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連載2
対決15
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「……どういう意味よ!」
「どういう意味も何も、そのままの意味だよ。私、あなたとこの城で初めて会った時、びっくりしたんだ。ディアナとしてあなたと会うのは初めてだったけど、アシュリナの記憶の中のあなたの姿は知っていた。けれどこの数十年で、あなたはすっかり変わり果てていた」
「っ私が老いて衰えたと言いたいわけ!?」
「そんな次元の問題じゃないよ。今のあなたは、アシュリナの時のあなたとは、根本的に違うの」
老いただとか、そんな人間なら当たり前の変化じゃない。
だって、今のユーリアは、私には人間だと思えない。
「私にはあなたが【厄】そのものに見える」
私以外の人には普通の人間の姿に見えているのだろうし、それが一体どんな姿であるかは一応認識できる。
けれども私の目にはそれが、【厄】の黒いもやが、人間の形を作っているようにしか見えないのだ。
「ずっと不思議だったんだ。宿主を死なせることで【厄】は消え去るけど、【厄】にこめられたあなたの意識は一体どうなるんだろって」
【厄】は様々な傷病を、ユーリアの意識で押し固めたものだ。
宿主が死ぬことによって、【厄】のもとになった傷病が消えるのは、何となくわかる。通常なら近くの人間に感染する恐れがある病がもとになっていたとしても、他の傷病と組合わされることで、元々の感染力は相殺されてしまうのかもしれないし。
けれど、傷病を繋ぎとめていたユーリアの意識まで、宿主の死によって消えるなんて、私にはとても信じられなかった。
あれほど強い、歪んだ意識が、そんなに簡単に消え去るとは思えなかったから。
けれどその疑問は、【厄】そのものと化したユーリアを目の当たりにしたことで解消された。
「あなたが記憶だと思っているものは、おそらくは宿主を殺した後に残った、【厄】の役割を果たした【災厄の魔女】の意識の集合体なんだよ。歴代の【災厄の魔女】が【厄】を作り出す時に込めた意識の残滓が、数百年分集合して、元々のユーリアの意識を乗っ取ったのが今のあなたなんだ」
私の言葉を聞いた途端、ユーリアは憤怒で顔を真っ赤に染めた。
「私が意識の残りカスの集まりですって!? ふざけたこと言わないで! 私は特別な存在なのよ! 特別な存在だからこそ、魂に刻まれた過去の記憶を全て思い出すことができたのよ!」
「……あなたがそう信じたいなら、別にそういうことにしても、構わないけれどね。私の仮説が、本当にあっている保証もないし」
ユーリアの言う通り、彼女が思い出したのが魂に刻まれた記憶だとしても、私からすれば何も問題はない。
「あなたがどう思おうと、あなたが私の力によって結晶化している事実は、けして変えられないのだから」
「どういう意味も何も、そのままの意味だよ。私、あなたとこの城で初めて会った時、びっくりしたんだ。ディアナとしてあなたと会うのは初めてだったけど、アシュリナの記憶の中のあなたの姿は知っていた。けれどこの数十年で、あなたはすっかり変わり果てていた」
「っ私が老いて衰えたと言いたいわけ!?」
「そんな次元の問題じゃないよ。今のあなたは、アシュリナの時のあなたとは、根本的に違うの」
老いただとか、そんな人間なら当たり前の変化じゃない。
だって、今のユーリアは、私には人間だと思えない。
「私にはあなたが【厄】そのものに見える」
私以外の人には普通の人間の姿に見えているのだろうし、それが一体どんな姿であるかは一応認識できる。
けれども私の目にはそれが、【厄】の黒いもやが、人間の形を作っているようにしか見えないのだ。
「ずっと不思議だったんだ。宿主を死なせることで【厄】は消え去るけど、【厄】にこめられたあなたの意識は一体どうなるんだろって」
【厄】は様々な傷病を、ユーリアの意識で押し固めたものだ。
宿主が死ぬことによって、【厄】のもとになった傷病が消えるのは、何となくわかる。通常なら近くの人間に感染する恐れがある病がもとになっていたとしても、他の傷病と組合わされることで、元々の感染力は相殺されてしまうのかもしれないし。
けれど、傷病を繋ぎとめていたユーリアの意識まで、宿主の死によって消えるなんて、私にはとても信じられなかった。
あれほど強い、歪んだ意識が、そんなに簡単に消え去るとは思えなかったから。
けれどその疑問は、【厄】そのものと化したユーリアを目の当たりにしたことで解消された。
「あなたが記憶だと思っているものは、おそらくは宿主を殺した後に残った、【厄】の役割を果たした【災厄の魔女】の意識の集合体なんだよ。歴代の【災厄の魔女】が【厄】を作り出す時に込めた意識の残滓が、数百年分集合して、元々のユーリアの意識を乗っ取ったのが今のあなたなんだ」
私の言葉を聞いた途端、ユーリアは憤怒で顔を真っ赤に染めた。
「私が意識の残りカスの集まりですって!? ふざけたこと言わないで! 私は特別な存在なのよ! 特別な存在だからこそ、魂に刻まれた過去の記憶を全て思い出すことができたのよ!」
「……あなたがそう信じたいなら、別にそういうことにしても、構わないけれどね。私の仮説が、本当にあっている保証もないし」
ユーリアの言う通り、彼女が思い出したのが魂に刻まれた記憶だとしても、私からすれば何も問題はない。
「あなたがどう思おうと、あなたが私の力によって結晶化している事実は、けして変えられないのだから」
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