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連載2

決戦の時18

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「……婚約、指輪?」

 言われてみれば確かに、父様も母様もずっと左手の薬指に指輪をはめているし、母様がアシュリナに婚約の報告をしてきた時に、うれしそうに左手の薬指を見せてきたような……?

「まさかディアナ……お前、婚約指輪を左手の薬指にするって知らないのか?」

「し、知ってるよ!ただちょっと忘れてただけで」

 だ、だって仕方ないじゃない。
 ただただ力を使って民を癒すことが第一だったアシュリナには婚約指輪なんて縁がなかったし、ディアナとして転生して以降は家族以外とほとんど関わらずに生きてきたんだもの。
 常識にだって、疎くとなる。

「でも、予言者はなんでわざわざこんな場所に指輪をはめたんだろ?」

 私の疑問の言葉に、兄様は呆れきった顔でため息を吐いた。

「……分からないのか?」

「え。兄様わかるの?」

「分からないなら、いい」

 兄様はもう一度深々とため息を吐くと、ぼりぼり頭を掻きながら、そっぽを向いた。

 ……よく分からないけど、兄様がいいと言ってるから、いいのかな?
 予言者なりの、趣味が悪いジョークだと考えれば。

「それより、私。兄様に相談したいことがあって」

 今は、予言者の嫌がらせなんかよりも、話し合わなきゃいけないことがある。
 セーヌヴェットに発つ前に、やっておかなければならないことが。

「私……トリアスのご神体である剣を、折ろうと思うのだけど、兄様はどう思う?」 
 
 兄様の呆れたような表情が、瞬時に真顔になる。

「もしルイス王やユーリアの後ろにトリアスがいるのなら、封印に成功している今のうちに神体そのものを壊さないと。万が一神体がルイス王側に渡ってしまえば、トリアスはまた力を取り戻してしまうかもしれないもの」

 予言者は人間によって作られた神が存在するには、【信者】と【神殿】、【神体】の3つが必要だと言った。
 神を宿すための【神体】自体に変わりはないけれど、【信者】と【神殿】は、【神体】さえあればいくらでも新しく増やすことができる。
 もしセーヌヴェット側にトリアスがいるなら、自らの力を取り戻すために、何としてでもあの剣を取り戻そうとするはずだ。
 ならばいっそ、先に剣を壊してしまうべきなんじゃないだろうな。

「お前の言うことはもっともだが、残念ながら剣を折ることはできないぞ」

「どうして?」

「あの剣は、材質自体は大した素材じゃないが、特殊な魔法がかかってる。人間の力で折ることはまず不可能だ」
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