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連載2
対決14
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思いがけない私の反撃に焦りを見せたユーリアだったが、すぐに馬鹿にしたような歪んだ笑みを浮かべた。
「ーー【厄】を弾き返せた程度で、勝ったつもり? あんたはこの空間から出られないのよ。あんたが疲弊して聖女の力が使えなくなるまで、適当に付き合ってあげるわ。一体その結界もどきがいつまで持つかしらね?」
「…………」
「あんたは機を見計らって、【厄】を結晶化するつもりかもしれないけど、お生憎様! 【厄】のストックなんかいくらでもあるの。二つの【厄】くらいなら、弾き返しながら同時に結晶化できるかもしれないけど、数が増えたらどうかしら? 結局あんたがしてることは、決まりきった未来を先延ばししているに過ぎないのよ!」
勝ち誇りながら高笑いするユーリアに、無言のまま近づく。
狼狽える様子を見せない私にユーリアは一瞬怯み、後ずさりをした。
「な、何よ! 力で敵わないから暴力で訴えようというの? 残念だったわね! あんたと違って、私はいつでもここから出られるの! あんたが何かしたらすぐに……」
「暴力なんか振るわないよ」
暴力なんか振るわない。……その必要もない。
笑みを浮かべてさらに近づいた私に、ユーリアは小さく悲鳴をあげて、この場から逃がれようとした。
でも遅い。……この距離なら、もう十分だ。
ユーリアが何かの呪文を唱える前に、ユーリアの白く細い手を掴んだ。何十年も王宮で聖女として生きてきたユーリアと、森育ちの私では身体能力が違う。その手を取るだけなら簡単だった。
ユーリアがこの空間から逃げ出すより早く、体に纏っていた聖女の力を全て、触れた箇所から体中へと流し込む。
その途端、さっき弾き返した二つの【厄】が私の体の中に飛び込んできて、体の内側から激しい苦痛が湧き上がったが、口元には自然と笑みが浮かんでいた。
ようやくこれで、ユーリアを……【災厄の魔女】をこの手で打ち倒すことができる。
勝利の喜びを噛み締めている私の前で、ユーリアが悲鳴をあげた。
「いやぁああああ! どうして! どうして、私の体が結晶化していくの!?」
私が触れたユーリアの右手を始点に、ユーリアの体は結晶化していき、その範囲はどんどん広がっていく。
何が起きたか分からず悲鳴をあげ続けるユーリアに、私は勝ち誇った笑みを向けた。
「ユーリア……あなたがアシュリナの時のユーリアのままならこんなことはできなかったから、あなたは歴代の【災厄の魔女】の記憶なんか思い出すべきじゃなかったんだよ。……実際は記憶を思い出したんじゃなく、意識を乗っ取られたっていう方が正しいのだろうけど」
「ーー【厄】を弾き返せた程度で、勝ったつもり? あんたはこの空間から出られないのよ。あんたが疲弊して聖女の力が使えなくなるまで、適当に付き合ってあげるわ。一体その結界もどきがいつまで持つかしらね?」
「…………」
「あんたは機を見計らって、【厄】を結晶化するつもりかもしれないけど、お生憎様! 【厄】のストックなんかいくらでもあるの。二つの【厄】くらいなら、弾き返しながら同時に結晶化できるかもしれないけど、数が増えたらどうかしら? 結局あんたがしてることは、決まりきった未来を先延ばししているに過ぎないのよ!」
勝ち誇りながら高笑いするユーリアに、無言のまま近づく。
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「な、何よ! 力で敵わないから暴力で訴えようというの? 残念だったわね! あんたと違って、私はいつでもここから出られるの! あんたが何かしたらすぐに……」
「暴力なんか振るわないよ」
暴力なんか振るわない。……その必要もない。
笑みを浮かべてさらに近づいた私に、ユーリアは小さく悲鳴をあげて、この場から逃がれようとした。
でも遅い。……この距離なら、もう十分だ。
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ようやくこれで、ユーリアを……【災厄の魔女】をこの手で打ち倒すことができる。
勝利の喜びを噛み締めている私の前で、ユーリアが悲鳴をあげた。
「いやぁああああ! どうして! どうして、私の体が結晶化していくの!?」
私が触れたユーリアの右手を始点に、ユーリアの体は結晶化していき、その範囲はどんどん広がっていく。
何が起きたか分からず悲鳴をあげ続けるユーリアに、私は勝ち誇った笑みを向けた。
「ユーリア……あなたがアシュリナの時のユーリアのままならこんなことはできなかったから、あなたは歴代の【災厄の魔女】の記憶なんか思い出すべきじゃなかったんだよ。……実際は記憶を思い出したんじゃなく、意識を乗っ取られたっていう方が正しいのだろうけど」
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