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第64話 聖者の祝福とオッサンの膀胱
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ダンジョンを出た数時間後。
子供たちとリリア、そしてセスティーナが見守る中、ディノッゾの瞼が、静かに開かれた。
その瞳は、やはり、以前と同じだった。全てを見通し、全てを受け入れたかのような、深く、静かで、どこか悟りを開いたかのような澄んだ瞳。【大賢者モード」】の再来だった。
ディノッゾは、ゆっくりと、しかし、ふらつくことなく、その身を起こした。彼は、心配そうに自分を見つめる【教え子】たちの顔を、一人、また一人と、慈しむように見つめた。
そして、一人一人に対する、感謝と賛辞の言葉を紡ぎ始めた。
「リオ。君の勇気は、仲間を守る揺るぎない盾だった」
「カミラ。君の猛々しい魂は、我らの希望の矛先だった」
「ボルツ。君の力は、敵が砕け散る、不動の山だった」
「サラ。君の疾風の足は、道なき道に、活路を切り開いた」
「マヤ。君が放つ一矢は、闇を꿰뚫く真実の矢」
「ゴードン。君の槍は、決して折れぬ不動の信念」
「ティナ。君の祈りは、戦場に灯る命の灯火。その優しさが、我ら全員の心を支えていた」
それは、彼らの長所を完璧に見抜き、その存在そのものを肯定する最高の祝福だった。
言われた子供たちは、皆、感極まった。
その場でただ、ぼろぼろと涙を流しながら、先生の言葉を胸に刻みつけていた。
だが、ディノッゾの指導は、まだ終わっていなかった。彼は、パーティーの女子たちに、さらに具体的な指導を始める。
「カミラ。君は、その胸元をもっと強調しなさい。折角大きいのだから、それを隠すのは神に対する冒涜です。敵の視線を上半身に集めることで、君の力強い踏み込みは、より意表を突く一撃となるでしょう」
「サラ。君はそのスラッとした体をもっとアピールしなさい。スカートの丈を膝より上までにし、脚をもっと出せば、敵の注意を足元に引きつけ、動きやすくなるでしょう」
あまりにも突拍子もない、セクハラにしか思えない発言。だが、それを語るディノッゾの姿は、あまりにも神々しく、聖人君子のようだった。カミラとサラは、真剣な顔で「勉強になります、師匠!」と頷いた。
そして、ディノッゾはリリアに、慈愛に満ちた瞳を向けた。
「そして、リリア殿。貴女の存在こそが、この旅路の光そのものだ。貴女は、私の相棒です。これからも、頼りにしていますよ」
最後に、彼は部屋の隅で一連の光景に感極まっていたセスティーナに向き直った。今度は、穏やかだが、有無を言わせぬ説教の口調だった。
「―――セスティーナ殿。貴女は、自分の魅力をもっと正しく認識したほうがよい。その瞳は、全ての男の心を射抜く力がある。……そして、私もまた、その瞳に射抜かれた一人だということを、ゆめゆめお忘れなきよう」
その、あまりにも熱烈な言葉に、セスティーナは顔を真っ赤にして、完全に思考が停止していた。
感動的な静寂。その場の誰もが、この聖者の次なる言葉を、固唾を飲んで待っていた。
ディノッゾは、穏やかな、澄み切った瞳のまま、静かに口を開いた。
「ところで・・・済まないが」
「……はい」
セスティーナが、上ずった声で返事をする。
「トイレに行きたい」
その、あまりにも締まらない一言で、部屋の神聖な空気は、粉々に砕け散った。
ディノッゾの瞳から、すっと聖者の光が消え、いつもの、少し眠そうなオッサンの瞳に戻っている。【大賢者モード】は、終わったのだ。
「いやー、なんだか、すげえ寝た気がするな。……っと」
彼は、状況を全く理解しないまま、ベッドからおりようとした。だが、丸一日以上寝ていた彼の足は、完全にもつれていた。
「おわっ!?」
ディノッゾの体が、ぐらりと傾く。
それを、一番近くにいたセスティーナと、筋肉隆々のボルツが、両側から慌てて受け止めた。
ディノッゾの顔が、セスティーナの胸元に、うずまる形になる。ふんわりと、女性らしい良い匂いが、彼の鼻腔をくすぐった。
「だ、大丈夫ですか!?」
「ああ……」
ディノッゾは真っ赤になりながら、膀胱の限界を告げる、強烈な尿意を思い出した。
「だ、大丈夫だ! 問題ない!」
彼は、二人の手助けを拒否すると、転びながらも、壁伝いに、凄まじい執念でトイレの扉だけを目指して突き進む。
そして、ついに扉にたどり着くと、転がり込むように中へ入り、ピシャリと鍵をかけた。
「…………」
後に残されたのは、呆然と立ち尽くす、仲間たち。
やて、扉の向こうから、
「はあああああああ……っ」
という、あまりにも恍惚とした、深いため息が聞こえてきた。
その瞬間、部屋にいた皆の腹筋が限界を迎え、大きな笑い声が響き渡った。
数分後。
トイレから出てきたディノッゾは、バツが悪そうに言った。
「……着替えたいな」
彼はまだ、ダンジョンで手に入れた軽装鎧を着たままだった。
その言葉に、セスティーナが、まだ少し頬を赤らめながらも、すっと前に進み出た。
「……ディノッゾ殿。その鎧、私が脱がすのを手伝いましょう」
彼女の静かだが、断固とした申し出に、ディノッゾは、もはや断ることができなかった。
