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連載2
新たなる旅立ち7【完】
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「……よし、荷物を積み終わった!」
「ねえ。ディアナ。本当にもう行ってしまうの? 貴女は【災厄の魔女】や忘れられた神々と戦ったばかりなのよ。もう少しくらい休んでも許されるんじゃ……」
「駄目だよ。母様。もしもまだ【災厄の魔女の呪い】に苦しむ人がいるなら一刻を争う状況だろうし、歴代の【災厄の魔女】の思念が残存しているなら、少しでも早く封印しないと」
「でも……」
「それに母さん。何度も言っているけど、先日までに比べたら今回の旅は全然危険なんかないんだって。【災厄の魔女】の残留思念は、肉体を持つ【災厄の魔女】の体を乗っ取らなければ何もできない。怖がる必要なんかないんだ」
「それはわかっているけど……」
母様は心配そうに眉を八の字にしながら、ため息を吐く。
「……やっぱり私も着いて行こうかしら。ね、そうしましょう。ディアナ。ティムシー。護符の作り手は多いに超したことはないでしょう?」
「やめておけ。ローラ。過保護は卒業するんだろう?」
暴走しかけた母様を引き止めながら、父様が苦笑いを浮かべる。
「それに新婚旅行を邪魔しちゃ悪いだろ。二人きりにしてやろう」
「し、新婚!?」
「だ、だから父さん! 俺達はまだ結婚とか、そういう段階じゃ……」
「ああ、そうだったな。これはティムシーにとって、ディアナと結婚する為の試練の旅だったな。ディアナに広い世界を見させて、他の異性と交流させたうえで、ディアナにふさわしいのは自分だと示す為の」
「父さん!」
ニヤニヤと兄様を弄る父様と、顔を真っ赤にして父様に怒る兄様の様子に、苦笑いをしながらヒースの鼻先を撫でていると、母様がこっそり耳打ちをしてきた。
「……ねえ、ディアナ。本当にティムシーでよかったの? 家族の希望を叶える為に無理をしてたりしない?」
「しないよ。兄様がいいんだ」
一生隣りにいるなら、兄様がいい。
この気持ちは一生揺らがない自信がある。
……でも。
「でも兄様はどうしてもそれを心からは信じられないみたいだから、一緒に世界を見て回った後に、改めて兄様と夫婦になりたいって伝えるつもりなんだ」
私達は狭い世界で生きてきた。【災厄の魔女】を討伐する過程で世界は少し広がったけど、まだまだ足りない。
だから、これから二人で広い世界を知ることにした。
知ったうえで、二人の未来を選ぶんだ。
そうすればきっと兄様も、私がどれだけ兄様が大好きなのか思い知るはずだから。
「でもね。旅が終わったら、必ずまた母様達のもとに戻ってくるよ」
広い世界を知ったとしても、間違いなく変わらないものはある。
「だって、私と兄様の帰る場所はいつだって父様と母様のところだからさ」
その事実は、何があろうが絶対に変わらない。
だって、それは私【ディアナ】を私【ディアナ】たらしめる、大切なことだから。
母様は少しの沈黙の後、深々とため息を吐いて、優しく微笑んでくれた。
「……わかったわよ。私はダンと、この家であなたたちの帰りを待っているわ」
「母様、ありがとう」
「そのかわり絶対に怪我をしたりしないでね。ーー行ってらっしゃい、愛しい子達」
ルシトリアにもう予言者はいない。
大聖堂と共に焼け落ちて、いなくなってしまった。
【人を作った神】の声を代わりに聞ける人はいないから、もう誰にも未来はわからない。
でも。
「ーーそれじゃあ、行くぞ。ディアナ」
「うんっ! 兄様」
どんな未来の先にも、必ず私の隣には兄様がいる。
予言がなくても、不思議とそれだけは確信していた。
「ねえ。ディアナ。本当にもう行ってしまうの? 貴女は【災厄の魔女】や忘れられた神々と戦ったばかりなのよ。もう少しくらい休んでも許されるんじゃ……」
「駄目だよ。母様。もしもまだ【災厄の魔女の呪い】に苦しむ人がいるなら一刻を争う状況だろうし、歴代の【災厄の魔女】の思念が残存しているなら、少しでも早く封印しないと」
「でも……」
「それに母さん。何度も言っているけど、先日までに比べたら今回の旅は全然危険なんかないんだって。【災厄の魔女】の残留思念は、肉体を持つ【災厄の魔女】の体を乗っ取らなければ何もできない。怖がる必要なんかないんだ」
「それはわかっているけど……」
母様は心配そうに眉を八の字にしながら、ため息を吐く。
「……やっぱり私も着いて行こうかしら。ね、そうしましょう。ディアナ。ティムシー。護符の作り手は多いに超したことはないでしょう?」
「やめておけ。ローラ。過保護は卒業するんだろう?」
暴走しかけた母様を引き止めながら、父様が苦笑いを浮かべる。
「それに新婚旅行を邪魔しちゃ悪いだろ。二人きりにしてやろう」
「し、新婚!?」
「だ、だから父さん! 俺達はまだ結婚とか、そういう段階じゃ……」
「ああ、そうだったな。これはティムシーにとって、ディアナと結婚する為の試練の旅だったな。ディアナに広い世界を見させて、他の異性と交流させたうえで、ディアナにふさわしいのは自分だと示す為の」
「父さん!」
ニヤニヤと兄様を弄る父様と、顔を真っ赤にして父様に怒る兄様の様子に、苦笑いをしながらヒースの鼻先を撫でていると、母様がこっそり耳打ちをしてきた。
「……ねえ、ディアナ。本当にティムシーでよかったの? 家族の希望を叶える為に無理をしてたりしない?」
「しないよ。兄様がいいんだ」
一生隣りにいるなら、兄様がいい。
この気持ちは一生揺らがない自信がある。
……でも。
「でも兄様はどうしてもそれを心からは信じられないみたいだから、一緒に世界を見て回った後に、改めて兄様と夫婦になりたいって伝えるつもりなんだ」
私達は狭い世界で生きてきた。【災厄の魔女】を討伐する過程で世界は少し広がったけど、まだまだ足りない。
だから、これから二人で広い世界を知ることにした。
知ったうえで、二人の未来を選ぶんだ。
そうすればきっと兄様も、私がどれだけ兄様が大好きなのか思い知るはずだから。
「でもね。旅が終わったら、必ずまた母様達のもとに戻ってくるよ」
広い世界を知ったとしても、間違いなく変わらないものはある。
「だって、私と兄様の帰る場所はいつだって父様と母様のところだからさ」
その事実は、何があろうが絶対に変わらない。
だって、それは私【ディアナ】を私【ディアナ】たらしめる、大切なことだから。
母様は少しの沈黙の後、深々とため息を吐いて、優しく微笑んでくれた。
「……わかったわよ。私はダンと、この家であなたたちの帰りを待っているわ」
「母様、ありがとう」
「そのかわり絶対に怪我をしたりしないでね。ーー行ってらっしゃい、愛しい子達」
ルシトリアにもう予言者はいない。
大聖堂と共に焼け落ちて、いなくなってしまった。
【人を作った神】の声を代わりに聞ける人はいないから、もう誰にも未来はわからない。
でも。
「ーーそれじゃあ、行くぞ。ディアナ」
「うんっ! 兄様」
どんな未来の先にも、必ず私の隣には兄様がいる。
予言がなくても、不思議とそれだけは確信していた。
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