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連載2

新たなる旅立ち6

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 兄様の言葉にシャルル王子はちっちと舌を鳴らしながら、立てた指を振った。

「甘い、甘いですよ。お兄様。いつの間にか友人になっているなんて、長時間一緒にいる未来が約束された関係か相当相性が良い相手としか起きない現象です。関係性を敢えて名づけることによって、縮まる距離もあるのですよ」

「……そういうもんなのか?」

「そういうものなのです! 大体お兄様の言うことが正しかったとしたから、友情の片思いの場合はどうなるんですか! 私みたいに片方だけ勝手に絆が出来た気になって、お兄様からは友人だなんてこれっぽっちも思われてないような場合もあるじゃないですか!」

「…………」

 兄様は少しだけ黙り込んだ後、苦々しい表情で目を背けた。

「………これっぽっちも思ってないなんて、誰が言った」

「え?」

「俺は基本的に家族以外はどうでもいい人間だが……約束を果たせなかったことを申し訳なく思う程度には、お前のことを気にしているぞ」

 ぽかんとした表情を浮かべていたシャルル王子は、次の瞬間ぱあっと顔を輝かせた。

「……それは、お兄様が私に友情を感じてらっしゃるということですか!」

「知るか! 俺は今まで友人がいたことがないと言っただろ!」

「つまり、私はお兄様にとってはじめての友人ということですね!」

「だから、よくわからないって言っているだろ!」

 はしゃぐシャルル王子と、照れ隠しのように怒鳴る兄様を見ていたら、なんだか口元が緩んだ。

 ……いつぞやのミーシャ王女とのやりとりを思い出すなあ。
 あれ? ミーシャ王女と私は友人同士なんだから、別にシャルル王子と兄様が友人にならなくても関係はなくならないよね。友人同士の兄同士という繋がりは残るんだから。
 旅が終わったら、ミーシャ王女に会いに行く約束はもうしているし。
 でも……まあ、それを言うのは野暮だよね。何だかんだで兄様も少し嬉しそうだし。

「……何を他人ごとみたいな顔をしているんですか! 聖女様! 言っておきますけど、私が友人になりたいのはお兄様だけじゃなく貴女もなんですからね!」

 あら。



 ーーそしてその日、私にとっては二番目の。
 兄様のとってははじめての友人ができた。
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