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運命を求めた男(雄大視点)
運命を求めた男16
しおりを挟む「おはよう。カケ。……あれ、また髪濡れてるけど、昨日シャワー浴びてなかったっけ」
「……寝癖があまりにひどかったから、水をかけて直した」
「えー、直さなくて良かったのに。俺、カケの芸術的な髪型見てみたかった。何で起こしてくれなかったの?」
「誰が好き好んで、んなみっともない姿見せるか。阿呆」
「しかし……昨日は楽しかったね。本当」
--翌朝。俺は何事もなかったようにカケに接することにした。
「お泊まり会って素敵だね。俺、小っちゃい頃こういうことしたことないから、何か新鮮だった。またやろうよ、カケ。ね?」
まだ、カケと過ごせる時間は、一年半残っている
その時間を、失いたくない一心だった。
「ああ、じゃあ……半年後にな」
「ちょ、それ、先過ぎ!! カケの寮部屋、予約待ちの高級レストラン並みじゃん!!」
「だから、俺は忙しいんだよ。嫌なら、他の奴から泊めてもらうんだな」
「うう……共に一夜を過ごして、一緒に朝日を見ようと約束していた俺に対して、何という仕打ち。ひどいわ、カケ。私のことは遊びだったのネ!!」
「ああ。遊びだな。……一緒に、格闘ゲームしたし」
「そういう遊びじゃない~」
カケも、そんな俺の気持ちを察してくれたのか、いつもと同じように振る舞ってくれた。
二人で朝ごはんを食べ、学校の準備の為に一度別れる。
そのまま、また、いつもと同じ一日が始まる………はずだった。
「……どうしたの? カケ。今日、調子悪いの?」
「……ああ、ちょっと………具合が悪いみたいだ」
「大丈夫? 俺、肩貸すから、保健室一緒行こう? ね?」
「いや………今日はやっぱり早退させてもらうことにするわ。ありがとな。雄大。悪いけど、次の教科の先生に説明しといてくれ」
「……うん、分かった。本当に、大丈夫なの?」
「ああ、大丈夫……っ」
「危ないっ!」
ふらついた体を支えた手は、思い切り振り払われた。
「……カケ?」
「……その……悪い……ちょっとマジ今、気持ち悪くて……何か変だ。ごめん」
「あ……いや、大丈夫だよ。気にしないで」
「悪い……」
去って行くカケの背中を見つめながら、唇を噛んだ。
「……余計なこと、言わなきゃよかった」
どうしよう………俺が昨日余計なことを口にしたせいで、カケが体調崩すくらい、苦しんでいる。
それに……嫌われて、しまったかもしれない。
カケは優しいから口にはしないけど……触れられることすら嫌なくらい、本当は俺のことを気持ち悪いと思っているのかもしれない。
カケが去った後の授業は、ほとんど死人のような状態で過ごした。
ただただ、昨日の自分の愚かな発言を悔いていた。
こんなことになるなら……想いを全て隠し通せばよかった。
「カケなら、想うことだけはきっと許してくれる」と、心のどこかで思ってた。……カケの優しさに甘えてた。
その結果がこれだ。
残り一年半、友達でいられる権利すら、失った。
……馬鹿だ………俺は大馬鹿だ……。
気がつけば、いつの間にか放課後になっていた。
よろよろと立ち上り、そのまま覚束ない足取りで寮に戻ろうとした時、スマホが振動した。
……また、糞実家からの仕事の要請か。
舌打ちをしながらスマホに視線を落とし、目を見開いた。
………カケだ。
え、嘘?
「……珍しいね。カケから電話してくれるなんて。体調はもう大丈夫?」
高揚する気持ちを必死に抑え、出来る限り平静な態度で電話に出る。
……まだ、喜ぶなよ。俺。もしかしたら、カケからの絶縁コールかもしれないじゃないか。
『……ああ。もう、大分良くなった。ありがとう--雄大』
電話口のカケの声は、いつも通りの優しいもので、ちょっと泣きそうになった。
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