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連載2
神との戦い16
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狂気じみた予言者の言葉に、自然と肌が粟立った。
罪のない人間がどれほど死のうが自分には関係ないとあっさり口にできる神が、たった一人に執着したら、こんな狂った重い愛情を抱くようになるのか。
「……そんなことをしても無駄だと思いますけどね」
私はまっすぐ予言者を睨みつけながら、できるだけ小憎たらしい口調で吐き捨てた。
「今の魂の持ち主である私ですら初代聖女に会ったことがないのに、異物でしかないあなたが無理やり融合を果たしたところで、再会できるとは思えません」
私の言い方に腹を立てて、こんな女と融合したくないと思ってくれないかと少しだけ期待したけど、予言者は微笑みを崩さなかった。
「そんなの、やってみないとわからないでしょう? 少なくとも、このままセーラが彼女のまま生まれ変わるのを待ち続けるよりは、再会できる可能性は高いはずです。それに仮に失敗したとしても、それはそれで構いません。セーラと一つになれることには、変わりありませんから」
「あなたが構わなくても、私は構います。あなたの宿願に私を巻き込まないでください」
何百年、何千年も初代聖女と再会することだけを願い続けた予言者の想いは重く、おそらくは尊いものなのだろう。
一途にただ一人を想い続けた彼の想いは、報われるべきなのかもしれない。
でも。
「私は兄様と約束したんです。一緒にマーナアルハの森に帰るって。ようやく聖女の使命を果たして、約束を果たせるところまで来たのに、こんなところであなたに殺されるわけにはいけません」
でも、だからって予言者の想いが、私達の約束より重いだなんて絶対に思わない。
彼が初代聖女を愛したように、私にも愛する人達はいるし、彼らもまた私を愛してくれている。
愛する人達の元に戻る為にも、私はこんなところで殺されるわけにはいかないのだ。
「関係ありません。……言ったでしょう? 私は神ですから、罪なき人間が死んでも何とも思いません。あなたの命だって同じです」
予言者がそう言った瞬間、扉の窓の向こうで炎が煌々と燃え上がった。
「あなたと話すのは楽しかったのですが、そろそろ時間切れです。大聖堂の外壁は、もはや完全に燃え尽きました。私が力を緩めさえすれば、すぐに部屋の外の火はここに到達して一瞬で私達を燃やし尽くします」
「っ」
「安心してください。この大聖堂が全て燃え尽きるまで、ここは私の領域です。火の性質も、私が思うままに操れます。火は私達の肉を焼き、死に至らしめますが、苦痛は与えることはありません。アシュリナの時のようなことにはならないので、どうかご安心ください」
罪のない人間がどれほど死のうが自分には関係ないとあっさり口にできる神が、たった一人に執着したら、こんな狂った重い愛情を抱くようになるのか。
「……そんなことをしても無駄だと思いますけどね」
私はまっすぐ予言者を睨みつけながら、できるだけ小憎たらしい口調で吐き捨てた。
「今の魂の持ち主である私ですら初代聖女に会ったことがないのに、異物でしかないあなたが無理やり融合を果たしたところで、再会できるとは思えません」
私の言い方に腹を立てて、こんな女と融合したくないと思ってくれないかと少しだけ期待したけど、予言者は微笑みを崩さなかった。
「そんなの、やってみないとわからないでしょう? 少なくとも、このままセーラが彼女のまま生まれ変わるのを待ち続けるよりは、再会できる可能性は高いはずです。それに仮に失敗したとしても、それはそれで構いません。セーラと一つになれることには、変わりありませんから」
「あなたが構わなくても、私は構います。あなたの宿願に私を巻き込まないでください」
何百年、何千年も初代聖女と再会することだけを願い続けた予言者の想いは重く、おそらくは尊いものなのだろう。
一途にただ一人を想い続けた彼の想いは、報われるべきなのかもしれない。
でも。
「私は兄様と約束したんです。一緒にマーナアルハの森に帰るって。ようやく聖女の使命を果たして、約束を果たせるところまで来たのに、こんなところであなたに殺されるわけにはいけません」
でも、だからって予言者の想いが、私達の約束より重いだなんて絶対に思わない。
彼が初代聖女を愛したように、私にも愛する人達はいるし、彼らもまた私を愛してくれている。
愛する人達の元に戻る為にも、私はこんなところで殺されるわけにはいかないのだ。
「関係ありません。……言ったでしょう? 私は神ですから、罪なき人間が死んでも何とも思いません。あなたの命だって同じです」
予言者がそう言った瞬間、扉の窓の向こうで炎が煌々と燃え上がった。
「あなたと話すのは楽しかったのですが、そろそろ時間切れです。大聖堂の外壁は、もはや完全に燃え尽きました。私が力を緩めさえすれば、すぐに部屋の外の火はここに到達して一瞬で私達を燃やし尽くします」
「っ」
「安心してください。この大聖堂が全て燃え尽きるまで、ここは私の領域です。火の性質も、私が思うままに操れます。火は私達の肉を焼き、死に至らしめますが、苦痛は与えることはありません。アシュリナの時のようなことにはならないので、どうかご安心ください」
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