19 / 311
出ばるダサメガネの正体は③
しおりを挟む
あ、よくよく考えたら俺、神獣であるお犬様から直接山頂に招かれてるじゃん。獣人の崇拝対象であるお犬様が許可したんだから、ますますセネーバから山への立ち入りを咎められる筋合いねぇわ。
……あーあ。お犬様俺に【神獣の加護】的なのくれんかな。ステータス何度も確認したけど、残念ながらそういうスキルは増えてなかったんだよな。また会って仲良くなれたらくれるかな。
別にそれを何かに利用する気も公表する気もないけど……そういうスキルもらえたらお犬様と確かな絆があるような気がするじゃん。……本当にまた、会えるかな。
「……白銀の子犬って、それ……」
「種類までは知らんけど。すげぇ魔力だったし、多分フェンリルだと思う」
「フェンリルの実在を信じるなんて……いや、申し訳ありません。エドワード様にも年齢相応に子どもらしいところはあるんですね。少し安心しました」
……おい、なんだその生温い目は。ちょっと待て。何で俺がサンタクロースの実在を信じる子どもみたいな目で見られないといけないんだ。魔物がうじゃうじゃ生息しているんだから、フェンリルだって普通に存在してるだろう。
お犬様、いるもん! 俺、ちゃんと見たもん!
今すぐダンテを転移魔法でネーバ山に連れてって、お犬様のすごさを見せつけてやりたいいい! しないし、したとしてもお犬様と再会できるとは限らんけど! ……あ、なんかますます凹んできた。お犬様、会いたいよー……。
「……まあ、何にせよ。そういう方法で手に入れたからには、セネーバには文句は言わせん。で、ダンテ。これらは辺境伯領で栽培できると思うか?」
「できるでしょうね。ただこの芋なんかは、栽培方法によってはますます土地を痩せさせてしまうんで注意が必要ですが」
「連作障害のことか」
「おや、エドワード様はそんなことまでご存知なんですか」
「詳しくはないがな」
連作障害を起こさないよう色々実験が必要だと思っていたが、この調子ならば俺が介入しなくてもダンテが適切なやり方で栽培してくれそうだ。ありがたい。
「なら、これはネルドゥース芋、こっちがネルドゥース豆、これをネルドゥースソバとでも名付けて、辺境伯領に広めてくれ。この青い実は……そうだな。ネルの実とでも呼ぼうか。第一王子に、この件に関して包み隠さず報告しても構わないが、これらを辺境伯領外に出す前には必ず父上と相談してくれ。この条件さえ守ってくれれば、後は好きにしてくれて構わない」
「おや、これらの発見者がエドワード様であることを皆に知らしめなくて良いのですか?」
「父上が許可しないだろう。父上は俺の価値が王家に広まって、王宮で囲われることを恐れているからな。名声は全てお前と父上にやる。だが第一王子には必ず、俺がこれらを発見したことを伝えて欲しい」
第一王子クリストファーは、俺と同じ8歳。通常なら、そんな子どもに何ができると思うところだが、ダンテ曰く俺と変わらないくらいの聡明さを持つという。もしかしたら俺と同じ転生者か、もしくは天然の天才かもしれない。
たとえ発見者が俺であるという事実が公表されなくても、クリストファーさえそれを把握していれば、色々うまいこと動かしてくれるかもしれん。
「俺は将来セネーバと戦争になって、辺境伯領に被害がでる可能性を潰したい。その為に、セネーバと友好関係を築くことを望んでいるであろうクリストファー王子との繋がりが欲しい」
「……殿下の側近候補として推薦してみましょうか?」
「だから、それは父上が許さないって言ってるだろう」
「いくら辺境伯様でも王家の命令には逆らえないと思いますが」
「そもそも俺自身、王家に仕える気持ちはさらさらないんだ。俺が守りたいのは、この国ではなく辺境伯領だからな」
目的が一致しているから協力関係は結べるが、それでも俺とクリストファーは、互いに絶対的な味方にはなれない。
俺が辺境伯領さえ無事ならリシス王国が滅びても構わないと思っているように、クリストファーは王族である以上リシス王国の為なら辺境伯領を切り捨てる立場だ。
後で面倒くさいことにならないよう、その立場の違いは最初から明確にしておいた方がいい。
「どうせ5年後には俺も王子も王都の貴族学校に進学するんだ。直接交流するのはその時からでもいい。それまではダンテ、お前を通して互いに情報だけ交換しておきたい」
「その前に、王都の式典に参加されたりはなさらないのですか?」
「あの父上が俺を同伴させるわけないだろ」
俺はその理由が、俺を【国境の守護者】としてゴリゴリに縛りつけたいが故だと知ってるけど、傍から見たらこれも一種の虐待みたいなもんだよなー。何せ小さい頃から徹底的に他貴族との交流遮断されてたし。
他領の貴族なんか、俺が不義の子だから第一子でありながら父上から冷遇されてると思ってるんじゃねぇの? 実際は重過ぎる期待の裏返しなんだけどな。嬉しくねー。
