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アルク・ティムシーというドエム
アルク・ティムシーというドエム5
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「……ふうん」
そんなアルクに対して、デイビッドは口元微笑を浮かべながら、思案するように腕を組んだ。
「……まぁ、別にお前が、庶民をパートナーにしたことで周囲から白い目で見られる覚悟があるというのなら、別にやってもいいぞ。ダンスのパートナーくらい」
「…本当ですかっ!? エンジェ嬢っ!」
「――ただし、条件がある」
興奮していきり立つアルクを宥めるように、開いた掌を突きつけながら、デイビッドは一層笑みを深くした。
傍から見ていても、思わずぞくりとしてしまう程、蠱惑的な笑みだった。
「条件……?」
「簡単なことだ。……舞踏会当日、学園のどこかにいる私を見つけて、捕まえろ」
眼を白黒させて困惑するアルクにデイビッドはさらに一歩近づくと、突然頭一つ分は高いであろうアルクの後頭部を鷲掴みにして、位置を下げさせ、そのまま耳元に口を寄せた。
「ゲームをしよう。アルク・ティムシー。この学園を舞台にした、隠れ鬼だ。お貴族様は、そんな遊びは知らないか? 探して、見つけて、捕まえる。それだけの、単純な児戯だ。制限時間は、舞踏会の終了まで。私を捕まえられたら、お前の勝ちだ。パートナーでも何でも、なってやるよ」
謳うように、誘う様に、甘く甘く囁く、デイビッドの姿を間近で見ていた私は、その行為を次の瞬間後悔することになる。
「――あぁ、エンジェ嬢。喜んでそのゲームに参加させて頂きます」
頷きながら、デイビッドを見つめる、アルクの顔。
「必ず、私は貴方を見つけて、貴方を手に入れて見せる……っ!」
――でれっ、でれの、どろんどろんだった。
……イケメンって、どんな顔をしてもイケメン補正があるから何とかなるとそう思ってたけど、気持ち悪いまでに脂下がると、そんな補正ですら効果が無くなってしまうこともあるんだね。正直、顔中にモザイクかけたいくらいだよ。視界の暴力を通り越して、視界の処刑って領域だよ、これ。
分かってたけど、うん、何か今回の登場の段階で分かってたけど
――さようなら、私の淡い淡い、憧れの気持ち。
こんにちは、完全に抹消したい、黒歴史。
アルクに対する好感度が、現在進行形で駄々下がりで仕方ないんですが、どうすればいいのでしょう。
「……この男たらしー。悪女ー」
「うっせぇ。黙れ、下僕」
「いだいいだいいだいいだい!」
アルクが立ち去った途端、思わず唇を尖らせて可愛らしく罵って見たら、顔面を鷲掴みにされた。
痛い痛い痛い、ちょ、指の痕ついてまうからやめて……! 何か顔のあちこちに、痣か何かが出来たみたいになっちゃうから……!
「……てか、何でゲームに勝ったらパートナーになってやるなんて言っちゃったの、デイビッド。そもそもほっといてくれたら、私が華麗にアルクを追っ払ってたのに、なんでわざわざアルクと話したの? 生理的に嫌そうな雰囲気ぷんぷん醸し出してたのにさ」
何とかデイビッドの魔の手から脱出した私は、ひりつく自身の顔を撫でながら、ジト目でデイビッドを見やる。そんな私をデイビッドは呆れたように溜息を吐いた。
「アホ。今は追っ払うことで来ても、あの流れじゃ後からアポ取ろうとこの先何度も突撃してくんのは目に見えてただろうが。ならば、さっさと要件聞いちまったほうが、よっぽど楽だろう」
「……まぁ、そうだけど」
「それに、あれお前が、あいつと話をして欲しくなかったからな」
……え。
思いがけない不意打ちの言葉に、ドクンと心臓が跳ねた。
「……え、それってどういう意味……?」
「どういう意味も何も……あいつ何か知らねぇけど、マゾっぽいだろう? お前のお貴族様モードに反応してお前を好きになられたら困るだろう」
え、え、え、え
心音がますます速くなる。頬が僅かに熱を持って、ほんのり赤く染まったのが分かった。
それって、それって、もしかして。
もしかしてだけど、嫉t……
「……一応あれでも、攻略対象? とかいう、下僕候補だからな。せっかく俺に向いているベクトルを、お前にぶんどられるわけにはいかねぇだろう」
o……じゃ、ナカッター。ウン、ハイ、知ッテター。コウナルト思ッテター。
大丈夫、期待ナンカ、別ニシテナカッター。
……うん、本当。本当に、これっぽちもそんな期待なんか、してなかったんだからね……!
