CROWBAR〜あだ名死神の主人公が本当に死神になったとしたら?〜

さしみ

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転校生とは目立つのが定義である

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転校イベントというものは、あまりに残酷で人の人生を一瞬で無に返す。
神一郎は、とてつもない状況に立たされていた。目の前でにらみ合う二人。のけ者にされる自分。そんなカオスな空間で、俺はこうなった経緯について思い起こしていた。


神一郎とグレンは会話を交わしながら教室へと入った。そこにはきれいに着席している生徒と、教卓でこちらを見つめる先生がいた。神一郎の額には汗がつたう。
待ってグレンさん!?これ完全に遅刻じゃないですか。いや、君が普通に教室向かってたから、まだ大丈夫なのかと思ってたじゃん。確かにここまでくるのに、誰ともすれ違っていない。その瞬間に気づけばよかった。
神一郎は必死にグレンに訴えかける。しかし、彼は顔色一つ変えず自分のベストプレイスへと向かっていく。つまりは自分の机にだ。
おいおい、俺を置いていくんじゃない。先生めっちゃこっち見てるんだけど。どーすればいいのこの状況。
ずれた眼鏡を治し、一息をつく。
これ以上、周りからの鋭い視線を浴びるのは辛いので、神一郎は意を決して先生に事情を話す。
「君が、転校生…?ほんとに…?」
ざっとクラスの人たちが騒ぎ出す。思わず眼鏡のブリッチに手をかけてしまう。
そんなに信じてもらえないもんなんですかね。俺って転校生って顔してない?そーいうことかな?
「まぁ、後で確認とるから、一応はグレンの隣の席座れ」
自分はコクリと頷き、グレンの隣に座り込む。そして大きく息を吐く。緊張なのか、人の圧力なのか、教室は生きた心地がしなかった、、。

その日の反省やら弁を述べるとすれば、なんかこの世界遅れてね……?だった。そう思った訳は、授業の内容にあった。国語や数学は中学レベルだし、格闘の授業は先生が格闘のコツや技を説明し、練習して最後に対戦って感じだった。高校入試に向けて猛勉強していた自分にとっては、授業は全くもって退屈だった。格闘の方は、今日が初めてだからと言われ見学だったので、楽しみようがなかった。

放課後になり、神一郎は帰り支度をそそくさと始める。そこへ、Theイケメンという男子が近づいてきた。
「今日の授業はどうだったかな?」
学級委員か何かなのだろうか。周りからの人望も熱いようで、女子たちは黄色い声援をあげている。
「まあまあでしたね」
神一郎はそっと眼鏡のブリッチに手を当てる。
俺はイケメンが苦手だ、イケメンは2つの属性にわかれる。実際に中身までイケメンな場合と、顔面とは裏腹に中身は腹黒いという2つ。俺はこの彼は、後者だと思う。ただの勘だが、一度思ってしまったことは簡単には頭から離れない。
「あ、僕の名前言ってなかったね。僕の名前はセレス。このクラスの学級委員だよ。よろしくね」
「よろしくおねがいします、、」
実際はよろしくしたくないけれど、ここは周りの目があるので了承しておく。
「じゃあ、俺は…」
「おい、セレス」
ちょっとグレンさん?話に割り込まないでもらえます?今帰ろうとしてたでしょーが。
グレンはセレスを睨みつけていた。親の敵みたいな顔をしている。
「シンイチローくん、まだ学校の中ちゃんと見てないよね?案内してあげるよ」
「おい、無視してんじゃねーよ」
神一郎は、終始無言を貫く。
いや、なんで帰らしてほしいんだけど。
「じゃあ、行こっか」
セレスは神一郎に手を差し伸べる。神一郎は、眼鏡のブリッチを触る。
何も言ってないのに、行く前提なの嫌なんだけど。グレンといいセレスといい、こっちの世界は変なやつしかいないのかな…。
すると、グレンが神一郎の手をとった。
「これは俺のだ。手だすんじゃねぇ」
その光景に驚いたのか、セレスがやっとグレンの方を向く。
「あぁ、いんたんだグレン。影が薄くて気がつかなかった」
「てめぇー、喧嘩売ってんのか?」
「そんなことないよ、事実をいったまでだよ」
「この野郎…」
今にもグレンはセレスに殴り込もうとしていた。神一郎はこの空間が耐えられず、思いっきり音をたてて立ち上がった。椅子が嫌な音をあげる。そして、神一郎は廊下側の大人しめ男子に話しかける。
「ねぇ、トイレってどこにある?」
「えっ!?ぼ、ぼく…?えーと、ここをでて真っ直ぐ行ったとこにありますけど…」
「ありがと」
神一郎は大人しめ男子に笑顔を向け、喧嘩二人組みにも笑顔を向け教室をあとにした。神一郎は学んだのだ、喧嘩してる人を仲裁しようとしても、無視されるということに。そして、考えついたのがその場からの脱出。話の内容が俺に関するものなので、その対象がどっかに行ったら、確実に状況は一変するだろう。
長い廊下の先に、ちゃんとトイレがあった。内装は少しきれいだった。築何年みたいなボロい感じではなく、少し安心した。けれど、本当に用を足したいわけではなかったので、神一郎は鏡の前で立ち止まる。そして、改めて自分の顔を見た。相変わらずいるのは白い目をした自分だった。その白の輝きは、これが夢ではないと物語っていた。
「なんで、ここにいるんだろうな…」
純粋に思った。トイレではなく、普通に帰ればよかったと後悔している。謎に見えはって、立っちゃったから焦って選択を間違ったのかもしれない。いや、確実に間違った。
神一郎は何もせずトイレを出て、あの喧嘩二人組の教室へと帰ってゆくのであった。

    
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