へなちょこ勇者の珍道記〜異世界召喚されたけど極体魔法が使えるのに無能と誤判定で死地へ追放されたんですが!!

KeyBow

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第2章

鼓舞

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 早朝日が昇り始めた頃に太一達は活動を始める。馬車の寝台を元に戻し、乗車出来る状態にしていく。また、収納から出したものを皆で食べていた。

 美夏や由美子達4人は食欲がない。特に手足を欠損している3人が顕著である。

 太一は叱咤激励した。

「今は無理にでも食べて体力を落とさないようにしてくれ」

 太一は体力を付けろとは言わないのだ。そう体力を落とすなと言っているのだ。太一には考えが有ったが、今はまだ言える段階ではない。彼らの欠損状態を修繕する手立てが有る筈だから、それがいつになるか判らないからだ。

 太一は己の記憶を探っていた。そう、最初の極大魔法を使ったあの時に、己の体が火傷で尚且つ手足もちぎれていたような気がするのだ。そうもう死んだと、確かに虫の息だったのだが気が付いたら全快だったのだ。

 あの時流刑のダンジョンをクリアしたおかげだと思うが、どうやら完全な身体に戻ったのだ。腕に埋め込まれていたボルトも無いし、折れた歯を治療した所の詰め物とかも綺麗さっぱりなくなっていたからである。

 太一は今の状態の3人を見て希望を持たせるかどうか考えていたのだ。それは美夏のあまりにも狼狽して腕が腕がと未だに泣いている状態を見て、期待を持たせた方がいいのかなと思ったのだ。

 街道に出てからシャロンとノエルが馬車に馬を繋いでくれていだ。

 太一は悩んだ末に今伝える事にした。

「みんな聞いてくれ。変に期待を持たせるなと言うかも分からないが、大事な事を伝えておきたいんだ。君達の欠損した手足だが、修復できる可能性が有るんだ。知っての通りこの世界は魔法が有る。由美子さんとノエルがヒーラーだ。そのヒーラーにある上級魔法というのに、死者蘇生と欠損修復というのが有るんだ。ただどちらかしか選べれない。その2人には何年2掛かるか分からないが、どちらかが死者蘇生、もう1人が欠損修復を覚えて貰おうと思っているんだ。ただかなり難易度が高い」

 一度話を区切り皆の様子を伺いながら続けた。

「それと俺は王女により不当に追放され、流刑のダンジョンに送られたんだそ。そこの99階層に送られ、その下にあったボス部屋で極大魔法を使い、ボスであるドラゴンを倒したんだ。その時に極大魔法発動の直前にブレスを喰らってしまい全身火傷と手足も失った筈なんだ。でもドラゴンを倒した後には元通りになっていたし、俺の腕は怪我をしてボルトが埋め込まれていたが、そのボルトが有る状態もなくなっていたんだ。同じようなダンジョンが他にあるかどうか分からないが望みが有るんだ。稲生さんの足の方だが正直ノエル達が欠損修復を覚えるまでの間その足では生き残れないと思うんだ。だから別の事を考えてたんだ。稲生さんの魔力次第だが俺の具現化の技で義足を作ってみたんだ。但し何もしなければ10分ぐ位で魔力が切れて消えてしまうから、装着して魔力を流し続ける事になる」

 義足を作り、稲生に渡し話を続ける

「大した魔力を必要としないが、しかし四六時中魔力を流しているとそれなりの量を送ってしまうから、魔法使う事がができなくなると思うんだ。つまり今ある魔力の全てをこの義足の為に費やす事になると思う。稲垣さんは片手で剣を扱わなければならないので苦労するとは思うけど、右腕には盾を装備しておけば片手のハンディが少ないと思う。問題は美夏だ。君は弓使いだ。当然今の状態で 弓が引けない。因みに火と水どっちがいい?」

 美夏はきょとんとしていたが水と言った。

「ノエル、アイスショットの方の杖をくれ」

 ノエルがほいっと投げ渡してきた。俺のところにある流刑のダンジョンでのドロップ品のレアアイテムの一つだ。ファイヤーショットはノエルに渡して有る。このアイスショットの杖は魔力を込めればアイスショットを放てる。当面の間弓の代わりにこれで対処してくれ。悪いが手足がなくなっているとは言え、戦わずに居させられる程今の俺達には人数も余裕もないんだ。辛い状況に鞭打って悪いんだけども、限りある力を振り絞っていかなければならないんだ。勿論俺も全力を振り絞るけども、みんなで力を合わせてまずはこの国を脱出し、フローラ様の弟子のいる国に行こう。俺は君達にこんな酷い事をしたあの国が許せない。いずれきっちりと落とし前は付けさせるつもりだ。しかし今はそれにをするにしても力が足りない」

 美夏の手に杖を握らせ

「君達の手足を復元する手立てを考える。いずれは復活する筈だが、正直何年掛かるか分からないが、それまでみんなで頑張って生き抜いていこう」

 美夏が強く聞いてきた

「言ったわよね?本当に本当に戻るの?私のこの腕が戻るの?私今一人でお着替えもできないのよ。嘘だったら嘘だったら承知しないわよ。そうなったら私の事を一生面倒見なさいよ」

「あー分かった。少なくても手足が復活するまでは俺が責任を持って君達の面倒を見る。上から目線の言い方で悪いが、今はそれを言うしかないんだ。ただ今の状況はかなり余裕がないのでパーティーリーダーとして上から目線で命令をする事になると思う。後から何とでも文句は聞くから。だから今は従って欲しい。日が昇り始めた少しでも距離を稼いでおきたい。いつ奴らが街道を突破してこちらにも来るのか分からないからね。みんな準備はいいかな?とりあえず出発だ!」

 意気揚々とは行かないが、それでも昨夜よりマシになり出発するのであった。
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