28 / 311
さよなら、大好きな親友
しおりを挟む
次の瞬間、お犬様の尻尾がぼわっと膨らんで直立した。
……うわ、これ猫だけじゃなくて、犬もなんのか。お犬様と出会って五年経つけど、これだけびっくりしたお犬様見んの初めてだわ。いいもん見た。
「ごめん、ごめん。びっくりさせちゃったねー。そこにお犬様のかわいいマズルがあったから、ついね」
ヘラヘラ笑いながら、宥めるようにその毛を撫でる。
俺がいなくなっても、お犬様の人生?犬生?は続いていくし、神獣とかめちゃくちゃ長生きそうだから、お犬様にとっては俺と過ごした時間なんてすぐ忘れてしまうような些細な時間なんだろう。
だけど少しでもお犬様に「勝手にキスした変な人間がいた」と俺のことを覚えていて欲しくて、ずっと肉球拒否されていたマズルの先にキスをしてやった。
「ちなみに今の、俺のファーストキスだから」
再びお犬様の尻尾がぼわっと膨らんで、思わず声をあげて笑ってしまった。
あー、もう、かわいいなあ。こんなかわいい生き物、他にいねーわ。
首根っこのあたりをぎゅっと抱きしめて、ぐりぐりと頬ずりをする。
「ねえ、お犬様……お犬様が俺のことどう思ってるかわからないけど、俺にとってお犬様は生まれて初めてできた友達なんだ」
「…………」
「生まれて初めての友達で、多分最初で最後の親友」
多分こんなふうに心を許せる相手は他に現れない。
原作エドワードはアストルディアと親友になったと前世妹は言っていたけど、将来故郷を滅ぼされたり、片腕を斬られたり、果ては殺される可能性が高いとわかっている相手と、そこまで打ち解けられるとは思えない。
アストルディア以外の人間だって無理だ。俺は原作が始まる頃になるまで、他の誰かに心を許せるようになるとは思えないから。
原作始まる頃って、40前くらいか? その年になったら、多分そこから心許せる親友見つけるってなかなか難しいよな。その時点で原作通りメンヘラ拗らせてる可能性大ならなおさら。
やっぱお犬様だけだ。神獣という、色んなしがらみを超越した特別な種族だから、俺はこんなに素直になれた。一緒にいて、こんなに幸せだと思えた。
お犬様にとっては大したことがないかもしれないこの五年間が、俺にとってはどうしようもないくらい宝物なんだ。
「お犬様が俺のことを忘れちゃっても……俺は一生お犬様のこと忘れない。お犬様のことが大大大好きだから」
「…………」
「……お犬様?」
抗議するように唸ったお犬様は、俺と同じくらいまで成長した体躯で俺を押し倒すと、そのままベロリと俺の唇を舐めた。
……何これ、仕返しのつもり? 激スーパーきゃわわなんですが。
してやったりな感じで、尻尾めちゃくちゃふりふりしてるし!
「あー、もう、お犬様! 愛してる!」
マズルにはもうしないけど、ぎゅうとその体を抱きしめてあちこちにキスを落とす。
大好き。大好き。大好き。愛してる。
……でも、ばいばい。
春まではまだ少し時間はあるけど、俺はもう次の約束はできないだろう。もう、お犬様とは二度と会わない。
だって、もし次会ったら、俺はきっとお犬様をさらっちゃう。俺のろくでもねえ悪役人生に付き合わせちゃう。
お犬様には、今まで通り伸び伸び自由に過ごして欲しいから。すごくすごく嫌だけど、ここでさよならするしかないんだ。
……それでも。
たとえ、何十年先だとしても、全てのフラグを折ることかできた俺が、もう一度お犬様に会うことができたとしたら。
「その時はまた……友達になってね。お犬様」
お犬様と一緒に生きられる未来があるって、信じてもいいかな?
