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本編2

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『白季の姫』…裏社会の誰もがその正体を知りたいと思い、血眼になって探してる白季の3番目の子供。
 その正体は白季組の中でも一部の幹部しか知らないという…
 ………まあその正体、俺ですけどね?









「まって?は?どういうこと?」

 すっかり混乱中の春樹。いつも余裕そうだからちょっと面白い。
 さっきから空気になっていた結城さんも驚いた顔をしている。いいリアクションをどうもありがとう。

 …説明してあげたいけど、どこから話せばいいのかな。



「まず改めまして。俺の名前は"白季優里しきゆうり"。白季家の三男であり、一般的に言われる噂の"白季の姫"です」

「一条、てのは?」

放心状態から戻ってきた結城さんが聞く。

「母の旧姓です。俺は堅気として過ごすため、そちらを名乗っています」

「なる、ほど…」


「俺は三男です。長男の雄大、次男の大地がいるので、わざわざあの世界に入らなくてもいい、というのが両親、兄、周りの幹部組員の考えでした。なので小さい頃から俺は表舞台に出ること無く育てられ、一般人として過ごしました。
 しかし、母が妊娠していたことから3人目がいるのは周囲にバレており、表に出ないことから女の子ではないか、という噂が広がり、現在の"白季の姫"に至ります。

 ……実際は男なんですけどね」


 そう俺が言うと、2人は深く考え始めようとする。


「え?まって?そもそも、優里が白季の人??ちょっとまって、整理させて」

 春樹が左手を自分の目に当て、右手をタンマの意味で前に出す。

「どうぞどうぞ」




 正直、混乱するのはわかる。

 俺の場合は、春樹の友人の結城さんが情報屋マリスだとわかった時点で、春樹もそっち側の可能性を考えてはいなくはなかった。

 でも、春樹からしてみれば今の状況は予測外の展開であるはずだからね。



 もちろん俺が春樹に言えなかったこと、っていうのはこのことである。
 なぜ言えなかったかというと、春樹が闇医者ネロだと確信が持てなかったからだ。
 下手に自分のことを言ってしまえば、敵の可能性がある彼に情報を渡すことになる。
 敵の立場の場合、ややこしくなるのは必須であったからだ。





 秘密を言ったはいいが、これからどうしようか、と考えていると春樹の思考がこちら側に戻ってきた。



「優里は、白季の三男?」

「そう」

「お姫様?」

「いや…違うけど、別名ではそうなってるね」

「セヤと知り合い?」

「もちろん」


 セヤは俺のことを知っている数少ない人のうちの1人で、俺が病気のときはほとんど彼に診てもらっている。


「だから"闇医者ネロ"を知ってた?」

「うーんと、一応一般人として生きていく、と言っても正真正銘白季の人間だし、昔から裏のことについて教え込まれてきたから知ってた、って感じかな。だからネロもマリスも名前は知ってたよ」

「それで僕が"情報屋マリス"って聞いたときあんなに驚いてたんだ」

「うん」

 2人はあのときの俺の様子に違和感を感じていたらしく、今俺の話を聞いて納得しているようだ。



「ちなみにたぶんだけど、春樹が血だらけで倒れてたのを助けたのは俺で合ってると思う。ちょうどその頃、俺は血だらけの人を助けたんだけど、その人血まみれで誰なのか判別できなくてさ。後から父に『ネロだったよ、あれ。超感謝してた~』って教えてもらってたから、まさか春樹だとは思わなくて……よく俺だってわかったね、あのとき。意識朦朧としてたはずなのに」


「愛かな」
「愛だね」

 2人同時にそう言う。
 いやいや…愛、って。

「でも確かにそうだよな、なんで気づかなかったんだろう。優里が『病院ダメな人?』って聞いてくる時点でおかしいよな。普通そんな風に聞かないし。しかもその後、目が覚めたら白季の家にいて、セヤに診てもらったんだ……よく考えたらわかることだった気がするな…」


 春樹と出会う3週間前、俺は実家を訪ね、その帰りに血だらけで倒れている人を発見した。
 さすがに焦ったが、急いで救急車を呼ぼうとすると「関わるな」と言われたが助けないわけにもいかず、実家に逆戻りし、家の人に伝えて、俺では運べないので代わりに家まで運んでもらったのだった。

 その後、父から大丈夫だったと聞いてどれだけ安心したことか。



 ーーーやっと繋がりがはっきりと見えてきたようだ。





「それじゃあ優里くん…って、呼んでいいのか?白季の人なら優里さん、とかの方がいい?」

 と結城さんがはっとしたように聞いてくる。

「いえ、今まで通りで大丈夫ですよ」

「じゃあそのままにするね。優里くん、体術とか習ってたりする?」

「はい、かる~くですけど」

「軽く、かなぁ?レストランでナイフ投げられたとき、グラスで軌道変えてくれたけど、あれ一般人の投げ方じゃなかったもん。当たったの、たまたまって言ってたけど違うでしょ」

「まあ、狙いはしましたけど」


 俺は明らかに戦闘向きではないので、避ける術を身に付けさせられた。そのときに動体視力を向上させたので、ナイフははっきりと見えていた。
 確信無く投げた訳ではない、なーんてね?









 ………と、いうことで。


「春樹」

「うん?」

「俺のこと知って、嫌いになった?別れたくなった?」

 本当に聞きたいのはここだ。
 そう俺が聞くと、彼は

「なるわけない!!」

 とすぐに否定した。

「優里がどんな人でも好きだから」



 うん、そう言ってくれるって思ってたよ。

 立場も味方側だ。問題ない。
 そもそも、こんなことで切られるような恋で終わらせるつもりはない。


 俺だってこの恋は本気だからね。






















 ーーーーーーー
 やっと白季優里になってくれました……




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