愛縁奇祈

春血暫

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〇〇師にご用心!!

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 ふと、目を覚ますと、英忠がいた。

「あれ、お前、なんでいるんだ……?」

「兄ちゃんっ!」

「お前……」

 まさか、だよな。

 でも、まあ、あっても問題はない。

「えっと、」

「社長、あんたは記憶を奪われているんだね」

「……そうだね」

 あれ。
 バレないようにしていたはずなのに。

 なんでかな。

 俺は、わかりやすいやつなのかもしれない。

「けど、それと今ってどう関係あるんだ? 奪われたといっても、昔のことだ」

「それが問題なんだよ。あんた、次、発作みたいなのあったら、終わりだからね。呪術師として、言っておくけど、かなり危ないから」

「え? でも、俺は何も変なところなんてないよ」

 大丈夫。
 大丈夫。

 そう言い聞かせないと、大丈夫ではない。

 少しの油断もできない。

 次で終わりって言った?

 なら、もう、なおさらではないか。

「大丈夫だよ」

「強がらないでくれよ」

 神呪さんは俺をにらむ。

「わかるよ、頼りないって。でも、こっちだって、まだあんたといたいんだよ」

「俺だって、みんなといたいよ?」

「だったら、大丈夫だなんて嘘を吐かないでくれよ」

「っ!?」

「俺はさ、本当にあんたの会社のみんな好きなんだよ。居心地が良いんだよ」

「か、神呪さん」

「好きだから、守りたい。好きだから、一緒にいたい」

 好きだから、と神呪さんは俺を見る。
 その目には、うっすら涙が浮かんであった。

 それが、文音に似ていて、苦しくなった。

「好きだから、あんたを救うんだ」

「バカ……。どうせ、お前ら人間は置いて行ってしまうではないか」

 ああ、何を言っているのだろう。
 こんなこと、言うつもりなかったのに。

「どうせ、一瞬しかないのに。みんな忘れてしまうのに。なんで、俺とつながろうとするんだよ。これ以上、お前らを好きになったら、手放せなくなるだろうが。放っておいてくれないか!?」

 こんなこと言いたくないのに。
 なんで、素直になれないんだろう。

 そう言えば、さっき、引馬さん、逃げだって言っていたな。

 ああ、本当に俺は逃げている。

 もう、俺なんて――

 バシッッ

 と、引馬さんが俺の頬を平手打ちをした。
 それで、俺の思考は止まった。

「いい加減にしなさい。百鬼さん」

 と、引馬さんは言い、サングラスを外す。

「もっと、周りを見ろ、とさっき言っただろうが」

「……あんたに何がわかるんだよ」

「わからないな。他人の好意を受けためられない人間の気持ちなんて」

 それに、と引馬さんは言う。

「誰もが、忘れると思うなよ。少なくとも、俺は覚えていたりするんだぜ?」
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