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連載2
対決12
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……ここでまた、ルイス王の名前が出るのか。
「何故自分の考えを曲げてまで、ルイス王に従うの? あなたは強大な力を持つ特別な存在なんだから、思うがままに生きればいいのに。私が知っているあなたとルイス王の関係は、もっと対等だったように思うけど」
アシュリナの記憶の中のユーリアは、ルイス王を愛し狂信的に慕っていたようではあったけど、それほど従順な印象ではなかった。
当時のユーリアは、華やかかつ奔放で、強かな野心家だった。ルイス王と組んだのも、権力者と組んで本物の聖女であるアシュリナを排除できれば、自分の立場を確固たるものにできるという打算もあったように思う。
ルイス王に必要とされたくて常に焦燥していたからこそ、主導権はいつも彼女自身が握っていた。
使い捨てにされず、いつまでもルイス王に必要とされ続ける為に。
けれど、今のユーリアは違う。
「っ……何を言っているの? 私は最初から、ルイス陛下の従順なしもべよ。誰よりも美しいあの方が、私を救いあげてくださったあの日から、ずっと! 私はあの方の為なら何だってするわっ! 命だって惜しくないのっ」
狂気じみた愛情に、盲目的な献身。
いつか【厄】を結晶化させた時に流れ込んできた感情は、確かに今、ユーリアの中にある。
ーーだって今目の前に立つユーリアは、あの時のユーリアとは違うから。
カチリと、頭の中でパズルがはまった音が聞こえた気がした。
セーヌヴェットに来てから胸の中に芽生えた疑念が、確信に変わる。
もし、私の考えが正しいのだとすれば、ルイス王は。
「……もう、おしゃべりはいいわ。これ以上話しても不快になるだけだもの」
手に集まった【厄】の塊を、槍のように細く伸ばして、ユーリアは両手でかかげた。
「もしここで囚われたとしても、死ねば転生して解放されるなんて甘い考えでいるのだとしたら、お生憎様。あなたはこの空間では、自分では死ねないようになっているの。ルイス陛下が、そう設定してくれたのよ」
「…………」
「さあ、私の【厄】をあなたに植えつけてあげる。うまく結晶化できたら、ごほうびにまた新しい【厄】をあげるわ。死ぬこともできないままに、【厄】に侵され続けて、未来永劫苦しみなさい。絶対に死んで楽になんかさせないから」
くすくすと笑いながら、ユーリアは槍状になった【厄】を頭上に浮かせた。
槍の先がキラリと鈍い光を発したかように見えて、口の中のつばを飲み込んだ。
「さあ。セーラ。……炎に焼かれるより、激しい苦痛をあなたにあげるわ」
ユーリアがそう口にした途端、【厄】でできた二本の槍が、まっすぐに私へ向かって飛んできた。
「何故自分の考えを曲げてまで、ルイス王に従うの? あなたは強大な力を持つ特別な存在なんだから、思うがままに生きればいいのに。私が知っているあなたとルイス王の関係は、もっと対等だったように思うけど」
アシュリナの記憶の中のユーリアは、ルイス王を愛し狂信的に慕っていたようではあったけど、それほど従順な印象ではなかった。
当時のユーリアは、華やかかつ奔放で、強かな野心家だった。ルイス王と組んだのも、権力者と組んで本物の聖女であるアシュリナを排除できれば、自分の立場を確固たるものにできるという打算もあったように思う。
ルイス王に必要とされたくて常に焦燥していたからこそ、主導権はいつも彼女自身が握っていた。
使い捨てにされず、いつまでもルイス王に必要とされ続ける為に。
けれど、今のユーリアは違う。
「っ……何を言っているの? 私は最初から、ルイス陛下の従順なしもべよ。誰よりも美しいあの方が、私を救いあげてくださったあの日から、ずっと! 私はあの方の為なら何だってするわっ! 命だって惜しくないのっ」
狂気じみた愛情に、盲目的な献身。
いつか【厄】を結晶化させた時に流れ込んできた感情は、確かに今、ユーリアの中にある。
ーーだって今目の前に立つユーリアは、あの時のユーリアとは違うから。
カチリと、頭の中でパズルがはまった音が聞こえた気がした。
セーヌヴェットに来てから胸の中に芽生えた疑念が、確信に変わる。
もし、私の考えが正しいのだとすれば、ルイス王は。
「……もう、おしゃべりはいいわ。これ以上話しても不快になるだけだもの」
手に集まった【厄】の塊を、槍のように細く伸ばして、ユーリアは両手でかかげた。
「もしここで囚われたとしても、死ねば転生して解放されるなんて甘い考えでいるのだとしたら、お生憎様。あなたはこの空間では、自分では死ねないようになっているの。ルイス陛下が、そう設定してくれたのよ」
「…………」
「さあ、私の【厄】をあなたに植えつけてあげる。うまく結晶化できたら、ごほうびにまた新しい【厄】をあげるわ。死ぬこともできないままに、【厄】に侵され続けて、未来永劫苦しみなさい。絶対に死んで楽になんかさせないから」
くすくすと笑いながら、ユーリアは槍状になった【厄】を頭上に浮かせた。
槍の先がキラリと鈍い光を発したかように見えて、口の中のつばを飲み込んだ。
「さあ。セーラ。……炎に焼かれるより、激しい苦痛をあなたにあげるわ」
ユーリアがそう口にした途端、【厄】でできた二本の槍が、まっすぐに私へ向かって飛んできた。
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