上 下
162 / 224
連載2

対決13

しおりを挟む
 けれどその槍が、私を貫くことはなかった。

「……どうして、私の【厄】が弾かれるの!?」

 驚愕の眼差しで目を見開くユーリアを、冷静に見据える。

「あなたが得意げに話している間に、私が何もしてないと思った? ちゃんと力を練って、対策をしてたんだよ」

 私は逃げ回る【厄】を、いつも網状に張り巡らせた聖女の力で捕らえ、結晶化している。
 ならば、その網を私自身の全身に張り巡らせれば、【厄】は私の中に入ることはできないはずだ。
 ユーリアと話している間、ひそかに力を操って、体中に力を張り巡らせていた。
 いつ【厄】を解き放たれても、対応ができるように。

「なんでそんな結界みたいな真似ができるのよ!? 今までそんなことができる聖女は誰もいなかったわ! 歴代全ての聖女の記憶があるわけでもないあなたが、どうして!」

「だって私は、今までの聖女とは違うもの」

 そう、私は今までの聖女とは違う。
 ずば抜けた特別な力を持っているわけじゃない。
 アシュリナの記憶と比較しても、与えられた力そのものは、さして変わらないだろう。
 けれど、私と歴代の聖女達とは決定的に違う所がある。

「歴代の聖女達は、あらゆる傷病に対して平等に力を行使続けたけど、私は【災厄の魔女の呪い】の解呪に専念させてもらってきたの。ルシトリアに来てからずっと、【厄】の結晶化に集中してきた。だから私は、歴代のどの聖女よりも【厄】の扱いには詳しいの!」

 歴代の聖女は、【災厄の魔女の呪い】を解呪する傍らで、呪いと関係のない人々の傷病も癒し続けてきた。
 むしろ【厄】の結晶化し、【災厄の魔女】を打ち倒すことよりも、傷病を治癒することこそを使命に思っていた聖女もいるはすだ。
 過去の聖女達はきっと、救う力があるのに、救わない道を選ぶことはできなかった。その結果、力の使い方は本来の目的から逸れ、【厄】に対して十分に力を発揮することはできなかったのだろう。 

 けれど私は違う。私には、私が治癒できない代わりに動いてくれるマナエさんがいて、力の行使を【災厄の魔女の呪い】に専念する許可を与えてくれたライオネル陛下がいた。

 私はきっと歴代のどの聖女よりも、ユーリアの力に対抗することだけを考えてきた。それができる環境を与えてもらった。

 だからこそ、私は今、こうしてユーリアと戦うことができる。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

夢のテンプレ幼女転生、はじめました。 憧れののんびり冒険者生活を送ります

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:68,628pt お気に入り:4,766

王女殿下に婚約破棄された、捨てられ悪役令息を拾ったら溺愛されまして。

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:24,027pt お気に入り:7,090

クソつよ性欲隠して結婚したら草食系旦那が巨根で絶倫だった

恋愛 / 完結 24h.ポイント:383pt お気に入り:330

妹に邪魔される人生は終わりにします

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:418pt お気に入り:6,853

婚約者の義妹に結婚を大反対されています

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:43,879pt お気に入り:5,001

死に戻りオメガと紅蓮の勇者

BL / 完結 24h.ポイント:42pt お気に入り:195

メスになんかならないっ

BL / 完結 24h.ポイント:205pt お気に入り:302

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。