嘘じゃないよ……っ!
そんなアルクに対して、デイビッドは口元微笑を浮かべながら、思案するように腕を組んだ。
「……まぁ、別にお前が、庶民をパートナーにしたことで周囲から白い目で見られる覚悟があるというのなら、別にやってもいいぞ。ダンスのパートナーくらい」
「…本当ですかっ!? エンジェ嬢っ!」
「――ただし、条件がある」
興奮していきり立つアルクを宥めるように、開いた掌を突きつけながら、デイビッドは一層笑みを深くした。
傍から見ていても、思わずぞくりとしてしまう程、蠱惑的な笑みだった。
「条件……?」
「簡単なことだ。……舞踏会当日、学園のどこかにいる私を見つけて、捕まえろ」
眼を白黒させて困惑するアルクにデイビッドはさらに一歩近づくと、突然頭一つ分は高いであろうアルクの後頭部を鷲掴みにして、位置を下げさせ、そのまま耳元に口を寄せた。
「ゲームをしよう。アルク・ティムシー。この学園を舞台にした、隠れ鬼だ。お貴族様は、そんな遊びは知らないか? 探して、見つけて、捕まえる。それだけの、単純な児戯だ。制限時間は、舞踏会の終了まで。私を捕まえられたら、お前の勝ちだ。パートナーでも何でも、なってやるよ」
謳うように、誘う様に、甘く甘く囁く、デイビッドの姿を間近で見ていた私は、その行為を次の瞬間後悔することになる。
「――あぁ、エンジェ嬢。喜んでそのゲームに参加させて頂きます」
頷きながら、デイビッドを見つめる、アルクの顔。
「必ず、私は貴方を見つけて、貴方を手に入れて見せる……っ!」
――でれっ、でれの、どろんどろんだった。
……イケメンって、どんな顔をしてもイケメン補正があるから何とかなるとそう思ってたけど、気持ち悪いまでに脂下がると、そんな補正ですら効果が無くなってしまうこともあるんだね。正直、顔中にモザイクかけたいくらいだよ。視界の暴力を通り越して、視界の処刑って領域だよ、これ。
分かってたけど、うん、何か今回の登場の段階で分かってたけど
――さようなら、私の淡い淡い、憧れの気持ち。
こんにちは、完全に抹消したい、黒歴史。
アルクに対する好感度が、現在進行形で駄々下がりで仕方ないんですが、どうすればいいのでしょう。
「……この男たらしー。悪女ー」
「うっせぇ。黙れ、下僕」
「いだいいだいいだいいだい!」
アルクが立ち去った途端、思わず唇を尖らせて可愛らしく罵って見たら、顔面を鷲掴みにされた。
痛い痛い痛い、ちょ、指の痕ついてまうからやめて……! 何か顔のあちこちに、痣か何かが出来たみたいになっちゃうから……!
「……てか、何でゲームに勝ったらパートナーになってやるなんて言っちゃったの、デイビッド。そもそもほっといてくれたら、私が華麗にアルクを追っ払ってたのに、なんでわざわざアルクと話したの? 生理的に嫌そうな雰囲気ぷんぷん醸し出してたのにさ」
何とかデイビッドの魔の手から脱出した私は、ひりつく自身の顔を撫でながら、ジト目でデイビッドを見やる。そんな私をデイビッドは呆れたように溜息を吐いた。
「アホ。今は追っ払うことで来ても、あの流れじゃ後からアポ取ろうとこの先何度も突撃してくんのは目に見えてただろうが。ならば、さっさと要件聞いちまったほうが、よっぽど楽だろう」
「……まぁ、そうだけど」
「それに、あれお前が、あいつと話をして欲しくなかったからな」
……え。
思いがけない不意打ちの言葉に、ドクンと心臓が跳ねた。
「……え、それってどういう意味……?」
「どういう意味も何も……あいつ何か知らねぇけど、マゾっぽいだろう? お前のお貴族様モードに反応してお前を好きになられたら困るだろう」
え、え、え、え
心音がますます速くなる。頬が僅かに熱を持って、ほんのり赤く染まったのが分かった。
それって、それって、もしかして。
もしかしてだけど、嫉t……
「……一応あれでも、攻略対象? とかいう、下僕候補だからな。せっかく俺に向いているベクトルを、お前にぶんどられるわけにはいかねぇだろう」
o……じゃ、ナカッター。ウン、ハイ、知ッテター。コウナルト思ッテター。
大丈夫、期待ナンカ、別ニシテナカッター。
……うん、本当。本当に、これっぽちもそんな期待なんか、してなかったんだからね……!
嘘じゃないよ……っ!
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