隠れΩの俺ですが、執着αに絆されそうです

空飛ぶひよこ

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運命を求めた男(雄大視点)

運命を求めた男17

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『今日……支えてくれた手を振り払ったこと、改めて謝りたくて……ごめんな。本当。具合が悪くて、なんか気ぃ立ってたみたいだ』

「そんなの全然気にしなくて良いのに~。大丈夫だよ、カケ。俺、カケのこと滅茶苦茶大好きだから、そのくらいじゃカケのこと、嫌いになったりしないよ」

 先程まで死にかけなくらい落ち込んでいたのも棚に上げ、調子の良いことを口にする
 ……調子が良過ぎて、余計な本音まで出てきた。これ以上カケを警戒させるようなこと言ってどうする。俺。

『……んなこと、心配してねぇよ。馬鹿』

 だけど、カケの反応は変わらず優しいもので。
 ホッとすると同時に、少し違和感を抱いた。

「………カケ?」

『……うん?』

 何だか声が少し、いつものカケと違う。
 ……掠れて、ちょっとだけ震えてる。

「あの、さ……勘違いかもしれないけど………もしかしてカケ、今泣いてたりする?」

 俺の問いに、カケは何も答えなかった。 

『……なあ、雄大』

「うん」

『……馬鹿なこと、言っても良いか?』

「いいよ。何でも言って」

『俺さ………これからも、ずっと、お前とダチでいたい』

「……………」

 ……これは、牽制なんだろうか。

『……課題を半分ずつ分担して写しあったり、一緒にゲームをしたり、二人で夜に枕並べて話したり………そんなちょっとしたことが、楽しくて仕方ない今の俺達の関係が、じいさんになるまで続けば良いのにな……って思うんだ』

 暗に、だから、それ以上の関係を望んでくれるなと。頼むから昨日のような真似はやめてくれと。……そう言われてるんだろうか。
 だけど、単にそう言い切るには、カケの声はあまりに苦しそうで。切なげで。
 
 ……求め、られている気がするのだ。
 泣く程切実に……友達としての、俺を。

「………俺はさ」

 口から出た言葉は、微かに掠れ、震えていた。

『……………うん』

「俺は………カケが俺の隣にいる限り、ずっとカケの友達でいるよ」

 カケが俺を望んでくれるなら……傍にいて欲しいと思ってくれるなら。
 ……友達としてでも、ずっと隣にいれるのなら……俺は……。

『……隣に、いなくなったら?』

「……分かんない」

 分かんない。
 ……分かりたくない。
 だって……カケから嫌われたかもしれないってだけで、こんなに苦しくて辛くて死にたくなったのに。カケが本当にいなくなったら、俺はどうなっちゃうか、自分でも分かんない。
 ……きっとそうなれば、俺は……。

『……悪い。変なこと言ったな。忘れてくれ』

「カケ……俺はさ」

『--また明日な』

 俺の言葉を最後まで聞くことなく、カケは電話を切った。
 つーつーと切断音がなるスマホを耳に当てたまま、カケが聞かなかった言葉の続きを口にする。

「……俺はさ………カケがいなくなったら--いや、いなくなろうとした時点で、壊れてしまうかもしれない」

 残り一年半の猶予が、俺の理性をまだ今の状態に繋ぎ止めている。
 だけど、三年の3月になってしまえば………俺は、欲望のままにカケを傷つけてしまわない、自信がない。

 縛って。奪って。閉じ込めて。
 俺しか見られないように。俺のことしか考えられないように。
 ぼろぼろになるまでカケを壊して、俺専用に再構築したいという身勝手で残酷な願望すら、確かに俺の中には存在している。

 そうなってしまえば……「運命の番」に対する執着は、最早ストッパーにもならないかもしれない。

 カケが、好きだ。
 カケだけを、愛している。
 カケを手に入れられるなら……俺は、何でもする。

「………だけど、カケを傷つけたくもないんだ」

 スマホの通話画面を切りながら、唇を噛み締め、俯く。

 カケを、傷つけたくない。
 苦しめたくない。泣かせたくない。
 カケにはいつだって笑って……幸せでいて欲しい。
 カケを幸せにする為なら……俺は、何でもする。
 
 けして両立し得ない二つの願いに、胸が引き裂かれそうになる。

 愛する人を不幸にして、全てを奪うのか。
 愛する人を諦め、その幸福を願うのか。

 ……俺にはどうして、この二つの道しか存在しないんだろう。

 俺はただ……カケと一緒に幸せになりたいだけなのに。

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