俺の家庭教師になってしばらく経つダンテもそのことは重々承知してるのか、引きつった笑みを浮かべながらもそれ以上突っ込なかった。
「……それでは私が、クリストファー殿下との手紙を取り持ちましょう。恐らくあなた達は仲良くなれると思います。とてもよく似てらっしゃるので」
「うん。よろしくね」
……まあ、多分笑顔の裏で狐と狸の騙し合いをする関係になるんだろうなー。やっぱり俺の癒やしはお犬様だけだよ。あと、もうすぐ生まれる弟か妹。
嬉しそうに収穫物を抱えて、立ち去るダンテの背中が扉をくぐる瞬間丸まったのを半目で見送り、大きく深呼吸する。
さて、これで農業改革と王家に協力者をつくるのは、目処がついた。他に俺が出来そうなことは……。
「……とりあえず隙を見て、またネーバ山の頂上に行くことだけは確定だな」
やれることはまだまだある。
せいぜい足掻けるだけ、足掻いてみるか。
……あーあ。お犬様俺に【神獣の加護】的なのくれんかな。ステータス何度も確認したけど、残念ながらそういうスキルは増えてなかったんだよな。また会って仲良くなれたらくれるかな。
別にそれを何かに利用する気も公表する気もないけど……そういうスキルもらえたらお犬様と確かな絆があるような気がするじゃん。……本当にまた、会えるかな。
「……白銀の子犬って、それ……」
「種類までは知らんけど。すげぇ魔力だったし、多分フェンリルだと思う」
「フェンリルの実在を信じるなんて……いや、申し訳ありません。エドワード様にも年齢相応に子どもらしいところはあるんですね。少し安心しました」
……おい、なんだその生温い目は。ちょっと待て。何で俺がサンタクロースの実在を信じる子どもみたいな目で見られないといけないんだ。魔物がうじゃうじゃ生息しているんだから、フェンリルだって普通に存在してるだろう。
お犬様、いるもん! 俺、ちゃんと見たもん!
今すぐダンテを転移魔法でネーバ山に連れてって、お犬様のすごさを見せつけてやりたいいい! しないし、したとしてもお犬様と再会できるとは限らんけど! ……あ、なんかますます凹んできた。お犬様、会いたいよー……。
「……まあ、何にせよ。そういう方法で手に入れたからには、セネーバには文句は言わせん。で、ダンテ。これらは辺境伯領で栽培できると思うか?」
「できるでしょうね。ただこの芋なんかは、栽培方法によってはますます土地を痩せさせてしまうんで注意が必要ですが」
「連作障害のことか」
「おや、エドワード様はそんなことまでご存知なんですか」
「詳しくはないがな」
連作障害を起こさないよう色々実験が必要だと思っていたが、この調子ならば俺が介入しなくてもダンテが適切なやり方で栽培してくれそうだ。ありがたい。
「なら、これはネルドゥース芋、こっちがネルドゥース豆、これをネルドゥースソバとでも名付けて、辺境伯領に広めてくれ。この青い実は……そうだな。ネルの実とでも呼ぼうか。第一王子に、この件に関して包み隠さず報告しても構わないが、これらを辺境伯領外に出す前には必ず父上と相談してくれ。この条件さえ守ってくれれば、後は好きにしてくれて構わない」
「おや、これらの発見者がエドワード様であることを皆に知らしめなくて良いのですか?」
「父上が許可しないだろう。父上は俺の価値が王家に広まって、王宮で囲われることを恐れているからな。名声は全てお前と父上にやる。だが第一王子には必ず、俺がこれらを発見したことを伝えて欲しい」
第一王子クリストファーは、俺と同じ8歳。通常なら、そんな子どもに何ができると思うところだが、ダンテ曰く俺と変わらないくらいの聡明さを持つという。もしかしたら俺と同じ転生者か、もしくは天然の天才かもしれない。
たとえ発見者が俺であるという事実が公表されなくても、クリストファーさえそれを把握していれば、色々うまいこと動かしてくれるかもしれん。
「俺は将来セネーバと戦争になって、辺境伯領に被害がでる可能性を潰したい。その為に、セネーバと友好関係を築くことを望んでいるであろうクリストファー王子との繋がりが欲しい」
「……殿下の側近候補として推薦してみましょうか?」
「だから、それは父上が許さないって言ってるだろう」
「いくら辺境伯様でも王家の命令には逆らえないと思いますが」
「そもそも俺自身、王家に仕える気持ちはさらさらないんだ。俺が守りたいのは、この国ではなく辺境伯領だからな」
目的が一致しているから協力関係は結べるが、それでも俺とクリストファーは、互いに絶対的な味方にはなれない。
俺が辺境伯領さえ無事ならリシス王国が滅びても構わないと思っているように、クリストファーは王族である以上リシス王国の為なら辺境伯領を切り捨てる立場だ。
後で面倒くさいことにならないよう、その立場の違いは最初から明確にしておいた方がいい。
「どうせ5年後には俺も王子も王都の貴族学校に進学するんだ。直接交流するのはその時からでもいい。それまではダンテ、お前を通して互いに情報だけ交換しておきたい」
「その前に、王都の式典に参加されたりはなさらないのですか?」
