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第68話 逃避行
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恐らく12時間以上は進んでいると思う。スマホは・・・燃えてなくなった。疲労が全身を蝕み、足取りも重くなる。時折魔物の群れが途切れる瞬間があり、そのたびに小休止を取る。
休息といっても、完全に気を抜けるわけではない。俺たちの周囲には常に何かが蠢いている気配があり、ほんの一瞬の隙が命取りになる。それでも、身体の限界を感じていた。
生理現象も避けては通れない。俺が皆に背を向けて用を足すのだが、流石に恥ずかしい。しかし、この状況で我慢すれば、動きに支障をきたすのは目に見えている。尿意を感じたときが「チャンス」だと割り切るしかなかった。緊張から頻度が増しているのも、ある意味では仕方ない。
そんなことを考えつつも、空腹の方が深刻だった。腹が減りすぎて、頭がぼんやりとしてくる。水分は魔法で何とかなるが、食べ物はそうはいかない。俺たち全員が無言で歩みを進めている中、背後から不穏な音が聞こえてきた。
「…また来るぞ!」
振り返ると、闇の中から無数の魔物が押し寄せてくるのが感じ取れ、先頭の魔物が見えたが、その数はこれまでの比ではない。炎や風による攻撃もまるで意に介さず、どんどん距離を詰めてくる。
「くそっ、どこまで続くんだよ!」
スルメイラが殿を務め、魔法を駆使して食い止めようとする。しかし、近くでは大技が放てず魔力の消耗が激しく限界が近い。俺たちは必死に先へ進んだ。
「階段よ!」
浅香が先を走り、下り階段を指差した。その先に希望があるかどうかは分からないが、今の状況を打開するにはそこを目指すしかない。
「行くぞ、急げ!」
全員が階段を駆け下りるが、魔物はすぐ背後まで迫っており、次の瞬間には追いつかれるだろう。息が切れる中で階段を降り切ると、目の前に巨大な扉が現れた。
「扉を開ける時間はあるのか!?」
「そんな余裕ないわよ!」
友理奈が叫ぶ。
しかし、逃げ場がないのも事実だ。扉を背にして階段を見上げると、数体の魔物がすでに突入してきていた。俺たちは応戦しながら、わずかでも扉を開けるための時間を稼ぐ。
「このままだと全滅よ!」
浅香が叫び声を上げる中、「一か八か、ボス部屋に入るしかないんじゃない!?」と意を決して言った。その言葉に、俺は迷わず賛同した。
「賛成だ!スルメイラ、弘美と一緒に扉を開けろ!」
スルメイラが魔法を使いながらもう片方の手で、弘美が1人で開けられなかった側の扉を押す。鈍い音を立てて、ゆっくりと開き始めた。
弘美の側も開き始めたので2人同時に行う必要がある感じだ。
「早く中に入れ!」
全員が扉の隙間に体を滑り込ませるようにして入る。最後にスルメイラが飛び込むと同時に、扉が重たく閉まった。背後の魔物たちはそれ以上追ってこない様子だった。
「…助かったのか?」
全員が息を切らしながら、その場にへたり込む。だが、緊張感は解けないが、自分で言っておいてなんだが、それがフラグだと重々理解している、
異様な雰囲気が漂う部屋は薄暗く、先ほどまでの蒸し暑さと打って変わって空気が冷たい。広大な空間には無数の柱が並び、中央には巨大な石碑が鎮座していた。石碑の周囲に漂う淡い光が、不気味さをさらに引き立てている。
「ここが…ボス部屋・・・・か・・・」
俺が呟くと、スルメイラが神妙な顔で言う。
「間違いありませんわ。でも、ただ事では済みそうにありません。」
突然、石碑が大きな音を立てて砕けた。中から現れたのは、これまでとは比べ物にならないほど巨大な魔物だった。全身を漆黒の甲殻で覆われ、4本の腕にはそれぞれ凶器を握りしめている。