俺はそれだけを希望に、ろくでもねえ悪役人生を必死に生き抜くからさ。
……うわ、これ猫だけじゃなくて、犬もなんのか。お犬様と出会って五年経つけど、これだけびっくりしたお犬様見んの初めてだわ。いいもん見た。
「ごめん、ごめん。びっくりさせちゃったねー。そこにお犬様のかわいいマズルがあったから、ついね」
ヘラヘラ笑いながら、宥めるようにその毛を撫でる。
俺がいなくなっても、お犬様の人生?犬生?は続いていくし、神獣とかめちゃくちゃ長生きそうだから、お犬様にとっては俺と過ごした時間なんてすぐ忘れてしまうような些細な時間なんだろう。
だけど少しでもお犬様に「勝手にキスした変な人間がいた」と俺のことを覚えていて欲しくて、ずっと肉球拒否されていたマズルの先にキスをしてやった。
「ちなみに今の、俺のファーストキスだから」
再びお犬様の尻尾がぼわっと膨らんで、思わず声をあげて笑ってしまった。
あー、もう、かわいいなあ。こんなかわいい生き物、他にいねーわ。
首根っこのあたりをぎゅっと抱きしめて、ぐりぐりと頬ずりをする。
「ねえ、お犬様……お犬様が俺のことどう思ってるかわからないけど、俺にとってお犬様は生まれて初めてできた友達なんだ」
「…………」
「生まれて初めての友達で、多分最初で最後の親友」
多分こんなふうに心を許せる相手は他に現れない。
原作エドワードはアストルディアと親友になったと前世妹は言っていたけど、将来故郷を滅ぼされたり、片腕を斬られたり、果ては殺される可能性が高いとわかっている相手と、そこまで打ち解けられるとは思えない。
アストルディア以外の人間だって無理だ。俺は原作が始まる頃になるまで、他の誰かに心を許せるようになるとは思えないから。
原作始まる頃って、40前くらいか? その年になったら、多分そこから心許せる親友見つけるってなかなか難しいよな。その時点で原作通りメンヘラ拗らせてる可能性大ならなおさら。
やっぱお犬様だけだ。神獣という、色んなしがらみを超越した特別な種族だから、俺はこんなに素直になれた。一緒にいて、こんなに幸せだと思えた。
お犬様にとっては大したことがないかもしれないこの五年間が、俺にとってはどうしようもないくらい宝物なんだ。
「お犬様が俺のことを忘れちゃっても……俺は一生お犬様のこと忘れない。お犬様のことが大大大好きだから」
「…………」
「……お犬様?」
抗議するように唸ったお犬様は、俺と同じくらいまで成長した体躯で俺を押し倒すと、そのままベロリと俺の唇を舐めた。
……何これ、仕返しのつもり? 激スーパーきゃわわなんですが。
してやったりな感じで、尻尾めちゃくちゃふりふりしてるし!
「あー、もう、お犬様! 愛してる!」
マズルにはもうしないけど、ぎゅうとその体を抱きしめてあちこちにキスを落とす。
大好き。大好き。大好き。愛してる。
……でも、ばいばい。
春まではまだ少し時間はあるけど、俺はもう次の約束はできないだろう。もう、お犬様とは二度と会わない。
だって、もし次会ったら、俺はきっとお犬様をさらっちゃう。俺のろくでもねえ悪役人生に付き合わせちゃう。
お犬様には、今まで通り伸び伸び自由に過ごして欲しいから。すごくすごく嫌だけど、ここでさよならするしかないんだ。
……それでも。
たとえ、何十年先だとしても、全てのフラグを折ることかできた俺が、もう一度お犬様に会うことができたとしたら。
「その時はまた……友達になってね。お犬様」
お犬様と一緒に生きられる未来があるって、信じてもいいかな?
俺はそれだけを希望に、ろくでもねえ悪役人生を必死に生き抜くからさ。
346
あなたにおすすめの小説
魔王の息子を育てることになった俺の話
お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。
「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」
現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません?
魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL
BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。
BL大賞エントリー中です。
この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜
COCO
BL
「ミミルがいないの……?」
涙目でそうつぶやいた僕を見て、
騎士団も、魔法団も、王宮も──全員が本気を出した。
前世は政治家の家に生まれたけど、
愛されるどころか、身体目当ての大人ばかり。
最後はストーカーの担任に殺された。
でも今世では……
「ルカは、僕らの宝物だよ」
目を覚ました僕は、
最強の父と美しい母に全力で愛されていた。
全員190cm超えの“男しかいない世界”で、
小柄で可愛い僕(とウサギのぬいぐるみ)は、今日も溺愛されてます。
魔法全属性持ち? 知識チート? でも一番すごいのは──
「ルカ様、可愛すぎて息ができません……!!」
これは、世界一ちんまい天使が、世界一愛されるお話。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
ユィリと皆の動画つくりました! お話にあわせて、ちょこちょこあがる予定です。
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
異世界にやってきたら氷の宰相様が毎日お手製の弁当を持たせてくれる
七瀬京
BL
異世界に召喚された大学生ルイは、この世界を救う「巫覡」として、力を失った宝珠を癒やす役目を与えられる。
だが、異界の食べ物を受けつけない身体に苦しみ、倒れてしまう。
そんな彼を救ったのは、“氷の宰相”と呼ばれる美貌の男・ルースア。
唯一ルイが食べられるのは、彼の手で作られた料理だけ――。
優しさに触れるたび、ルイの胸に芽生える感情は“感謝”か、それとも“恋”か。
穏やかな日々の中で、ふたりの距離は静かに溶け合っていく。
――心と身体を癒やす、年の差主従ファンタジーBL。
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。
★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
お兄ちゃんができた!!
くものらくえん
BL
ある日お兄ちゃんができた悠は、そのかっこよさに胸を撃ち抜かれた。
お兄ちゃんは律といい、悠を過剰にかわいがる。
「悠くんはえらい子だね。」
「よしよ〜し。悠くん、いい子いい子♡」
「ふふ、かわいいね。」
律のお兄ちゃんな甘さに逃げたり、逃げられなかったりするあまあま義兄弟ラブコメ♡
「お兄ちゃん以外、見ないでね…♡」
ヤンデレ一途兄 律×人見知り純粋弟 悠の純愛ヤンデレラブ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる