最強騎士は料理が作りたい

菁 犬兎

文字の大きさ
12 / 144
第一章

アイラは宿舎を偵察したい

しおりを挟む
はじめまして、こんにちは?
私はアイラと申します。

実は私の大好きな兄が過ごしている宿舎になんと不届きものが住み出したと、小耳に挟みまして。

私、今まであそこに住み着く害虫を何度も何度も駆除して参りましたのよ?そしてやっと一掃できホッとしたのもつかの間の今回のお話。本当にキリがありませんわ?

「げぇ!!アイラちゃん」

ん?今げぇ?とか、仰いました?ギャド様?貴方私よりちょっとばかり偉いからって調子に乗ってると下克上起こしますわよ?

「お久しぶりですギャド様?最近はこちらはお変わりなく?」

「ああ。至って平和だぜ?(束の間の平和だった)」

「そうなのですか?私、新しい方がこちらに入られたとお聞きしましてご挨拶に来たのですが?」

あら?ギャド様顔色が優れませんわあら大変?変に隠し立てしたりなさるからですわよ?

「あのな?アイラちゃん。何度も言うがここは騎士の宿舎なんだ。貴族の御息女がこんな所来ちゃ駄目だ」

「あら?でも皆様とてもお強いじゃないですか?いざとなれば騎士様達が私を助けてくれるでしょう?」

甘いですわギャド様。私に口で勝とうなんて百年早いですわよ?貴方の頭はその筋肉と同じですのに。ふふふ。

「あれ?ギャドさん何してるんですか?」

「げ!ティファ」

「昼食用意出来ましたよ?お客様ですか?」

ーーーーな!!何なのこの女!めっちゃ美・・・いいえ?決して美人だなんて思っておりませんわよ?この程度の顔の人間ごまんとおりますわ。ありきたりな顔ですわ!

「ああ。この子はアイラ。ここで勤める騎士の妹なんだが。とりあえず食堂へ行くか?」

「そうですね。皆さんお待ちですし」

でも噂は本当でしたわ。
宿舎に女が住み着いたと私のファン一号が知らせて来なかったら私ずっと見過ごす所でしたわ!褒めて差し上げてよ?ファン一号!

「アイラさんはご飯はおすみですか?」

「ええ。お気遣いなく」

貴方の作ったご飯など誰が食べるものですか!愚民が!そうやって私に取り入りお兄様に近付こうという魂胆は見え見えですわよ?今すぐこの宿舎から消え去りなさい害虫が!!

「あのぉ。何かあの人目がいっちゃってませんかね?大丈夫なんですか?ヒソヒソ」

「気にすんな。いつもあんな感じだ。平常運転だ。ヒソヒソ」

あら?食堂に行くにつれ何だかとても良い香りがしますわね?この女もしかしてプロの料理人なのかしら?

「今日は何なんだ?」

「ふっふっふ!!今日は遂に作りましたよ?今まで作りたくても作れなかった贅沢品!」

「ーーーーーーな!!」

「げぇ!!アイラ!何で!」

「ちょっとフィクス?何でアイラがここにいるの?」

外野がやかましいですが、私はそれどころではありませんわ!だって、だって!今、私の目の前にあるそ・れ・はまさしく!!

「ジャーン!ダブルチーズハンバーグでーす!」

きゃあああああああああああああああああ!!!!!

「ダブル?どこがダブル?」

「外側にもチーズが乗ってますが、お肉の中にも違う種類のチーズが入ってます。肉を割るとですね?とろ~とトロトロチーズが溢れ出てくるんですよ?」

わ、わ、わ、私。私ハンバーグとチーズだけは目がないんですわ!その二つが今!まさに私の目の前に鎮座しておられます!!これは何の試練なの?

「今日はメインがかなり濃厚なのでハーブサラダと鶏で出汁をとった野菜スープです。パンはガーリックバターを塗って焼いたのを添えました。勿論普通のもありますからお好みで」

うぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!!!間違いない組み合わせだわ!!失敗しないやつぅぅぅ!!

「アイラ。お前も食べて行くか?」

「フィクス!!妹だからって甘やかすな!誰の所為でこの宿舎に求人が来なくなったと思ってるんだ!!」

「その代わり。これを食べたら絶対にティファをクビにはしないからね?」

はぐぁ!!さ、流石ですわお兄様。
先手を打って来るとは・・・分かりました。その勝負受けて立ちますとも。あいにく私昼食はしっかり済ませて来ましたので。


「お気遣いなくどうぞ皆様私に構わずお召し上がり下さいませ?」

「サッサと食おう。俺お腹ペコペコだぜ」

「そうか?じゃあ・・・」

「あーーやっとティファのご飯が食べられる」


・・・・・・・・。ちょっと。本当に食べますの?私を放ったらかしにして?え?もうお肉を切ってしまいますの?お待ちになって?私まだ心の準備が・・・。

「「「「おおおおーーー!!」」」」

ひぇぇぇぇえ!!チーズがぁ!チーズの海がぁぁ!!
あ!そんな!肉汁が溢れてる!チーズと絡まってますわよぉぉ!!

