かう。校庭から聞こえるサッカー部の声や、吹奏楽部の演奏の音が学校に響いていた。それを聞くと青春を感じる。そして、そんな青春な空気を差し置いて、神一郎は職員室の扉をノックする。
「失礼します、1年不死原です。厳里(みねさと)先生はいらっしゃいますか?」
神一郎は、職員室を見渡す。厳里先生がどこからともなくやってきた。
「あれ、不死原か。それ中田に頼んだ資料か?中田はどうした?」
「はい、そーです。中田くんの手伝いをしてます」
「不死原は偉いな!じゃあ、これも中田とやってくれると助かる。二人だから下校時間前には終わるだろ」
神一郎は、さっきより多いプリントの束をもらった。その量に、眼鏡がずれ落ちる。
中田がいないからできません、とも言えない自分がむかつく。
「じゃあ、よろしく頼むな」
そう先生は言い残して、職員室の扉はピシャリと閉まる。
神一郎はしばらく職員室の扉を見つめていた。この状況に頭がついていっていないのだ。
ふと我に返り、自分が持ってるプリントを見る。
これ、一人でやるのか…。
神一郎は深いため息をはきながら、教室へと泣き泣き帰っていく。
そして作業が終わったのは、6時くらいだった。外は日が落ちかけている。
こんな時間まで残されることなんて滅多にない。ひどい。
神一郎は、怒り狂いながらも、水無月が待ってることを考え、急いで学校を出る。
水無月おこってるかな。今頃お腹空いて、倒れてたらどうしよう。
どんどん不安になってゆき、コンビニに走り込み、すぐさま買い物を済ませ、走り出す。しかし、神一郎は段差に足を引っ掛け盛大に転ぶ。
足に来る痛みが、時間差でやってくる。そこに一匹の猫がよってくる。
「にゃー」
神一郎が腕に力を入れて起き上がると、そこには水無月がいた。
「おー、水無月!!ごめんな、遅くなって!迎えに来てくれたのかー!ありがとうな」
嬉し涙がこみ上げる。神一郎は、水無月を持ち上げようとした。しかし、水無月はそれを拒否した。いつもは自分からとびのってくるのに、どうしたのだろうか。
水無月がまた、鳴き声をもらす。しかし、その鳴き声は図太くいつもの鳴き声じゃない。
「どうしたんだ?何かあったのか?」
水無月は何も言わずに、進みだした。神一郎はそのあとをついていく。
状況が理解できない。遅くなって、拗ねてるわけじゃなさそうだし、公園でなにかあったのかな。猫と喋れたら、全部解決なんだけどな。
神一郎たちは、公園についた。するとそこには強面の二人のヤンキーが、小学生くらいの男の子の胸ぐらを掴んでいる。何やら揉めているようだ。
「な…、なにしてるんですか!!」
なになにこの状況。神一郎は思わず眼鏡のブリッチに手を当てる。
怖い…けど、男の子の方が怖いはずだ。
男の子の顔には大きな殴られたような跡があった。唇も切れている。
神一郎の目には涙が浮かんだ。怖いからでもあるが、一番は男の子が可哀想と思ったからだ。自分がもっと早くここに来ていれば、男の子は殴られなかったかもしれない。そう考えると胸が傷んでしょうがない。
神一郎は、ヤンキーを睨みつける。
「あぁ?お前コイツの家族かなんか?コイツ生意気なんだよ、お前にも責任とってもらおうか?」
神一郎は手に持っていた牛乳をぽろりと落とす。
怖いけど負けるな。大丈夫だ。
絶えず神一郎は、ヤンキーを見つめる。男の子が不安そうにこっちを見つめていた。神一郎は、ぐっと拳を握りしめた。
ヤンキーは、ゆっくりと神一郎の方へと歩みを進めた。ヤンキーの拳が高く掲げられる。殴られると思い、神一郎は目を瞑った。
『ゴンッ』
図太い音が静かな公園に響いた。
あれ、痛くない…。けど、すごい音がしたような…。
恐る恐る目を開けると、目の前の男が倒れていた。神一郎は自分の目を疑う。
「いてぇ…何するんすか!」
ヤンキーは声を荒らげだ。この男を殴ったのは、一緒にいた男だった。その男は牛乳パックの袋をとり、神一郎に手渡してくれた。
「死神、また後でな」
「え…?」
男はそう言って公園を離れた。
なんで、知らないやつが俺のニックネーム知ってんだよ!?驚きの連続なんだけど!?
神一郎は一瞬にして力が抜け、その場に座り込む。しばらく呆然としたが、ふと我に返る。
「あ、キミ大丈夫だった?顔腫れちゃってる…待ってて救急箱もってくるよ」
そう言ったのはいいものの、腰が抜けて歩けない。
「あはは、恥ずかしいな。ごめんね、彼奴等に何一つ言ってやれなかった」
「いや、吾輩としては十分楽しませてもらった。感謝する」
神一郎はキョトンとする。
すっごい、独特な話し方する子だな。今流行ってるのかな。
「吾輩は、ある人間をさがしていたのだ。今、其奴を見つけた」
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「え、それって銃!?」
神一郎は目を瞬いた。
どういうこと…?こんなアニメとかあったっけ?楓に後で聞こう。
「それっておもちゃだよね?」
「いや、本物である」
「え…いや、そんなまさか。この日本で銃なんか手に入らないし…なんかのアニメでしょ?ね?」
男の子は銃口を神一郎にむけた。今にも打ちそうだ。
いや、偽物ってわかってても、銃向けられると怖いんだけど。今の小学生って過激じゃない?
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