59 / 224
連載
聖女の日々38
しおりを挟む
「ーー人は、弱い。だからこそ、力あるものに縋りたがります。力があるなら、弱き人々を救って当然だと、そんな傲慢な期待を押し付けようとするのです。……でもね。力があるから、それを他人の為に行使しないといけない義務なんて、本当はどこにもないのですよ」
マナエさんは、そう言って私の手を握った。
びくりと体が跳ねる。
「それでも……確かに貴女は人を救っている。私達医者ではけして救うことができない、人智を超えた呪いに侵されている人を、見返りを求めることなく救い続けている。それは、ひどく尊いことだと私は思います」
マナエさんの手も、口から出る言葉も、あまりにも私に優しく温かくて、思わず泣いてしまいそうになった。
「聖女様。どうか、どうか苦しまないで下さい。貴女は何も間違ったことはしていません。貴女が見捨てたと思っている患者は、そもそも貴女がいなければ同じ結果を辿っていたでしょう。貴女には何も責任はありません。どうか、そんな患者よりも、貴女が救った人達のことを考えて下さい」
「……私が、救った人……」
「そうです。ミーシャ王女も、シャルル王子も、貴女に救われました。他にも、貴女に救われ感謝している人らたくさんいます。怨嗟の声に囚われるのではなく、貴女は彼らの感謝の言葉こそ受け止めるべきです」
「………あ………」
『……君が治してくれたんだね。言葉は返せなかったけど、ずっと君の声が遠くから聞こえていたよ。ありがとう』
頭の中で、初めて会った時のシャルル王子の言葉が過ぎる。
『……私を治してくれて、ありがとうございます。……それに、嘘だなんて言って、ごめんなさい。貴女は、本物の聖女様なのですね』
生きられるのだと、むせび泣いたミーシャ王女の言葉も。
『……ああ、苦しみがすっかり消えました。本当にありがとうございました。聖女様。ルシトリアの民でない私にまで、こんな治療をして頂いて……』
『本当に……本当に、ありがとうございました……あの地獄のような苦しみから、解放されるなんて……』
『ありがとうございますっ! ありがとうございますっ! また、元気なこの人に会えるだなんて……!』
『せいじょさま。……ママを、すくってくれて、ありがとう』
シャルル王子や、ミーシャ王女だけじゃない。
たくさんの人達が、私に心からの感謝を向けてくれた。
マナエさんは、そう言って私の手を握った。
びくりと体が跳ねる。
「それでも……確かに貴女は人を救っている。私達医者ではけして救うことができない、人智を超えた呪いに侵されている人を、見返りを求めることなく救い続けている。それは、ひどく尊いことだと私は思います」
マナエさんの手も、口から出る言葉も、あまりにも私に優しく温かくて、思わず泣いてしまいそうになった。
「聖女様。どうか、どうか苦しまないで下さい。貴女は何も間違ったことはしていません。貴女が見捨てたと思っている患者は、そもそも貴女がいなければ同じ結果を辿っていたでしょう。貴女には何も責任はありません。どうか、そんな患者よりも、貴女が救った人達のことを考えて下さい」
「……私が、救った人……」
「そうです。ミーシャ王女も、シャルル王子も、貴女に救われました。他にも、貴女に救われ感謝している人らたくさんいます。怨嗟の声に囚われるのではなく、貴女は彼らの感謝の言葉こそ受け止めるべきです」
「………あ………」
『……君が治してくれたんだね。言葉は返せなかったけど、ずっと君の声が遠くから聞こえていたよ。ありがとう』
頭の中で、初めて会った時のシャルル王子の言葉が過ぎる。
『……私を治してくれて、ありがとうございます。……それに、嘘だなんて言って、ごめんなさい。貴女は、本物の聖女様なのですね』
生きられるのだと、むせび泣いたミーシャ王女の言葉も。
『……ああ、苦しみがすっかり消えました。本当にありがとうございました。聖女様。ルシトリアの民でない私にまで、こんな治療をして頂いて……』
『本当に……本当に、ありがとうございました……あの地獄のような苦しみから、解放されるなんて……』
『ありがとうございますっ! ありがとうございますっ! また、元気なこの人に会えるだなんて……!』
『せいじょさま。……ママを、すくってくれて、ありがとう』
シャルル王子や、ミーシャ王女だけじゃない。
たくさんの人達が、私に心からの感謝を向けてくれた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
3,723
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。