「すげぇうまそぉ。いただきまーす」

いやぁぁぁぁ!!食べないでええええ!!

「あ。俺一瞬トリップしたわ。ヤベェこれ」

「あーーーーティファ様有難う」

「神に感謝したいよね」

「週一これだったら俺無敵になれるんじゃないかな?」

食べた。この人達本当に食べたわ。
私が目の前にいるのに。
お兄様。私の大好物だって知っていますのに。

「皆さん大袈裟ですねぇ。じゃあ私も頂きます」

これは重大な問題ですわ。
今までに類を見ない大きな害虫がお兄様の宿舎に住み込んでしまいました。私、わたくし、絶対この女を許しません!例えば手をついて謝られても私にした仕打ちの報いを受けて頂きますわ!!

「アイラさんはハイトさんの友人さんの妹さんなんですよね?今日はお兄さんに会いに来たんですか?」

「ティファ。いい加減覚えて、俺フィクスだよ」

「ああ、そうです!フィクスさん?に、会いに?」

「さぁ?どうでしたかしら」

妹の好物を知っていて、それをくれない兄など兄じゃないかも知れませんわね?私これからの兄との関係、見直しますわ。

「アイラさんはチーズはお好きですか?」

「・・・ええ。大好物ですわね?」

世界各国のチーズを取り寄せ保管しているぐらいには好物ですわよ!!でも、でも!!今まで一度だって、とろけた状態のチーズなんて食べた経験ないのよぉぉぉぉぉ!!

「ハンバーグに使っているチーズは溶かして食べるのに、とても適したチーズを使っているんです。これはチーズを生産している農家の人が編み出した農民の食べ方なんですよ?」

・・・・・・だからなんだよ!!!

「きっとアイラさんはこのチーズを食べた事無いですよね?こんな食べ方はこちらでは、しないようですから」

「あ、あの。ティファ・・・その辺りで(勘弁してあげて)」

何でしょう?身体が勝手にプルプル震えてきましたわ。
きっとあれですわね?武者震い。武者震いですわ!!
この女と戦う。その戦いの準備を今、私は始めているのです!!!

「アイラさん」

「さっきから何度も何度もなんっ・・・!?」

「はい。あーーーーん?」

あーーーーん。
もぐ。モグモグモグ。ゴクリ。

「昼食は済まされたみたいですが、少しくらいなら。どうです?美味しくありません?」

「・・・・・いきなりでよく分からなかったですわ」

「そうですね?はい。あーーーん?」

とりあえず・・・・・・・・貴方は採用ですわ!!!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

【完結】姉は聖女? ええ、でも私は白魔導士なので支援するぐらいしか取り柄がありません。

猫屋敷 むぎ
ファンタジー
誰もが憧れる勇者と最強の騎士が恋したのは聖女。それは私ではなく、姉でした。 復活した魔王に侯爵領を奪われ没落した私たち姉妹。そして、誰からも愛される姉アリシアは神の祝福を受け聖女となり、私セレナは支援魔法しか取り柄のない白魔導士のまま。 やがてヴァルミエール国王の王命により結成された勇者パーティは、 勇者、騎士、聖女、エルフの弓使い――そして“おまけ”の私。 過去の恋、未来の恋、政略婚に揺れ動く姉を見つめながら、ようやく私の役割を自覚し始めた頃――。 魔王城へと北上する魔王討伐軍と共に歩む勇者パーティは、 四人の魔将との邂逅、秘められた真実、そしてそれぞれの試練を迎え――。 輝く三人の恋と友情を“すぐ隣で見つめるだけ”の「聖女の妹」でしかなかった私。 けれど魔王討伐の旅路の中で、“仲間を支えるとは何か”に気付き、 やがて――“本当の自分”を見つけていく――。 そんな、ちょっぴり切ない恋と友情と姉妹愛、そして私の成長の物語です。 ※本作の章構成:  第一章:アカデミー&聖女覚醒編  第二章:勇者パーティ結成&魔王討伐軍北上編  第三章:帰郷&魔将・魔王決戦編 ※「小説家になろう」にも掲載(異世界転生・恋愛12位) ※ アルファポリス完結ファンタジー8位。応援ありがとうございます。

処理中です...