その目が赤く輝き、俺たちを見下ろして咆哮を上げた瞬間、再び緊張がピークに達した。
「全員、準備しろ!これは死闘になるぞ!」
休息といっても、完全に気を抜けるわけではない。俺たちの周囲には常に何かが蠢いている気配があり、ほんの一瞬の隙が命取りになる。それでも、身体の限界を感じていた。
生理現象も避けては通れない。俺が皆に背を向けて用を足すのだが、流石に恥ずかしい。しかし、この状況で我慢すれば、動きに支障をきたすのは目に見えている。尿意を感じたときが「チャンス」だと割り切るしかなかった。緊張から頻度が増しているのも、ある意味では仕方ない。
そんなことを考えつつも、空腹の方が深刻だった。腹が減りすぎて、頭がぼんやりとしてくる。水分は魔法で何とかなるが、食べ物はそうはいかない。俺たち全員が無言で歩みを進めている中、背後から不穏な音が聞こえてきた。
「…また来るぞ!」
振り返ると、闇の中から無数の魔物が押し寄せてくるのが感じ取れ、先頭の魔物が見えたが、その数はこれまでの比ではない。炎や風による攻撃もまるで意に介さず、どんどん距離を詰めてくる。
「くそっ、どこまで続くんだよ!」
スルメイラが殿を務め、魔法を駆使して食い止めようとする。しかし、近くでは大技が放てず魔力の消耗が激しく限界が近い。俺たちは必死に先へ進んだ。
「階段よ!」
浅香が先を走り、下り階段を指差した。その先に希望があるかどうかは分からないが、今の状況を打開するにはそこを目指すしかない。
「行くぞ、急げ!」
全員が階段を駆け下りるが、魔物はすぐ背後まで迫っており、次の瞬間には追いつかれるだろう。息が切れる中で階段を降り切ると、目の前に巨大な扉が現れた。
「扉を開ける時間はあるのか!?」
「そんな余裕ないわよ!」
友理奈が叫ぶ。
しかし、逃げ場がないのも事実だ。扉を背にして階段を見上げると、数体の魔物がすでに突入してきていた。俺たちは応戦しながら、わずかでも扉を開けるための時間を稼ぐ。
「このままだと全滅よ!」
浅香が叫び声を上げる中、「一か八か、ボス部屋に入るしかないんじゃない!?」と意を決して言った。その言葉に、俺は迷わず賛同した。
「賛成だ!スルメイラ、弘美と一緒に扉を開けろ!」
スルメイラが魔法を使いながらもう片方の手で、弘美が1人で開けられなかった側の扉を押す。鈍い音を立てて、ゆっくりと開き始めた。
弘美の側も開き始めたので2人同時に行う必要がある感じだ。
「早く中に入れ!」
全員が扉の隙間に体を滑り込ませるようにして入る。最後にスルメイラが飛び込むと同時に、扉が重たく閉まった。背後の魔物たちはそれ以上追ってこない様子だった。
「…助かったのか?」
全員が息を切らしながら、その場にへたり込む。だが、緊張感は解けないが、自分で言っておいてなんだが、それがフラグだと重々理解している、
異様な雰囲気が漂う部屋は薄暗く、先ほどまでの蒸し暑さと打って変わって空気が冷たい。広大な空間には無数の柱が並び、中央には巨大な石碑が鎮座していた。石碑の周囲に漂う淡い光が、不気味さをさらに引き立てている。
「ここが…ボス部屋・・・・か・・・」
俺が呟くと、スルメイラが神妙な顔で言う。
「間違いありませんわ。でも、ただ事では済みそうにありません。」
突然、石碑が大きな音を立てて砕けた。中から現れたのは、これまでとは比べ物にならないほど巨大な魔物だった。全身を漆黒の甲殻で覆われ、4本の腕にはそれぞれ凶器を握りしめている。
その目が赤く輝き、俺たちを見下ろして咆哮を上げた瞬間、再び緊張がピークに達した。
「全員、準備しろ!これは死闘になるぞ!」
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