「あの父上が俺を同伴させるわけないだろ」
俺はその理由が、俺を【国境の守護者】としてゴリゴリに縛りつけたいが故だと知ってるけど、傍から見たらこれも一種の虐待みたいなもんだよなー。何せ小さい頃から徹底的に他貴族との交流遮断されてたし。
他領の貴族なんか、俺が不義の子だから第一子でありながら父上から冷遇されてると思ってるんじゃねぇの? 実際は重過ぎる期待の裏返しなんだけどな。嬉しくねー。
俺の家庭教師になってしばらく経つダンテもそのことは重々承知してるのか、引きつった笑みを浮かべながらもそれ以上突っ込なかった。
「……それでは私が、クリストファー殿下との手紙を取り持ちましょう。恐らくあなた達は仲良くなれると思います。とてもよく似てらっしゃるので」
「うん。よろしくね」
……まあ、多分笑顔の裏で狐と狸の騙し合いをする関係になるんだろうなー。やっぱり俺の癒やしはお犬様だけだよ。あと、もうすぐ生まれる弟か妹。
嬉しそうに収穫物を抱えて、立ち去るダンテの背中が扉をくぐる瞬間丸まったのを半目で見送り、大きく深呼吸する。
さて、これで農業改革と王家に協力者をつくるのは、目処がついた。他に俺が出来そうなことは……。
「……とりあえず隙を見て、またネーバ山の頂上に行くことだけは確定だな」
やれることはまだまだある。
せいぜい足掻けるだけ、足掻いてみるか。
244
あなたにおすすめの小説
魔王の息子を育てることになった俺の話
お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。
「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」
現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません?
魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL
BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。
BL大賞エントリー中です。
この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜
COCO
BL
「ミミルがいないの……?」
涙目でそうつぶやいた僕を見て、
騎士団も、魔法団も、王宮も──全員が本気を出した。
前世は政治家の家に生まれたけど、
愛されるどころか、身体目当ての大人ばかり。
最後はストーカーの担任に殺された。
でも今世では……
「ルカは、僕らの宝物だよ」
目を覚ました僕は、
最強の父と美しい母に全力で愛されていた。
全員190cm超えの“男しかいない世界”で、
小柄で可愛い僕(とウサギのぬいぐるみ)は、今日も溺愛されてます。
魔法全属性持ち? 知識チート? でも一番すごいのは──
「ルカ様、可愛すぎて息ができません……!!」
これは、世界一ちんまい天使が、世界一愛されるお話。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
ユィリと皆の動画つくりました! お話にあわせて、ちょこちょこあがる予定です。
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
異世界にやってきたら氷の宰相様が毎日お手製の弁当を持たせてくれる
七瀬京
BL
異世界に召喚された大学生ルイは、この世界を救う「巫覡」として、力を失った宝珠を癒やす役目を与えられる。
だが、異界の食べ物を受けつけない身体に苦しみ、倒れてしまう。
そんな彼を救ったのは、“氷の宰相”と呼ばれる美貌の男・ルースア。
唯一ルイが食べられるのは、彼の手で作られた料理だけ――。
優しさに触れるたび、ルイの胸に芽生える感情は“感謝”か、それとも“恋”か。
穏やかな日々の中で、ふたりの距離は静かに溶け合っていく。
――心と身体を癒やす、年の差主従ファンタジーBL。
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。
★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
お兄ちゃんができた!!
くものらくえん
BL
ある日お兄ちゃんができた悠は、そのかっこよさに胸を撃ち抜かれた。
お兄ちゃんは律といい、悠を過剰にかわいがる。
「悠くんはえらい子だね。」
「よしよ〜し。悠くん、いい子いい子♡」
「ふふ、かわいいね。」
律のお兄ちゃんな甘さに逃げたり、逃げられなかったりするあまあま義兄弟ラブコメ♡
「お兄ちゃん以外、見ないでね…♡」
ヤンデレ一途兄 律×人見知り純粋弟 悠の純愛ヤンデレラブ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる