処刑された王女は隣国に転生して聖女となる

空飛ぶひよこ

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聖女の日々30

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 兄様は、布団をぐるぐる巻きにした私をベッドに寝かせると、自分も横向きになって傍ら寝転がった。

「……ほら。ディアナ。これで満足だろう。ちゃんと朝まで傍にいるから、さっさと寝てしまえ。お前が望むなら、子守唄だって歌ってやるから」

 そのまま左手で、子どもを寝かしつけるように腰の辺りをポンポンと軽く叩かれて、つい唇を尖らした。

「……子ども扱い……」

「子ども扱いされたいんだろ? ……ただの『ディアナ』として、何も考えずに甘やかされたいってことくらい分かってるんだからな」

 小さくため息を吐いて、兄様はそっと私の頬を撫で、そのまま髪の毛を撫でた。

「……なあ、ディアナ。今からでも、遅くないぞ。やっぱり逃げるか」

 兄様の言葉に、首を横に振る。

「……逃げたくないし、苦しんでいる人たちは救いたいし、ユーリアに復讐もしたいの」

「…………」

「……でも、逃げたいし、聖女でなんていたくないし、誰かから責められたり憎まれたりするのは、怖いの」

 けっして両立して叶えることのできない願いださくど、どちらも本当の私の想い。どちらも嘘なんかじゃない。
 だからこそ、どっちつかずの現状が苦しくて仕方ない。

「……だから、束の間だけでも俺を逃げ場にしたいのか。あんな馬鹿なことまで言って」

「………ごめんなさい」

 私の謝罪に、兄様は苦笑いを浮かべると、こつんと私の額に自分の額を押し当てた。

「……ディアナ。今は、辛くないか。俺がこうやって隣に寝てたら、聖女でいることの苦しみを少しでも忘れられるか」

「…………うん」

 こうして間近で兄様の匂いをかいで、兄様の熱を感じていると、昔に戻った気分になる。
 アシュリナの記憶を思い出す前の、ただただ幸せな子どもでいられたあの頃に。

 与えられた使命と責任の重さを、今だけは忘れられる。

「……分かったよ。それじゃあ、今日からこうして毎日一緒に寝てやるよ」
 
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