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聖女の日々51
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「……平凡……」
「ええ。聖女様も、ごらんになったでしょう? 病に苦しむあまり、全てを呪っていた私の姿を。あれこそが、演技を捨てた私の、真の姿です」
『ーーっ痛い痛い痛い痛い苦しい苦しい苦しい苦しい』
『……落ち着いて、ミーシャ。……もうすぐ……もうすぐだから。もう少しだけ我慢しておくれ』
『あ、あああああああ兄さ、兄さま……して、殺して、くれるの?』
『……違うよ。ミーシャ。殺すんじゃなく、治すんだ。お前は、生きられるんだよ』
『嘘! 嘘! 嘘! 誰も、治せなかった! 聖女なんていなかった! ーーあああああああ!!!!! 痛いよ苦しいよ……シャルル兄様、私を殺してよおおおお!!!!』
病に苦しみ喘ぐ、かつてのミーシャ王女の姿が脳裏に過ぎる。
ミーシャ王女は自嘲の笑みを浮かべて、目を伏せた。
「……あの時の私は、さぞみっともなく、浅ましかったでしょう?」
「っそんなことは、ありません!」
「いいんです。聖女様。私自身が誰よりも、自分のことはわかっていますから。私は、どこにでもいる平凡な娘。あのような苦しみの中で、気高く美しくあり続けることはできません」
でも、と言葉を切って、ミーシャ王女はアシュリナとよく似たダークブルーの瞳で私を見据えた。
「私は、どこまでも平凡な娘。それでもーールシトリアの王族なのです。民の血税で生かされている以上、自らの役目を果たさなければいけません」
「っ」
「だから、私は民の前では、自分の未熟さや醜さを隠して笑います。どこまでも、清らかな娘を演じます。……その演技が、聖女様にも通じていたようで嬉しいです」
……ああ。マナエさんが言ったのは、こういうことだったのか。
「……ミーシャ王女は、自らの病の原因になった【災厄の魔女】が、憎いですか?」
「ええ。聖女様も、ごらんになったでしょう? 病に苦しむあまり、全てを呪っていた私の姿を。あれこそが、演技を捨てた私の、真の姿です」
『ーーっ痛い痛い痛い痛い苦しい苦しい苦しい苦しい』
『……落ち着いて、ミーシャ。……もうすぐ……もうすぐだから。もう少しだけ我慢しておくれ』
『あ、あああああああ兄さ、兄さま……して、殺して、くれるの?』
『……違うよ。ミーシャ。殺すんじゃなく、治すんだ。お前は、生きられるんだよ』
『嘘! 嘘! 嘘! 誰も、治せなかった! 聖女なんていなかった! ーーあああああああ!!!!! 痛いよ苦しいよ……シャルル兄様、私を殺してよおおおお!!!!』
病に苦しみ喘ぐ、かつてのミーシャ王女の姿が脳裏に過ぎる。
ミーシャ王女は自嘲の笑みを浮かべて、目を伏せた。
「……あの時の私は、さぞみっともなく、浅ましかったでしょう?」
「っそんなことは、ありません!」
「いいんです。聖女様。私自身が誰よりも、自分のことはわかっていますから。私は、どこにでもいる平凡な娘。あのような苦しみの中で、気高く美しくあり続けることはできません」
でも、と言葉を切って、ミーシャ王女はアシュリナとよく似たダークブルーの瞳で私を見据えた。
「私は、どこまでも平凡な娘。それでもーールシトリアの王族なのです。民の血税で生かされている以上、自らの役目を果たさなければいけません」
「っ」
「だから、私は民の前では、自分の未熟さや醜さを隠して笑います。どこまでも、清らかな娘を演じます。……その演技が、聖女様にも通じていたようで嬉しいです」
……ああ。マナエさんが言ったのは、こういうことだったのか。
「……ミーシャ王女は、自らの病の原因になった【災厄の魔女】が、憎いですか?」
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