隠れΩの俺ですが、執着αに絆されそうです

空飛ぶひよこ

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運命を求めた男(雄大視点)

運命を求めた男18

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「………ねぇ、カケ。友達としてなら、ずっと俺の傍にいてくれるの……?」

 何もない宙に向かって、問いかける。
 ……宮本を捨てることに、最早躊躇いはない。
 遅かれ早かれ、いつかはそうするつもりだった。……それが、数年早まっただけだ。
 オランダの大学に進学して、数年生活するくらいの貯金だってある。足りなかったとしても、俺の事業はネット環境さえ大丈夫ならどこででも続けられる。問題がお金だけならば、後からいくらでも補充しようはあるのだ。

 カケが許してくれるなら………俺は「友達として」カケの傍に居続けよう。
 溢れそうなこの想いも、何度だって殺してみせる。

「だからカケ………俺から、離れて行かないで」

 --教室に、俺以外誰もいないことを良いことに、俺はまた、一人声を殺して泣いた。


 翌日。登校して来たカケは、昨日以上に体調が悪そうだった。

「カケ、おはよう。……休まなくても大丈夫だったの? なんか昨日よりさらに顔色悪く見えるけど……」

「おはよう。もう大分体調は戻ったから大丈夫だ。……まあ、週末にぶっ倒れる可能性は高いけどな」

「そんな状態なら、無理せず休もうよ……! 俺、ちゃんとカケが休んだ時の分のノートまとめてるから。カケがいつでもノート写せるように」

 俺がどれ程心配しても、カケは苦笑いを浮かべて、首を横に降るだけだった。
 
「本当に大丈夫なの? 熱とかはない?」

 少し躊躇ってから、カケの額に手を延ばす。
 カケは一瞬びくりと体を跳ねさせたが、昨日のように俺の手を振り払うことはなかった。

「熱は……ないみたいだね」

「多分明日一日部屋で寝れば治るから……」

「なら良いんだけど……」

 俺と友達でいる為に、触れられることに対して湧き上がる嫌悪感を、必死に耐えてくれているのかもしれない。
 もしそうなら。………カケが友達でいたいと切望してくれるのなら、俺も、カケの気持ちに応えないと。


 それからもずっとカケは体調が悪そうだったが、体育以外は休むことなく授業に出続けていた。
 そんなカケを目で追ううちに、徐々に決意は固まっていった。
 昼休みになると、いつものように購買でパンを購入して、カケと一緒に植物園と向かう。

「……ねえ。カケ。昨日の電話のことだけどさ」

 封を開けないパンを握りしめながら、とうとう俺はそれを口にした。

「………悪い。雄大。俺、昨日は体調が悪くて精神も不安定になってて……」

 当然のように逃げに入るカケを無視して、話を進める。

「俺、あれから一晩考えたんだよね。カケから言われたこと。カケが一年半後、オランダに行ってしまっても……いや、その前だな。カケがオランダに行こうとした時に、俺はカケと今と同じように友達でいられるのかって」

 どれ程悩み、考えても、答えは変わらなかった。

「やっぱりさ……俺、無理だよ。俺は、今まで通り、友達でなんていられない」  

「…………」

「多分俺はそうなったら……カケとの関係を『壊す』」

 壊して………そしてカケを今以上に苦しめる。
 カケを、泣かせてしまう。

「だから、カケ。………俺も卒業したら、オランダに行くよ。カケと一緒に、行く。そうしたら俺はきっと、カケの友達のままでいれるから」
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