へなちょこ勇者の珍道記〜異世界召喚されたけど極体魔法が使えるのに無能と誤判定で死地へ追放されたんですが！！

第２章

デジャブ

　朝食の様子や内容、美夏の回復具合等から、同じ状況を一度見たような気がしていた。そう、これは所謂デジャヴというやつかな？と太一は不思議そうに思っていた。

　美夏は相変わらず稲生に甲斐甲斐しく世話をされていて、素直な姿がやはりデジャブだった。昼過ぎに概ね回復していたがまだ体力が戻っておらず、やはり夕方まで待った方がいいのかな？とは思うのだが、予知夢？の内容が気になって仕方がなかった。

　確か夕方になってから3点鐘が鳴り響き、太一のみが戦闘に加わりに行くも一足遅かった。別行動だった為に太一のみが生き残ったのだ。宿に向かったのが敵の主力だったようで、宿にいた者達だけでは歯が立たなかったのだ。

　太一は予知夢に関して色々な考えを巡らせていた。デジャブなのは予知夢で見たからであり、まさか夢で見たから決めた！と次なる行動について指示ができる筈もなく、時間的にそろそろだとして、念の為と皆を集めて話を始めた。

「ずっと考えていたんだ。奴らが追いつくとしたらもうそろそろだと思うんだ。現状を考えると俺以外の全員で美夏を守るというのも厳しいと思う。なのでこちらから打って出ようと思うんだ。皆で一旦街を出て、街道脇にある林か藪の中に予め避難しておく。俺と護衛としてシャロンの二人で街道にて奴等を待ち構えようと思うんだ。俺の絶対防壁があれば1000人や2000人程度であれば難なく倒す事が可能だと思うんだよ。なのでみんなには隠れ潜んで奴らに見つからないようにして貰いたい」

　太一の真剣な表情に皆気圧され、分かったと頷いていた。
　基本的に戦闘が終わった後はまたこの宿に戻るつもりなので宿は引き払わずにそのままにして行く。

　早速行動を開始し、街の外に向かった。街を出る時に門番に

「来るとしたらそろそろだと思うので、少し外の様子を見て来ます」

「分かった。気をつけろよ。こちらも警戒をしておくよ」

　そう言われ太一は皆を引き連れ街の外に出た。街道を少し戻り、街道脇に丁度良い藪があり、シャロン以外はその藪に入って行く。そうして街道で待機すること約1時間。敵兵が約1000名位が街道を進んで来たのが分かった。太一は冷や汗をかいた。予知夢に関してだ。あれがなければ先手が打てなかったからだ。。

　太一は魔法を使わずに剣のみで戦うと、1対1の場合で五分の戦いになると予測していた。尤も太一の場合は剣の技術的なものは持っておらず、補正された身体能力で戦うのみだ。だがそうはならない。最初から接近戦に持ち込ませる気はなかったからだ。太一のその強大な魔力があれば圧倒的に太一の方が戦闘力が上なのだ。

 　訓練された兵士と何の訓練も受けた事のない一般市民、それ位の力量差がはっきりと出てくる筈だ。敵は太一が標的である事が分かったので、殺せと叫び突進してきた。

　太一はすかさず魔法を放てるように小さな穴の開いた絶対防壁を展開する。穴というのは攻撃魔法を通す為の穴だが、矢を打ち込まれたり、槍をピンポイントで突っ込まれると攻撃を食らう。その為の護衛のシャロンだ。

　太一は女性に護衛されるのもどうかとは思っていたが、防壁に開けている穴から槍や矢が来ると予測していて、魔法を使いながら阻止するのは今の太一には不可能と判断したからだ。

　シャロンの役目は太一の護衛のみだ。ある程度に1度は穴の位置を変えているので、そう簡単に穴を通り抜け攻撃が来る事はないが、結局戦闘が終わるまでに5回シャロンの剣が振るわれたが、戦闘時間は20分も掛かっておらず、一方的な戦いになったのであった。太一は魔法で敵を切り裂き、燃やしていった。逃がさない為に氷の壁や穴を掘り退路を断つなど情け容赦なかった。尤も予知夢から最後の一人までひたすら戦い、撤退しないとは予測してはいたのであったが。戦闘後は死体の山が築き上げられていたのであった。