今の自分はたつのが精一杯なのもあり、美人に服を脱がされる、もちろん回りにいる皆が手伝うのだが、流石にパンツの時は後ろを向いて貰ったが、中々シュールな体験をしていた。
子供たちとリリア、そしてセスティーナが見守る中、ディノッゾの瞼が、静かに開かれた。
その瞳は、やはり、以前と同じだった。全てを見通し、全てを受け入れたかのような、深く、静かで、どこか悟りを開いたかのような澄んだ瞳。【大賢者モード」】の再来だった。
ディノッゾは、ゆっくりと、しかし、ふらつくことなく、その身を起こした。彼は、心配そうに自分を見つめる【教え子】たちの顔を、一人、また一人と、慈しむように見つめた。
そして、一人一人に対する、感謝と賛辞の言葉を紡ぎ始めた。
「リオ。君の勇気は、仲間を守る揺るぎない盾だった」
「カミラ。君の猛々しい魂は、我らの希望の矛先だった」
「ボルツ。君の力は、敵が砕け散る、不動の山だった」
「サラ。君の疾風の足は、道なき道に、活路を切り開いた」
「マヤ。君が放つ一矢は、闇を꿰뚫く真実の矢」
「ゴードン。君の槍は、決して折れぬ不動の信念」
「ティナ。君の祈りは、戦場に灯る命の灯火。その優しさが、我ら全員の心を支えていた」
それは、彼らの長所を完璧に見抜き、その存在そのものを肯定する最高の祝福だった。
言われた子供たちは、皆、感極まった。
その場でただ、ぼろぼろと涙を流しながら、先生の言葉を胸に刻みつけていた。
だが、ディノッゾの指導は、まだ終わっていなかった。彼は、パーティーの女子たちに、さらに具体的な指導を始める。
「カミラ。君は、その胸元をもっと強調しなさい。折角大きいのだから、それを隠すのは神に対する冒涜です。敵の視線を上半身に集めることで、君の力強い踏み込みは、より意表を突く一撃となるでしょう」
「サラ。君はそのスラッとした体をもっとアピールしなさい。スカートの丈を膝より上までにし、脚をもっと出せば、敵の注意を足元に引きつけ、動きやすくなるでしょう」
あまりにも突拍子もない、セクハラにしか思えない発言。だが、それを語るディノッゾの姿は、あまりにも神々しく、聖人君子のようだった。カミラとサラは、真剣な顔で「勉強になります、師匠!」と頷いた。
そして、ディノッゾはリリアに、慈愛に満ちた瞳を向けた。
「そして、リリア殿。貴女の存在こそが、この旅路の光そのものだ。貴女は、私の相棒です。これからも、頼りにしていますよ」
最後に、彼は部屋の隅で一連の光景に感極まっていたセスティーナに向き直った。今度は、穏やかだが、有無を言わせぬ説教の口調だった。
「―――セスティーナ殿。貴女は、自分の魅力をもっと正しく認識したほうがよい。その瞳は、全ての男の心を射抜く力がある。……そして、私もまた、その瞳に射抜かれた一人だということを、ゆめゆめお忘れなきよう」
その、あまりにも熱烈な言葉に、セスティーナは顔を真っ赤にして、完全に思考が停止していた。
感動的な静寂。その場の誰もが、この聖者の次なる言葉を、固唾を飲んで待っていた。
ディノッゾは、穏やかな、澄み切った瞳のまま、静かに口を開いた。
「ところで・・・済まないが」
「……はい」
セスティーナが、上ずった声で返事をする。
「トイレに行きたい」
その、あまりにも締まらない一言で、部屋の神聖な空気は、粉々に砕け散った。
ディノッゾの瞳から、すっと聖者の光が消え、いつもの、少し眠そうなオッサンの瞳に戻っている。【大賢者モード】は、終わったのだ。
「いやー、なんだか、すげえ寝た気がするな。……っと」
彼は、状況を全く理解しないまま、ベッドからおりようとした。だが、丸一日以上寝ていた彼の足は、完全にもつれていた。
「おわっ!?」
ディノッゾの体が、ぐらりと傾く。
それを、一番近くにいたセスティーナと、筋肉隆々のボルツが、両側から慌てて受け止めた。
ディノッゾの顔が、セスティーナの胸元に、うずまる形になる。ふんわりと、女性らしい良い匂いが、彼の鼻腔をくすぐった。
「だ、大丈夫ですか!?」
「ああ……」
ディノッゾは真っ赤になりながら、膀胱の限界を告げる、強烈な尿意を思い出した。
「だ、大丈夫だ! 問題ない!」
彼は、二人の手助けを拒否すると、転びながらも、壁伝いに、凄まじい執念でトイレの扉だけを目指して突き進む。
そして、ついに扉にたどり着くと、転がり込むように中へ入り、ピシャリと鍵をかけた。
「…………」
後に残されたのは、呆然と立ち尽くす、仲間たち。
やて、扉の向こうから、
「はあああああああ……っ」
という、あまりにも恍惚とした、深いため息が聞こえてきた。
その瞬間、部屋にいた皆の腹筋が限界を迎え、大きな笑い声が響き渡った。
数分後。
トイレから出てきたディノッゾは、バツが悪そうに言った。
「……着替えたいな」
彼はまだ、ダンジョンで手に入れた軽装鎧を着たままだった。
その言葉に、セスティーナが、まだ少し頬を赤らめながらも、すっと前に進み出た。
「……ディノッゾ殿。その鎧、私が脱がすのを手伝いましょう」
彼女の静かだが、断固とした申し出に、ディノッゾは、もはや断ることができなかった。
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